第14回演奏会を語る!

第14回演奏会は久しぶりにフランチャイズを移しての演奏会です。自信を持って、得意(?)のドビュッシーを持っていきます。パンフレットに書ききれなかった話題をこちらでご案内させていただきます。

南聡/和声学研究・I op.50‐1(委嘱作品・初演)

演奏時間 約12分
編成 弦7部(Mn1、Mn2、Md、Mc、Gt、Ml、Cb)・マンドリン4重奏(Mn1、Mn2、Md、Mc)・独奏ヴァイオリン、ハープ、ティンパニ、シロフォン、グロッケンシュピール
楽譜 未出版。作曲者自筆譜より、メトロポリタンマンドリンオーケストラが作成・校訂(スコアおよびパート譜)。
ちょっと久しぶりのMET委嘱作品で、これで6曲目となります。
音楽之友社のONTOMO MOOKのシリーズに「日本の作曲20世紀」という本があります。現代日本を代表する77人の作曲家の紹介と作品目録が掲載されているのですが、その中に昨年取り上げた「彩色計画VI」があるんですね。これは初演時の制約から、マンドリン・チェロを欠いた編成でした。そこで、是非、私たちのメンバー全員が演奏できる形態で、委嘱をお願いしたのです。
で、届いたスコアが、この編成でした。いや〜、事務局スタッフとしては、ひっくり返ってしまいました(笑)。
マンドリン4重奏は、オーケストラと全く別の動きをします。さらにはヴァイオリンを加えて5重奏のようにもなります。このマンドリン4重奏は、途中から妙に調子っぱずれなピチカートを始めるのですが、実は1/4微分音、チューニングを引き上げるのです。最後の舞曲は、この音程があがった4重奏が堂々とオーケストラに切り込んで行きます。楽曲の構成は、作曲者ご自身に解説をいただいているので、こちらもご参照ください。
南聡さんの作品は、色彩感、コードの組み立てが個性的で、おやっ と思うシャレも効いた感じがするんですね。委嘱作品でも、跳躍する8分音符が並んだリズム的な楽章が「カンツォネッタ」、比較的ゆっくりとした重たさがある楽章が「ダンス」ですから、不意をつかれた感じがあります。でも、ご本人のお話をうかがうと、なるほどと納得しますし、それぞれ「小唄」と「舞曲」を感じられるように演奏しないとならないのです。まるで「能」の踊りを思わせる終曲は、また新しいマンドリン・オーケストラの響きを導き出してくれます。

アルバン・ベルク(笹崎譲編曲)/ピアノ・ソナタop.1

演奏会の1曲目には少々重たいかもしれませんが、対位法を屈指したソナタ形式による構築された美しさと、ベルクの血が通ったロマン的特長が同居している傑作ピアノ・ソナタです。自ら作品番号1番を与えたこの曲の完成度の高さは脱帽ですね。
この作品の楽想は、ピアノ1台には納まりきっていない感があります。ベルクは、なんでピアノのために書いてしまったんだろうと思うほどです。対位的要素が複雑に絡み合いますから複数のパートのアンサンブルに十分たえられますし、むしろその方が楽曲の魅力が増すのではないかと思います。どうやら、同じようなことを感じた人もいるようで、ファーベイによる管弦楽編曲版がシャイー指揮ロイヤルコンセルトヘボウ管弦楽団による録音が知られています。

☆エドワード・エルガー(笹崎譲編曲)/交響曲第1番op.55より第3楽章

うっ、うつくしい。。。 
歌が溢れ出している「アダージョ」です。ロマン派の音楽だったら、もっと情熱的になるのでしょうが、英国紳士のエルガーは、気品を失いません。今度の演奏会で、もしこの作品が赤い色になってしまったら、それは失敗です。私のようなアマチュア音楽家は、うっかりしてしまうとどの作品も同じ色を塗ったような演奏をしてしまうのですよ。いろんな音楽に触れるということは、そういった意味でも大切です。
この繊細な音楽の編曲スコアは、なんと弦のパートだけで26段!どのパートもそれぞれ2名の独奏者を含めて、大体6声にて書かれています。演奏は難しいわけではないですが、細心の心配りをもって望まないと失速してしまいます。私たちが常に目標として掲げているピアニシモの音楽を、トッパンホールが支えてお客様の耳までお届けできるように、演奏したいと思います。

クロード・ドビュッシー(笹崎譲編曲)/「前奏曲集(第1巻)」より「さえぎられたセレナード」

「前奏曲集」との楽譜は、それぞれの楽曲のタイトルが「1」とか「2」とか、番号しか書いていないんですよね。で、曲の最後にカッコつきでタイトルらしいものがある。ドビュッシーは、きっと表題に左右されずに音楽を聞かせたかったんでしょうね。
「ギターのように」と表情記号が書かれた冒頭は、もちろん今回はギターが弾きます。スペイン風のアルペジオにのって、物悲しげなセレナードがマンドロン・チェロによって歌われてます。ダウンタウンで恋歌を歌っていると、突然と「静かにしろー!」とばかりにオーケストラが中断させてしまいます。さらには街の喧騒にじゃまされたり。。。それでも、何か情けなさも感じさせつつも、歌が続いていきます。
楽譜の最後には「さえぎられたセレナード」。おしゃれな演出ですね。

クロード・ドビュッシー(笹崎譲編曲)/「映像(第2集)」より「葉末を渡る鐘の音」

私のこの曲に対する「映像」は、沈黙なのです。木々の間を渡っていく寺院の鐘の音は、しっかりと聞こえるのですが、静寂がこわれることはない。何かそんな感じ。

クロード・ドビュッシー(笹崎譲編曲)/「管弦楽のための映像(第3集)」より「イベリア」
(1.街の道や抜け道を通って  2.夜の香り  3.祭りの日の朝)

いわずもがな、ドビュッシーの代表的管弦楽作品。METでは、「春」「ペレアスとメリザンド」を、別な機会に小出先生とは「ノクチュルヌ」を取り上げていますから、残りの課題曲はいよいよ「海」かしらん?(笑)
私のお気に入りは、2楽章の「夜の香り」。ためらいがちな冒頭マンドラによって歌われる5音音階による導入から、深々と夜がふけていくイメージ=映像が広がっていきます。マンドラ奏者の私にとっては、このフレーズにどのような命を吹き込もうか、ずっと考え続けています。ドラマチックなスペインの夜のエクスタシーを演出できるよう、うずうずもしています。ドビュッシーの和音に対する鋭敏なセンスは、こうした音楽に特徴的に表れています。