☆北辰妙見信仰の系譜 1
もうすでに、北辰妙見信仰という言葉が出ていますが、ここでは一般的に北辰妙見信仰がどういうものであるか、概観してみることにします。難しい言葉も出てきますが、わかりやすく解説したつもりです。

(1)北極星の特別な地位
 
まず、北極星(ポラリス)が、どういう星か、説明しましょう。こぐま座のアルファ星で、ちょうどくまのしっぽの先に当たり、光度2.1等の星です。というよりも、地球の北の地軸の延長線上(天の北極)にあり、一晩中動かない星といえば、誰でも知っていますね?。実際は、天の北極よりも1度近く離れており、小さな半径で日周運動をしているのですが、古来より航海などで北を指す星として、大変重視されてきました。
 日本では、「子(ね)の星」と呼ばれています。子は十二支の最初ですが、方角でいうと北を指す言葉です。ちなみに、「子午線」というのは、子と、南の方角午(うま)を結ぶ線という意味があります。
 見かけ上、すべての星(太陽や月も含む)が北極星を中心に運行するので、昔の人々は、この星に特別な地位を与えました。古代中国では、北極星に対する信仰が生まれ、日本にも入ってきて、これから述べる北辰妙見信仰になったのです。

(2)道教と陰陽道における北辰信仰
 古代中国では、あらゆる星が北極星を中心に巡ることから、全宇宙を司る星として、最高レベルの神として崇拝されるようになったとは、すでに書いたとおりです。
 北極星は、北辰(ほくしん)と呼ばれ、天帝の化現した姿だと信じられていました。辰とは、龍神のことです。北辰は、道教の中心的な神である太一神(たいいっしん)と同一視され、また、陰陽道で宇宙生成、森羅万象を司る神として位置づけられる泰山府君(たいざんふくん)とも、同一神であると見なされることもあります。
 陰陽道(「おんみょうどう」と読む。余談だが、山陽と山陰を結ぶ鉄道を総称して「陰陽連絡線」というが、こちらは普通に「いんよう」と読んだ方がよい)とは、中国の陰陽五行説(すべてのものが「陰」と「陽」で成り立つという二元論。たとえば、太陽は「陽」で、月は「陰」であるなど。この思想は、日本を含む中国文化圏に多大な影響を与えた。「五行」の方は、あとで説明する)にもとづく自然観察の方法に、様々な民間信仰が結びついて神秘思想として体系化されたものです。
 陰陽道における北辰の概念は、中国のものとほぼ同じで、天地草創の中心に位置する宇宙根元の神とされます。北辰から、日月が生じ、五星(木星、火星、土星、金星、水星)が生まれ、それが五行になったといいます。
 五行とは、すべてのものを構成する元素と考えられたもので、木火土金水(もっかどごんすいと読む)の五つから森羅万象は成り立っているという中国の宇宙観です。さらに、五行から人間が生じ、人間の根元をたどれば北辰に達すると考えられていました。
 ちなみにインド(仏教)では、四大(地水火風)、それに空(くう)を加えた五大という考え方があります。墓地で見かける五輪塔は、五大を形にしたものです。
 北辰信仰は、北極星に対するものですが、広く北斗七星も「辰」と見なされ、北斗祭祀もまた、北辰信仰と習合していきました。下松の降星伝説で、「七星」とあるのも、北斗信仰との関連を想起させて、興味深く想います。形から言えば、北斗七星の方が、より辰(龍神)のようにも見えますね。
 陰陽道では、北辰は今日でも、鎮宅霊符神(ちんたくれいふしん。鎮宅霊符とは、陰陽道最強の護符のこと)として祀られています。しかし、一般には次に述べるように、仏教に取り入れられて妙見菩薩に対する信仰として、普及していきました。
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