臨海の不良債権処理なくして
都財政再建なし


1 都民に迷惑はかけないと豪語してスタート
臨海副都心開発は,当初の計画では総事業費4兆円でした。そのうち2兆円が基盤整備費で,2兆円が上物の建設費ということでした。
基盤整備費2兆円は都が負担することとなりますが,鈴木都知事は都民には迷惑はかけないと豪語しました。
臨海副都心に進出する企業には土地を貸し付け,そこから受け取る権利金や地代で基盤整備費はまかなえるという説明だったのです。

2 独立採算の原則(地方公営企業法)に基づく臨海会計の設置
都は,この事業を推進するため,1989年4月,臨海副都心開発事業会計(以下「臨海会計」といいます)を地方公営企業法の一部適用事業として設置しました。
地方公営企業法では,独立採算制の原則・受益者負担の原則がとられ,特別会計の設置が義務付けられます。
こうして,法的にも都の一般会計から区別された独立採算の特別会計で事業を実施することで,一般会計からの税金投入を規制し,収支の明確化を図ることとしたのです。

3 バブル崩壊と予算凍結
90年11月,進出企業の第1次公募の結果,14事業者の進出が決定しました。
ところが,その直後,バブル経済が崩壊し,契約を渋る企業が続出しました。
91年春の都知事選直前の都議会で開発関連予算の執行が凍結され,開発の抜本的見直しのチャンスが生まれたかに見えましたが,知事選後直ちに旧社会党が鈴木知事与党入りを宣言し,凍結予算も解除されてしまいました。

4 総事業費の倍増
しかも,2年もしないうちに総事業費が倍以上に膨れ上がり,91年9月の都議会で,都は総事業費が10兆円(うち基盤整備費5兆円)になるとの見通しを明らかにしました。

5 企業への出血サービス
他方,当選企業との契約交渉は難航し,92年,93年と2度にわたり合計40%もの地代値下げを行ったにもかかわらず,契約にこぎつけたのは10事業者に止まりました。

6 開発財政の破たんと臨海懇談会−抜本的見直しが多数意見に
こうして,開発財政の破たんがあらわになり,95年春の都知事選では,臨海副都心開発や世界都市博開催問題が最大の争点となりました。与党候補以外の全ての候補者が臨海副都心開発の抜本的見直しを公約するなかで選挙が行われ,青島都知事が誕生しました。
青島都知事は世界都市博を中止し,95年9月,知事の私的諮問機関として臨海副都心開発懇談会を発足させました。当初,抜本的見直しの立場の委員は25名中5〜6名でしたが,全て公開制の懇談会が96年4月まで延べ17回開催され,抜本的見直しの意見が委員の多数を占めるに至り,開発継続のA意見と抜本的見直しのB意見の両論を併記するという異例の最終報告となりました。

7 開発継続とさらなる企業への出血サービス
しかし,青島都知事は96年6月,開発継続の方針を発表し,抜本的見直しの機会は失われました。
96年12月には3度目の地代値下げと権利金の一部返還などを決め,進出企業には出血サービスを繰り返し,開発財政は深刻化の一途をたどりました。
臨海会計は,当初,30年間で6兆9600億円の収入見込みだったものが,5分の1の1兆4200億円に落ち込んだのです。
99年春の都知事選で当選した石原都知事は,議会答弁でも臨海副都心開発を「どうやっても負け試合」と突き放し,カジノ構想をぶち上げました。
しかし,頼みの第2次企業公募を2000年7月から開始したものの,正式に契約を締結した企業はほとんどありません。

8 臨海会計の破たん
こうして2001年3月,臨海会計は都もこれ以上放置できないほどの破たん状態となりました。
この時点での臨海会計の実態は次のとおりです。

収支
支出 年間約500億円(うち借金の利息約300億円)
収入 年間約100億円(地代など)
赤字 毎日1億円ずつ赤字が累積
不足分を他会計からの借金でしのぐ状態
累積損失 5000億円を上回る状態

借金
地方債残高 5185億円
埋立会計からの借入金 2920億円
羽田沖埋立会計からの借入金 710億円
合計 8815億円

9 マスコミも認める臨海会計の破たん
臨海会計の破たんについてはマスコミも次のように報じています。
「この会計の貸借対照表から,保有する土地などを時価で計算してみると,債務超過に陥っている。民間企業ならすでに破たんだが,都の担当者に尋ねると,『今だけのこと。幹線道路もできるし,いずれ地価は上がって(債務超過は)解消されますから』」(読売2001/1/21)
このように臨海会計が債務超過に陥っていることは明らかなのです。債務超過とは負債総額が資産総額を上回る状態のことです。債務超過のまま営業を続けると損失を増大させることにもなるので破産の原因とされている(破産法127条)ことは言うまでもありません。
これに対して,都の担当者の答弁は地価の値上がり期待しかありません。

10 「2003年問題」(ビル不況)の直撃
しかし,今,不動産業界では「2003年問題」が持ち上がっています。
「都心で再開発に伴う大型のオフィスビルが相次いで完成する予定だが,オフィスビル需要は,長引く景気低迷の影響で伸び悩む見通しで,この結果,供給過剰になる懸念が高まっている」(読売2002/1/15)というのです。
汐留・品川・六本木・丸の内など,都心の立地条件の良い高層ビルが完成のラッシュを迎える一方で,3%台で推移していた東京23区の主要ビルの平均空室率は昨年12月末に4.3%に達し,上昇傾向を見せているとのことです。空室率の上昇が続けば,再び賃料低下を招きかねず,地価下落につながることが懸念されています。
このように臨海会計の収入見通しは極めて厳しいと言わざるを得ません。

11 開発継続のためにはさらに2兆円もつぎ込む
しかし,都は,開発を継続するためには,今後,投資と借金の返済にさらに約2兆円かかると試算しているのです。

12 三会計統合−破たんした臨海会計への税金投入と独立採算原則の放棄
こうして都は,開発をさらに継続するため,臨海会計・埋立事業会計・羽田沖埋立事業会計の統合を決めました。
臨海会計を埋立会計および羽田沖埋立会計と統合したことによって,埋立会計からの2920億円,羽田沖埋立会計からの710億円の借入金を踏み倒し,埋立会計から現物出資された都有地183ヘクタール(1兆2000億円相当)をただ取りし,埋立会計が保有する資産2500億円相当(毎年37億円の賃料収入を含む)もただ取りしたことになります。
臨海会計が受けた利益を単純に合計すれば1兆8000億円以上となり,それらはいずれも都民の財産ですから,臨海会計の累積損失の穴を都民の財産で埋めたことに他なりません。新たな税金投入と同じことです。

13 マスコミも批判
これについてのマスコミの評価は次のとおりです。

計画当初に掲げていた独立採算を断念(日経2001/1/20)。
臨海副都心開発の見通しの甘さを埋立事業の利益でカバー(日経2001/1/20)。
統合で臨海開発の収支が不透明になる恐れもあり,「破たん隠しだ」との批判も出ている(朝日2001/1/20)。
今後も開発を継続するには新たな借金が必要で,(三会計統合で)財政的に支えることにした(読売2001/1/20)。

14 都財務局も反対
この三会計統合には都財務局が反対しましたが,その反対理由は次のとおりです(都政新報2001/1)。

「統合は一時しのぎに過ぎず,抜本的解決策にはならない」
「羽田沖埋立事業が終了したら,その剰余金を一般会計に引き上げるのが財政のルール」
「臨海副都心の事業を抜本的に見直す必要がある」

当然の指摘と言えるでしょう。

15 三会計統合は地方公営企業法に反する
地方公営企業法は独立採算の原則を定めており,三会計統合は地方公営企業法に反します。臨海会計が破たんした以上,倒産処理と同様の観点で抜本的見直しをすべきです。
したがって,三会計統合は地方公営企業法違反で無効と言わなければならず,従前どおりそれぞれ別個の特別会計として会計処理すべきです。
しかし,都知事はそれをしていませんから,地方自治法242条1項の「違法若しくは不当に公金の賦課若しくは徴収若しくは財産の管理を怠る事実がある」と言うべきではないでしょうか。

16 臨海会計の破たん処理は避けて通れない
臨海会計の巨額の累積損失は避けて通れない課題です。いくら先送りをしても,いつかは必ず処理しなければならない問題なのです。そして,バブルの再来でもない限り,先送りすればする程,累積損失が膨張していくことはほぼ間違いありません。


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