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日本の悲しい捕鯨事情


最初にお断りしておきます。これからお話しすることは私のリサーチ・ペイパーの"The Whaling Controversy"の完全和訳ではありません。もう少し読み易く、分かり易い解説書のようなもののつもりです。しかし、すべてはリサーチ・ペイパーの調査から得た資料を元にしています。


Introduction
「鯨肉」・・・ずっと心の奥の方にはあったけれど、随分長い間忘れていたことでした。今、日本を始め捕鯨国と言われる国々では、IWCから商業捕鯨が禁止されています。

アメリカでの出来事。学校の図書館に“The Japan Times”という新聞がありました。日本のニュースに飢えていた私は、空き時間があると、よくその新聞を読んでいました。ある時私の目に飛び込んできたのは、"IWC: one whale of a lie"という見出しの記事でした。“鯨?鯨のことなんて、今頃なんだろう?” 捕鯨のことはずっと心の中で引っかかっていましたから、思わずその記事に熱中してしまいました。
その記事を書いたジャーナリスト、Charles J.L. McKeeさんは、IWCをうそつき呼ばわりしていました。IWCとは、International Whaling Commission(国際捕鯨委員会)のことです。
この組織ができた目的は、“鯨資源を(絶滅させることなく)適切に確保し、そのことによって捕鯨産業の秩序ある発展を可能にする”ということでした。1948年のことでしたが、それまで乱獲してきた鯨資源が減少してきたことへの反省もあって、この組織ができあがりました。
考えてもみてください。このIWCは実は捕鯨を全面禁止する組織ではなかったはずなんです。鯨資源を上手に利用して、捕鯨産業の発展を促すはずの組織だったんです。McKeeさんはここの部分を指摘してIWCはうそつきだ、と言っていました。

IWC(International Whaling Commission)とアメリカ
さてそのIWC、どんな組織なのかご紹介しましょう。
1996年時点で6つの捕鯨国と33カ国の反捕鯨国が加盟しています。目的は先に延べた通りです。すべての決議はIWC加盟国の4分の3多数決で決まります。そのサブ組織に科学的な見地から鯨の数量、捕獲可能量などを出す科学委員会(Scientific Committee)などがあります。
決議ですが、これは不公平だと思いませんか? 捕鯨国と反捕鯨国では意見は真っ二つ。全然相いれません。多数決だから捕鯨国が勝つはずがありません。まったく、捕鯨産業の発展はどこに行ったんだか。
アメリカがこの組織の中で大いに力があります。最初に鯨を守ろうを言い出したのはアメリカで、その音頭の元、たくさんの反捕鯨国が加入したのですから。
1970年代始め、アメリカはベトナム戦争の枯葉剤大量投下から起こった徹底的な環境破壊への懸念、反戦運動、麻薬の蔓延など、いろいろな問題を抱えていました。その人々の目をなんとかよそに向けようとしたのが、自然保護。その象徴が鯨だったのです。
鯨保護はアメリカにとってとても都合の良い物でした。鯨油の産業はもう下火だったし(石油がとって変わりました。)、鯨が自分達の食料にはなり得なかったので、それを擁護することは経済界になんのマイナス要素もなかったのです。

鯨って絶滅しかかってるんじゃないの?
確かに乱獲のおかげで量が極度に減少している種類もあります。
シロナガス鯨、ナガス鯨、イワシ鯨、北極セミ鯨などは資源として捕れる状態ではありません。けれど、逆に増えている種類もいるの、ご存知でした?
それが、ミンク鯨です。
今、日本の捕鯨船が調査捕鯨をして年間400頭捕っているのがこの種類です。南氷洋に76万頭いて、年間2,000頭ならば捕獲可能という数字がIWC科学委員会によって出されています。
実はこのミンク鯨をめぐって、IWC内でひと騒動あったのです。聞くも涙のかわいそうなお話です。
1991年と92年に、IWCの科学委員会が科学的に調査した結果、“ミンク鯨は決められた制限量を捕獲しても鯨資源を減らすことがない。”と太鼓判を押し、その捕獲可能量をIWCから承認を受けようとしました。が、なぜか多数決で却下されてしまいました。科学的な根拠があるにも関わらず、自分の所属する組織からその自分の専門分野である研究を否決されたのです。一度ならずも二度も。それに怒った当時の科学委員会最高責任者のフィリップ・ハモンドさん、意を決して抗議の辞任をしています。名誉だってプライドだってありますから。
なぜIWCはそうまでして鯨を捕らせたくないんでしょう?本当はそういう組織じゃないはずなのに。・・・それには、アメリカ他列強西欧諸国の力があります。彼らの偏見がそうさせます。鯨は食べてはいけない動物なんです、彼らにとって。増えている種を捕獲せずに放っておいても、環境破壊につながるというのに。ほら、数が増えるとプランクトン食べ尽くしちゃうでしょ?

偏見
いまでは日本でも“ホエール・ウオッチング”なるものが流行ってて、鯨って神秘的、頭がいい、なんてイメージがありますよね。頭のいい鯨を乱獲して絶滅させるなんて、最低!なんて思われている人も中にはいらっしゃるかもしれません。でも、考えてみれば、どんな動物だって頭がいいのかもしれないんですよ。カラスや猿、犬なんてその頭のよさをよく知られていますし。
アメリカ人はやたらと海洋哺乳類が好きです。理由は“Intelligent”だからです。“Intelligent”な動物は殺してはいけない。ましてや食べるなんて、なんて野蛮な!という論旨です。
反対に“Intelligent”でない大陸動物 (牛や七面鳥やブタや鶏)はどうでもいいのです。そいつらを、今のアメリカ人に足る以上に豊富に作って、安い肉を手に入れるためにはどんなことでもしています。おかげでアメリカの東北部の山岳地帯やアマゾンの森林は丸裸になるし、温暖化を担うメタンガス問題には目もくれません。
牛だってほんとは“Intelligent”なのかもしれない。誰も研究しないだけで。でも、アメリカ人にとって海洋哺乳動物は特別なんです。自分達にはそれを食べる習慣がないから。だから鯨は自然保護の象徴になり易いのです。

わががま
ここでひとつ、アメリカのひどい「わがまま」をお話しします。
アメリカにも、捕鯨をする習慣のある部族がいます。代表的なのはアラスカイヌイットの Barrow の村人、そしてもう一つはシアトル近郊のMakah族の人々。
両者とも捕鯨の文化を持っていますが、Barrow の人々はアメリカ政府、IWCから簡単に捕鯨を許され、Makah 族の人々はつい去年(1997年)の秋まで捕鯨を許されていなかったのです。不思議なのは、Barrow の人々は世界で最も絶滅に近い種の北極セミ鯨の捕獲をしているにもかかわらず、捕鯨反対のデモもされていません。なぜか?
Barrow の町には石油が出ます。おかげでそこの住人は非常に潤っており、54インチの大きなテレビは持っている、株の取引にニューヨークまでひとっ飛びする、そして冬の極寒の頃にはハワイまで休暇に行くという贅沢な生活を送っています。捕鯨もその文化的価値(?)を認められ許されているので、最新鋭のテクノロジーを備えたキャッチャー・ボートで挑みます。
つまり、金があるということは、アメリカでは力があるということなのです。
ここでもう一つ、非常に対照的な捕鯨の町をご紹介しましょう。
日本の沿岸小型捕鯨の町に鮎川という東北の町があります。そこの経済は捕鯨で成り立っていましたから、1985・86年のIWCのモラトリアム(当分商業捕鯨は禁止する、というもの)以来、若者は職を失ない、出稼ぎに出なければならず、残ったのは老人と女と子供だけの寂しい町になりました。鯨に変わる産業としてサケの養殖を試してみましたが、北米産のサケにやられ、あえなく失敗しています。長い捕鯨の歴史を一気に断ち切られて他の産業にうまく移行できず、経済的に困窮しているのです。
Barrow と鮎川。同じ捕鯨を文化に持つ2つの町は、なぜこんなに違うのか。一方は文化と称するレジャーに絶滅鯨を使い、他方は絶滅とは無縁の鯨を捕って町を潤わせることもできない。
これはアメリカを中心とする西欧諸国の大いなるわがままというより他にないでしょう。 彼らは自分らの鯨擁護の考えを、鯨の文化がある国々(北のノルウェーやカナダ、アイスランドなんかもそうです。それと日本も。)に力づくで押し付けようとする。横暴です。

ペリー来航
ところで、日本に開国をせまったペリーっていますよね。あの人、当時のフィルモア大統領の命で開国をせまりにきたんですが、その大きな理由のひとつが捕鯨と大いに関係ありなのです。
当時太平洋には、ヤンキーホエーラーズと呼ばれた多くの捕鯨船が海を荒らしていました。彼らは鯨、それも肉なんて目もくれなかったんで、鯨油と骨だけ採ってあとのものは全部海に捨てていたんですけど、そのもとになる鯨を捕りまくっていたのです。始めはアメリカの西海岸近くが漁場だったんですが、あまり捕獲する数が多いのでその鯨資源がすぐに尽き、徐々に西へ西へと漁場を広げていきました。そしてその末たどりついたのが、日本だったというわけです。日本には捕鯨船のための食料、水、そしていざという時の避難所を設けたくて、それで開港を迫りました。
まったく、彼らのおかげで太平洋はおろか、大西洋、インド洋、北洋など、ありとあらゆる海洋の鯨は激減したのです。18世紀から19世紀の頃です。実は、鯨の油はそれほど魅力的だった。なにせマイナス40度Cになっても凍らない、非常に良質な油なのですから。産業革命以来の機械文明には鯨の油は欠かせなかったのです。そうそう、余談ですが、あの月面着陸を果たしたアポロ宇宙探査ロケットは、鯨油のおかげで月まで行けたんですよ。

まとめ
ここまでお付き合いくださって、どうもありがとうございます。できるだけ短くしたかったのですが、やっぱり長くなってしまいました。
さて、まとめです。
この捕鯨問題、背景にあるのはまず食の違いです。捕鯨国では鯨を食べるけれど、反捕鯨国では食べない。これは歴史の違いから来ています。
西欧諸国では11,000年の羊の放牧の歴史があります。羊を飼ってそこから食料、生活用品を得ていた。日本では12,000年の捕鯨の歴史があります。国土が狭いことから海に出て水産物や鯨を捕って、そこから食料や生活用品を得ていた。
それは当然、食の違いが出てくるでしょう。ですから、ここまではいいんです。双方、相手の文化を正しく知って、それを大切にすればいいことなんです。
けれど、西欧諸国はそんなことじゃ気が納まらない。鯨は彼らにとって食べ物じゃないんです。そしてその考えを無理矢理捕鯨国に押し付けようとしている。多数決の原理と金の力で。結果、日本は正当な商業捕鯨ができない。資源がそこにあるというのに。

さて皆さん、ここまで読んでこられてどう思われましたか?
悲しい話じゃないですか。。。
鯨おいしいですよ。アレルギーフリーだし、不飽和脂肪酸がたくさんあってコレステロールを下げてくれます。DHAだってあるし、高蛋白、高鉄分なのです。捕獲可能数の分だけ捕っていれば、自然破壊もありません。
ほんとに偉いお肉です。
見直さない手はないと思います。日本の将来のために。



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