山奥・それは稲里

1・ヒグマ

みなさんが住んでいる場所には、熊が出ますか?そう、あの森の熊さんです。それも、凶暴で知られる羆(ヒグマ)です。出るんです、私たちの住む稲里には。しかも、それに対して全然危機感のない住人達!平和な所なんですね。

私がここに越してきたのは平成8年の4月。仕事の関係で、この山奥に勤務となりました。
さて、その年の夏。学校から稲里の全住民にプリントが配られました。そこには、こう記してあったのです。

「熊出没」
これには柳ちゃんもびっくり。ですが、怖いモノ見たさ故に、やはりその春転勤してきた同僚の山田氏熊探しに出たのです。ですが、幸か不幸か、熊には出会えませんでした。

あれから1年がすぎました。また、学校から住民にプリントが配られました。そのプリントの左半分には熊目撃地点(3カ所)の地図、右半分には
「今年も熊出没(も、ですよ!も!)」
というタイトル。そして本文の書き出しは
「毎年の恒例行事となっていますが、今年も熊が・・・・」
ですって!加えて、その下にはパジャマを着たクマとウサギが体操を踊っている絵が描かれていて、ご丁寧に
「めざめました」
なんて書かれているのです。ここでは、凶暴な羆も住民の一人なのでしょうか?過疎化が進む山奥の農村では、羆さえも貴重なメンバーなのでしょうか?恐ろしいところです。
さらに1年が過ぎました。そして、やっぱりクマさんはでてきました。今年、稲里では2頭のクマさんが射殺され、例によって「熊出没」プリントが配られたのでした。

なんて事を言ってたら・・・我々の目の前に現れたのは、射殺された熊の死体だったのです。これは強烈でした。



2・コンビニ
みなさんの家から、コンビニまでは歩いて何分で行けますか?今や、全国各地に無数と行って良いほどあるコンビニエンスストア。若者からお年寄りまで生活上なくてはならない存在のコンビニエンスストア。ですが、ないのです。稲里には。いえ、稲里を含めたこの穂別町にはコンビニは1軒もないのです。 私の家から最も近いコンビニまでは20キロ近くあります。車でも20分かかります。もちろん、コンビニに変わって生活を支えてくれるようなお店はありません。穂別の町?には、小さな商店街がありますが新鮮な野菜や魚介類は入手不可能です。なんとつらい毎日なのでしょうか。 私同様近くにコンビニがなくて困っている方、メール待ってます。

そんなこんなの99年12月。ついに町内にコンビニがオープンします。穂別本町に北海道では最大勢力のコンビニチェーン「セイコーマート」ができました。またひとつ,穂別にも文明開化の波が訪れたようです。



3・携帯電話

電波界の陸の孤島だった稲里。そんな稲里にもついにdocomoの携帯が通じました。あれは98年11月13日のこと。砂田さんが「稲里でも使えるようになったみたいですよ」という情報を。スイッチを入れてみると、ちゃんとアンテナが3本立っています。素晴らしい!しかしそう思ったのもつかの間のことでした。その3日ほど後のこと。朝3本立っていたアンテナが夕方にふと見ると圏外表示!そして翌日も同じ現象が・・・稲里の中継塔は昼間しか働かないのか!そんな不思議な現象に怒りを覚えました。しばらくそんな日が続いた後、やっと24時間通話可能になりました。一つ、文明化に近づいた稲里なのでした。

そして99年11月。今度は稲里にセルラーのアンテナが立ちました。いい傾向です。
もちろん,docomoのiモードだってばっちりです。



4・稲里の公共交通
まず、当然ながらJRを始めとする鉄道は一切ありません。もっとも近い駅は20kmほど走った空知支庁(すでに別管内ですね)夕張市紅葉山の新夕張駅。我々の仕事上の算定基準となる同じ管内の駅は50km程離れたところにある鵡川駅です。
では、自動車関係はと言うとタクシーは町内にたった1台しかありません。それもここ数年なかったものが、この4月にやっと復活したものです。運ちゃんはおじいさん!乗ってると、いつも運ちゃんが良くない咳をしているのが聞こえます。頼むから、客を乗せているときに発作だけは起こさないでほしいんだけど。
そしてバス。唯一あるのが穂別と稲里を結ぶホッピー号(ホッピーというのは穂別町内で発掘されたクビナガリュウの化石の愛称です)。ですが、基本的に利用者はジジババと子供のみです。大人はみんな自家用車ですから。ジジババの通院用と子供の通学用。両方とも町から補助が出ており、早い話がこの地域のジジババと子供はタダで乗れます。たまに他の人が乗るといっても、十中八九、稲里の住民でしょう。さて、先日、このホッピー号に初めて町外の人間が乗車しました。我がなんかすっか会の客分、馬さんです。彼は沖縄からわざわざこの北海道の山奥稲里に我々を訪ねてきてくれたのです。馬さんは穂別から稲里まで乗車してきて、下車時に運賃を払おうとしました。たまたま、その時、彼はちょうどぴったりの金額が財布になく、両替したい旨を運ちゃんに告げたところ・・・・ホッピー号に両替機がないのはおろか、運ちゃんも1銭も持ち合わせていませんでした。運ちゃん曰く「まさか町外の人が乗るなんて思っても見なかったから!」・・・馬さんは仕方なく10円の多く払ってホッピー号を降りたのでした。馬さんとホッピー号については彼のページにも書かれていますので、是非ご一読を。
そんな地域ですから、自家用車は絶対に必要です。それも一家に1台では足りません。免許所有者1人につき1台です。田舎は、都会とは違う自動車社会なのです。

99年11月現在,例のタクシーは依然1台のままですが,運ちゃんはおじいさんではなくなりました。今は,おばちゃんと若いお兄ちゃんが交代でやっています。(どうやら,あのおじいさんの家族らしいです)

と,おもったら.....この間,予約してきてもらったら,またあのおじいさんだった!しかも,相変わらずせき込んでるし,運転は荒いし!怖えー!!



5・新聞、テレビ
新聞、それも朝刊とは朝に読むものです。私は、中学生ぐらいの頃から、学校・職場へ行く前に、朝刊を読むのが習慣でした。時間がないときでも、大まかに見出しだけは目を通して出かけたものです。
ところが・・稲里ではそれは不可能です。なぜなら、朝刊がその名に反して朝こないからです。稲里には新聞販売店がありません。新聞を取りたい人はどうするかというと、当然販売店に申し込む(ちなみに、悪名高い新聞勧誘員は稲里には決してこない!アパートで暮らしていた学生の頃は辟易していたあの新聞勧誘員が今は懐かしい)わけですが、そうするとどうなるかというと、新聞は郵便で届きます。稲里地区は郵便の集配が毎日午前11時前後です。従って朝刊を読めるのは早くても午前11時頃ということになります。夕刊に至っては一夜明けた後に翌日の朝刊と一緒に届きます。ついでにいうなら、これは北海道新聞(北海道ではもっともメジャーな新聞)に限ってのことで、それ以外の新聞はすべて翌日に郵便で届くことになります。賢明な方はもう気づかれたかとも思いますが、当然のことながら購読料の他に郵便代も上乗せして払わなければいけないことになります。さらに、郵便局が集配を休む日は新聞も決してこないのです。そんなわけで私は現在新聞を取っていません。職場で取っている新聞を昼休みに読むだけなのです。だって、馬鹿らしいでしょ!
一方、テレビ。稲里の家庭にはVHFやUHFのテレビアンテナは一切たっていません。なぜならば、山奥であるが故に、通常のアンテナでは電波がとらえられないからです。では、どうなっているのかというと、高台に共同アンテナなるものがあります。そこから、各家庭に共調ケーブルが引かれているのです。さらにそのアンテナを引いている家庭、すなわち稲里の全家庭はアンテナ使用料を払わなければならないのです。当然ながらNHKの視聴料とは全然別物なので、それは別途必要なことになります。反面、稲里ではBSアンテナ、及びCSアンテナを取り付けている家庭が割合多く見られます。さすがに衛星からの電波は、この山奥でも何の問題もなくキャッチできるのに加え、レンタルビデオ店などどこにもない稲里では、BS・CSはその代用以上に価値があるものなのです。ちなみに我が家ではBSアンテナ(WOWWOWは1年ほど前に契約解除しちゃったけど)とPerfecTV用のCSアンテナの二つのパラボラを庭に立てています。



6・ゴミ収集
稲里ではなんと燃えるゴミは月2度,燃えないゴミも月に1度しか収集に来ません。一般家庭ではどうしているかというと、基本的に家の近くで燃やしています。稲里で燃えるゴミというのは、火のつくゴミ全部を指すのです。しかし、私は職務的立場上、他の一般家庭と同じ行動をとるわけには行きません。時節柄?ダイオキシンを私が先頭を切って発生させる行為は、避けるのが賢明と言えます。しかし、週に何度もゴミを収集する都会に住もうが、ド田舎に住もうが、ゴミは同じように出るのです。中でも対処に困るのは生ゴミです。繰り返しますが、月にたった2度しか収集にこないのです。環境問題を考慮すればコンポスト等を利用し、土、肥料に変換させるのが望ましいのかもしれません。しかし、それも問題があるのです。稲里の気候では通常のコンポストでは、完全に土にすることができません。そのまま放っておくとどうなるかというと、コンポストの下から臭い液体が流れ出し悪臭を周囲に放つことになります。さらに、それが(何故かは文系の私にはよくわかりませんが)ハチ(それもスズメバチ)を呼び、ふたを開けたとたんに中からスズメバチが飛び出して来るという場面もたびたびあります。また、この臭いがカラス、キツネ(北海道のキタキツネはエキノコックスという風土病を持っています)や野犬、ひいては森のクマさんを呼び寄せる結果にもつながります。
百歩譲って、燃えないゴミの収集は月に1度でも何とか対処のしようがあります。ですが、生ゴミだけは何とかしてほしい。これはかなり切実な願いであります。

柳瀬家では,99年秋に生ゴミ処理機を購入しました。毎日フル稼働です。行政が対応できない分を自衛策で!ということですね。

00年4月から,制度が変わりました。資源ゴミの回収も始まりました。ガラス瓶とペットボトルは分別収集することになったのです。とはいえ,それも依然として収集車にぶち込んでいるだけだったなあ。中で瓶もぐしゃぐしゃに割れてるんだろうなあ!



7・上下水道

稲里には当然ながら下水道はありません。広大な範囲に40戸程度の家しかないのですから、下水道をひくのにかかる工事代とその使用頻度や効率を考えた場合、永遠に水洗化されないことは明白です。一部の家庭ではトイレが簡易水洗や浄化槽付き水洗になっているところもありますが、所詮はくみ取りか川への垂れ流しというわけです。大自然に囲まれた田舎ほど、環境問題には疎くいい加減だという実例です。
では上水道はどうなのかというと・・・飲料水は決して井戸ではなく水道水なのですが、これが問題なのです。広大な穂別町のうち、富内を除くほとんどの地区は同じ水源です。我が稲里にある簡易浄水場から供給されます。川の水に若干(だって「簡易」ですから)の処理をした水を流します。その際に法律があるそうで、一番末端のところで塩素濃度が○ppm(数字は忘れました)なければいけないのですが、末端でそれだけと言うことは浄水場を出てきたばかりの水はもっともっと塩素濃度が濃いことになります。つまり稲里の水道水は異常なほどに塩素濃度が濃いのです。それがどれほどかというと・・・なんかすっか会初代会長の小関一は「舌がピリッとする」と表現しました。稲里の水をやかんに入れて何度か火にかけると、分厚い白い固まりが内壁に固着しとれなくなります。どう考えても飲用にふさわしいとは思えません。某氏が町水道局に文句を言ったところ「死にはしないから」と返答され、あきれてそれ以上言う気力をなくしたとのこと。
そんなわけで柳瀬家では飲料水は水道水を使用していません。車で往復6時間ほどかけて全国名水第1位に選ばれた「京極の湧水」を汲みに行き、それを切らしてしまった場合はボトルで水を買ってきています。稲里の水は飲みたくないのです。ちなみに山田家はかなり立派な浄水器を使用していました。



8・温泉

稲里に温泉ができました。なんでも白亜紀の海水が源泉なのだそうですが,ここら辺は火山地帯ではないので,実は温泉ではなく冷泉です。汲んだ冷泉を水で10倍程度に薄めてわかしているのです。それでも,町内外からの多くの客でいつもにぎわっています。温度は若干ぬるめで,熱い湯が好みの私には少々もの足りません。飲用にしても様々な効果があるそうです。そんなことより最大の問題は,営業時間が8時までだと言うところでしょう(正確には8時までに行けば,入れる)。これでは,多少遅くまで仕事をした後では,いけません。なんとかしてほしいなあ。
これもいろいろありまして,現在では9時までに行けば入れるようになりましたが,大した変わりはないですね。

さて,この温泉ですが,いま,町内?に波紋を呼んでいます。ということで詳しくはこちら



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