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弁護士大鹿明夫法律事務所(横浜 関内)のWebSite
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Q & A 01 「自筆証書遺言の書き方」 (2003年5月5日)
Q.私(甲野A太郎)は年金暮らしで、老妻と一男一女の子供がおります。妻は数年前から寝たきりの状態で痴呆も進んでおり、同居している長女の介護なしでは生活できない状態です。長男は若い頃から様々な事業に手を出しては失敗しており、現在も負債を抱えるなかで一攫千金を夢見て商売しています。私は長男にはこれまでかなり多額の援助をしていますが、長男は私を見るたびに金を無心するだけですので全く頼りになりません。ところで私は近頃めっきり衰えて先行きはあまり長くないと感じています。後に残る妻の生活がとても心配です。遺産としては自宅の家屋敷と預貯金がありますが、大したものではないので妻の余生のために使って欲しいと思います。しかし妻は一人で財産を管理することはできませんので、親孝行一途の長女に遺産をあげてその中から妻の介護等の費用に使ってもらいたいと考えています。私の考えに沿った何か簡単で良い法律上の制度はないでしょうか?

A.とりあえず、ご自分で次のような遺言書を書いておくのも一案です。
「遺言者甲野A太郎は、以下遺言します。
一、遺言者は、全財産を長女乙山B子(年月日生)に相続させます。
一、乙山B子は、これまでどおりに誠心誠意、実母甲野C子(年月日生)を介護して孝養を尽くしてください。
一、この遺言の執行者として、長女乙山B子を指定します。
平成○年○月○日
         甲野A太郎  印 」


 これは、自筆証書遺言の例文です。遺言(いごん・ゆいごん)は、死後の財産の処分や帰趨を生前に行う意思表示です。遺言をしないで死亡すれば法定相続により遺産が承継されます。遺言により法定相続による規定と異なる定めができます。甲野A太郎さんは、愛妻のために、長女に全財産を承継させて介護や扶養を託そうと考えたものですが、それを簡潔な遺言書にまとめたものが例文です。
遺言は、民法の定める要件に従ったものでなければ無効になります。自筆証書遺言は、遺言する人が、全ての文章・日付・氏名を自分で書くことが要件となっています。遺言書(遺言状)という書面に自書することが必要ですから、自筆できなければ作成できません。代筆やワープロなどで作成しても無効です。映像ビデオや録音のメッセージでも駄目です。
 遺産を承継させたい人の特定は、続柄や生年月日を氏名に付記すれば十分です。その人が、相続人なら「相続させる。」、相続人以外なら「遺贈する。」という言葉で文章を完結させてください。(「あげる」「与える」ならそれ程問題にはなりませんが、任せるとか委ねるとか譲るとか管理させるというのは駄目です。殊に不動産登記手続が通りません。)
 承継させたい遺産や人が多数に渡り複雑になる場合は、自筆証書遺言で作成するには向いていないかもしれません。A太郎さんのように、内容が単純で相続人が少ないケースでは人に細かく多数記載する
 日付は、確定的な暦上の年月日を記載します。(挨拶状によくある○年○月吉日というのは、具体日が特定できず遺言書は全体として無効となってしまいます。)
 子供の間で不公平な内容となる遺言は将来の争いの種を蒔くようで好ましくないと思いますが、甲野さんのように実質的に公平ならば構わないでしょう。配偶者や長男には「遺留分」という遺言でも奪えない遺産の取り分(相続分の半分)が認められていますが、血族間の情愛で自然と遺言者の意図が理解されて遺言どおりのままでも異議がでずに終わることもあるでしょう。
 遺言執行者の指定はなくてもよいのですが、この記載がないと法定相続人全員の署名・実印押印・印鑑証明の提出を求める金融機関もあるので折角の遺言書を作成した意味が薄れてしまうので、なるべく記載すべきです(遺産が預貯金のケース)。A太郎さんのように長女に指定しておいて遺言書を保管させておくこともできます。遺言執行者に指定されても辞することができますし、弁護士等に代理人に委任することもできます。
 自筆証書遺言は、このように簡便なところが利点ですが、遺言者死亡後に遅滞なく「検認」の手続きを家庭裁判所に申し立てなければなりません。また遺言書の訂正方法は少々特異で分かりにくいですから、何度でも気楽に書き直しのできる単純な内容の遺言に向いています。複雑な内容になる場合は、「公正証書遺言」で作成した方が良いでしょう。この場合は検認を受けることは不要です。また、とりあえず自筆証書遺言を作成しておいて、後に公正証書で作成してもらうというのでも結構です。 (以上)

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