オホーツク酪農研究会 → 酪農講座

シリーズ「飼養管理から疾病・繁殖を考える」
飼養管理から疾病と繁殖を改善 

飼料給与を改善する  第2回目 

 2)良質な粗飼料を給与する



@ 乳牛は粗飼料が必要だ  
すべての酪農家は良質な自給飼料を調製確保しなければならない、という意識は持っている。例えば「今年は乳量が伸びない、疾病が多発する、受胎率が悪い・・・」などの問題がでると、必ず今年の粗飼料の量や質の話題が持ち上がる。
統計的に、牧草およびとうもろこしにおけるTDNとCPの収量と栄養価は過去から年間多少の動きがあるものの変わらない。しかし、個体乳量は急激に増えており、多くの酪農家は給与方法のテクニックと濃厚飼料に依存している。酪農家は最も重要な粗飼料の質と量の改善を忘れて、ルーメンという一部分だけを追求したことになる。
なぜ、牛にとって栄養価の高いデンプンや糖の細胞内容物よりも、細胞壁のような繊維が必要なのかを考えてみたい。
 第一に、飼料を食べた時、繊維はルーメン内で互いに絡み合い胃液の中で浮かびマットを形成する。その中でいろいろなタイプの微生物が活動し易(やす)いように最適な環境を提供、飼料通過を遅くして小さな粒子をとらえ発酵させる。
 第二に、繊維は反芻を刺激するため、だ液を増やしルーメン内の酸性化を防ぎ微生物がバランス良く活動できる。長もの飼料はだ液を大量に分泌、濃厚飼料より切断サイレージは2倍、乾草は4〜5倍になる。また、噛み砕くとだ液と飼料が混ざり湿気を与え、飲み込みやすくするための潤滑剤となる。
第三に、繊維はセルロース、ヘミセルロース、ペクチンそしてリグニンを含む複雑な炭水化物から構成されている。飼料作物のNDF消化率は35〜75%と幅広いが、チモシー乾草は66〜77%を消化する貴重なエネルギー源である(Nocek&Russell 1988年)。
以上のことから、北海道では繊維の指標であるNDFは乳量、乳脂率、ルーメン内を総合的に判断して泌乳初期は30%が適当だという報告もある(道立畜産試験場1995年)。その繊維の75%は十分な長さの粗飼料から取るように推奨されている。
TMRに嗜好性の悪い粗飼料原料が入ると、いくら厳密な飼料設計をしても残食が増える。当初、「劣悪な粗飼料でも混合することでごまかすことができる」という意見もあった。しかし、給与飼料全体の採食量が激減、牛は美味しいものとそうでないものを見分けがつくため選び食いがおきる。
給与する人にとっては残食の量は気になるようで、大量にでると主に粗飼料を増減させて適当に組み替える。それを知らない飼料設計者は、乳量がでない、受胎が悪い、第四胃変位が増える・・・など相互の信頼関係が薄れる。
つまり、乳牛にとって粗飼料が少ない、劣悪だといっても単純に濃厚飼料へ置き換えることはできない。乳量を最大にして疾病を最小限にするためには、NDFを何%にするかせめぎ合いになる。現場で飼料の組み立てにおいて最も悩み、難しいところでもあり粗飼料の品質がキイワードになる。

A 良質なNDF源の給与を 
分娩直後は乾物摂取量が極端に低下する時で、し好性の良いNDF源飼料が必要になる。ルーメン内phは6.0〜6.3の弱酸性で、日内変動を小さくすることが細菌の数を増殖させ乳量を最大にする。低phはルーメンの運動を抑えVFAの吸収を少なくするため、phは6以下にならないようにする。
図U―8は粗飼料を無視して濃厚飼料であるデンプン含量を高めることによって第一胃phの推移を示している。その結果、蹄底潰瘍はデンプン含量30%区と35%区、40%区で発生したが、亜急性ルーメンアシドーシスがみられたのは40%区であった。飼料中デンプン含量の増加に伴って蹄底出血斑数と蹄底出血スコアも増加する傾向がみられた。ルーメンアシドーシスが認められなくても、飼料中デンプン含量が25%を超えると蹄底潰瘍発症の危険性が高まると報告している(道立根釧農試 2003年)。最近はパーラ内で蹄の周辺を水で洗浄するので、アシドーシスかどうかを色で判断できる。

第四胃変位多発年は天候が恵まれず、粗飼料の品質が懸念され分娩前後の乾物摂取量が少発年に比べ有意に低かった。これらは発症要因としての分娩前後における乾物摂取量不足を裏付けるものであった。第四胃変位は妊娠末期に四胃が子宮の圧迫により、著しく前方へ移動・変形することが認められた。乾物摂取量不足による第一胃容積の減少は、第一胃前房と第二胃が浮上して、これによって生じた空隙のため、第四胃体部が上方に変位し易くなった(道立畜産試験場 2004)。
 高乳量農家群の方が低乳量農家群より濃厚飼料の給与量が多く、乳脂率3.0%以下の割合が高い。分娩後に疾病が多発している酪農家群(10戸618頭)は少発酪農家群(9戸1057頭)に比べ、乳脂率が0.25%、乳タンパク質率が0.04%ほど低かった(表U―9)。乳脂率はルーメンphを判断する指標として活用でき、繊維が極端に低下することなく3.5%以上が望まれる。

 泌乳初期における乳牛の乾物摂取量を決定するのは、粗飼料などのNDFが考えられている(Martens、1992)。単位重量当たりの容積はNDF含量が、大きい飼料ほど容積が増えるためお腹に入りきらない。特に、泌乳初期、初産牛のNDF摂取量は2産の30〜60日に比べて、85〜90%しか食い込めないので、嗜好性良く栄養価の高い粗飼料が必要になる。
粗飼料を中心に内容物が豊富に食い込むことで、ルーメン、第2胃から4胃、下部消化管の動きが活発になり消化を高める。飼料の食い込み量を落とさないためにも、粗飼料や副産物の良質NDF飼料が求められている。

B 毎日、同じ濃度の飼料を
牛のルーメン内発酵を安定させ利用効率を高めるためには、微生物を最大にすることがポイントになる。菌が環境に慣れるのに時間を要するので、食べるエサは日々バラツキを少なくするべきだ。給与飼料は毎回正確に計測して、同濃度のエサと水分を一定にすることがルーメンの恒常性を保つ。
1戸の酪農家を旬別に時系列でみていくと、年間の数値が大きく上下することは珍しくない。その動きはサイレージが変わった、劣悪であった、など粗飼料の質量変更時におきるものであった。
 AとBの2農場における年平均MUNは10と12mg/dlで適正範囲に入っている。しかし、A農場は年間36巡を通して9〜11mg/dlでほぼ一定であるのに対し、B農場は毎旬8〜16mg/dlと激しく上下していた。A農場は個体乳量1万kgだがB農場は5千kgで、毛づや牛の動きに差があった(図U―9)。

我々の調査では年間を通して、MUNが旬別に変動する酪農家は乳タンパク質率や乳脂率も標準偏差が大きい。しかも、経過別バルク乳MUNが旬別に変動する酪農家ほど個体乳量が低いことが分かった(図U―10)。

つまり、MUNは日々、週や月単位で変わることなく、飼料は年間を通して安定的な給与が望まれる。飼料設計は細かく頻繁に行うことが良いのではなく、で最小限にするべきだ。そのためには飼料、特に粗飼料は均一なものを確保すべきで、筆者は次のことを提言している。
給与段階でなく粗飼料の更新および調製段階からの組み立てが必要になる。更新は10ha以上を草種・品種、特にマメ科割合を統一することで、飼料中タンパク質濃度をほぼ同一にできる。
全体の収穫期を5日以内に抑えることで、エネルギー栄養価に大きな差がみられない。調製は1日単位で1本のサイロに詰め込むことで、原料の水分がほぼ一定になる。北海道では細切サイレージが普及しており、切断長はシャープに9〜12mmがベストと思える。長くなると鎮圧が十分にできず、給与しても選び食いが生じる。鎮圧は徹底すべきだが大量の草を踏むことが難しく、15cm以下に薄く落とすような運搬作業を見直す。
写真は2日間にわたって低水分と高水分を詰め込んだ境目で、調製がうまくいかないと、カビがひどくなり肝機能障害の恐れが懸念される。二次発酵防止のためサイレージ取り出し面をシャープにし、取り出し量を多くする。
個体乳量14千kg搾っている農業者は「飼料の濃度より24時間365日同じエサを与えることだ」と断言している。同時に、均一なエサを摂取させるためには、1頭当たりの飼槽幅を広くとり掃き寄せ回数を多くすべきである。

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