関西キャリア・コンサルタント協会は多士済済。本当にいろいろな経歴と実力を持った人が集まっています。昨年の8月の例会では、会員の服部博幸さんの研究発表がありました。服部さんは長く島津製作所に勤務され、1990年の前後、足掛け5年、現地の子会社(ロスアンジェルス)で、事業部長をしていたという経歴の持ち主。工学博士で、社会保険労務士という素晴らしいキャリアを持っています。
服部博幸 (工学博士、社会保険労務士) 関西キャリア・コンサルタント協会のホームページ(http://www.abcsoft.co.jp/kcca/) |
今回の発表は、氏が滞米中に経験された米国の労働条件と、帰国後に社労士として研究された日本の労働条件との比較を、実務知識をもとに面白く有益な情報としてまとめて頂き、非常に参考になりました。
「今晩は!セクハラシャローシの服部です!」から始まり、一同爆笑のうちに始まった発表で、服部さんから @就業規則 Aセクシャル・ハラスメント B老齢年金 の3項目について話を聞きました。
実は、「セクハラシャローシ」で大爆笑になったのは、その前の7月、関西キャリア・コンサルタント協会の一泊研修会で行われたゴルフ大会で、勝馬投票券の服部さんの馬名が「セクハラシャローシ」だったのです。
したがって、就業規則を作成する目的が日米で、はっきり違っている。日本では「労働者の保護(労働省)」が、アメリカでは「企業(家)の維持、発展」が目的になっている。
就業規則を日米で比較してみると、日本のものには、前文が殆ど記載されていないが、米国では「Employee Handbookの前文」に重要な目的が記載されていて、「@ 労働者はいつでもこの会社を辞めることが出来ること、同時に、A 会社はいつでも労働者を解雇することが出来ること(という
Employment at-willの概念)」が明文化されている。日本の労働者保護と米国の会社保護政策?との相違は歴然としているのです。基礎資料 |
1、1 制定の目的
| 日 本(就業規則) | 米 国 ( Employee Handbook ) |
| ・安心して労働に励むことができる。 ・労働条件を統一的、画一的に処理できる。 ・職場の秩序を維持することができる。 ・就業規則を遵守している限り使用者の恣意的な制裁を受けない。 |
・新入社員の教育に有効 ・管理職の教育に役立つ ・従業員間のコミュニケーションを良くし, 混乱を防ぐことができる。 ・公正さと安定さを進めることができる。 ・法的な問題の発生を予防することができる。 |
| ・防御的・消極的 | ・攻撃的・積極的 |
| ・労働者の保護(労働省) | ・企業(家)の維持、発展 |
1,2 就業規則の項目
| 労働基準法等 | 項 目 | 日 本 | 米国(California) |
| 前文 | × | ○ | |
| 89条第1項第1号 | 就業、休憩時間 休日、休暇 交代就業 |
◎ ◎ ◎ |
○ ○ ○ |
| 同上第2号 | 賃金の決定、計算の方法 (時間外勤務を含む) 支払いの方法、締め切り時期 昇給 |
◎ ◎ ◎ |
× ○(超勤関係のみ) ○ × |
| 同上第3号 | 退職 | ◎ | ○ |
| 同上第3号の2 | 退職手当 | ○ | × (解雇予告手当を除く) |
| (高年齢者雇用安定法第4条) | 定年 | ○(60歳以上) | × (法律違反) |
| 同上第4号 | 臨時の賃金 | ○ | × |
| 同上第5号 | 食費作業用品等の負担 | ○ | × |
| 同上第6号 | 安全及び衛生 | ○ | ○(非常に簡単) |
| 同上第7号 | 職業訓練 | ○ | × |
| 同上第8号 | 災害補償、業務外の傷病に関する扶助 | ○ | ○ |
| 同上第9号 | 表彰 | ○ | × |
| 同上第9号 | 制裁 | ○ | ○(多項目、具体的) |
| 受領証 | × | ◎ | |
| 任意雇用の確認 | × | ◎ | |
| 将来変更する可能性の確認 | × | ◎ | |
| ハラスメントの禁止 | ×(○) 注*1 | ◎ | |
| 機会均等雇用 | × | ◎ | |
| 紛争の調停 | × | ○ | |
| 服務規律(就業時間内) | ○ | ○ | |
| 服務規律(就業時間外) | × | ○ | |
| アルコール・麻薬の乱用 | × | ○ | |
| 親族の雇用 | × | ○ | |
| 同上第10号、育児休業法第6条 | 育児休業等 | ○ | ○ |
| 禁煙 | × | ○ | |
| 公用欠席(選挙、陪審) | × | ○ | |
| 子女の学校への出席の為の欠勤 | × | ○ | |
| 注意! | 雇用に対する基本姿勢 | 雇用契約 | 任意雇用 (Employment at-will) |
| 備 考 | ◎ : 必須項目(日本においては絶対的必要記載事項) 注*1: 労働基準法には記載がないが、労働省告示で記載を推奨している。 |
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1、3 労働時間・休日
| 日 本 | 米 国(California) | |
| 労働時間 | 40時間/週 注*3 超過勤務(限度時間) 15時間/週 45時間/1ヶ月 360時間/1年 |
40時間/週 一般には72時間/週(超過勤務時間は32時間)以上の労働を要求されることはない。 |
| 割増率 | 法定以上 : 25% 深夜勤務 : 25% 休日 : 35% |
8時間/日以上: 50% 12時間/日以上: 100% 休日 : 100% |
| 年次有給休暇 | 年次有給休暇 最大20日(経過措置あり) |
・使用者は年次休暇を与える権利を持つ。 ・年次休暇は給与の一部である。 ・勤務期間に対する休暇付与率は使用者が決める。(日数とは限らず時間で表示してもよい) ・使用しない休日を買い上げてもよい。 ・使用権利は放棄させられない。 |
(実例) |
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| 病気休暇 | 年次休暇に含まれる。 | Sick leave を与えることは使用者の義務ではないが、インセンティブとしてしばしば設定されている。(例:60日まで給与の2/3を支給) |
| 休日 | 国民の祝祭日 合計14日
新年、成人の日、建国記念日、春の彼岸、緑の日、憲法記念日、子供の日、海の日、敬老の日、秋の彼岸、体育の日、文化の日、勤労感謝の日、天皇誕生日 |
最も普通に与えられている休日 合計 10日
New Year's Day |
| 注*3 : 例外的に小規模な商店や飲食店等では46時間まで認められている | 注*2 : 休日にしないところ(州)も多い |
米国では、セクシャル・ハラスメントは差別の中の一つとして扱われている。日本の場合は、労働基準法や機会均等法に制定されているが、定義の範囲が狭く、しかも包括的な条文となっており、近年指針として法制化されたに過ぎない。
米国では「差別すること」はアンフェアな行為、もっとも基本的な悪い行為として、社会的に指弾されることになる。差別の定義が確立していて、その項目は10項目に及び、その条文も明確である。会社には「ハラスメントの禁止事項および被害者となった場合の届出機関」を明示したポスターを掲示する義務が課せられている。
セクシャル・ハラスメントに関する項目は差別10項目の内の2項目に過ぎない。その他のハラストメントは人種・国籍・宗教等は当然としても年齢・軍隊経験が差別となることには驚きがある。
日本人としては、アメリカで採用面接をする時、年齢を聞くことも出来ないのは大変な不自由さを感じるが、実力社会の米国では当然なのだろう。日本のリストラでは、中高齢者から対象になるが、アメリカでは人員整理の際、在職期間の長い者が有利になるというのは高年齢側の私達にとっては羨ましい限りである。
米国でのセクシャル・ハラスメント裁判の話は興味があり面白かった。判例をもとに代償型と職場環境型の事例が紹介され、セクシャル・ハラスメントに関しての先進国?、米国で、1976年に初めて女性側が勝訴して以来の歴史的な流れを垣間見ることができた。
判例の中で、ロマンスとしての関係が、一転してセクシャル・ハラスメントとして告訴される。ロマンスがセクシャル・ハラストメントになる関係、そのプロセスの中にボーダーラインがありそうである。「ロマンスであった」ということで告訴が却下されることも一審の判決に多いとのことである。ひとたび、「セクシャル・ハラスメントである」と判決が下れば、使用者への罰金や補償金は大変な高額となる。
平成10年3月、労働省告示の形で雇用管理上の指針が出された。日本でも、この関係の言動には充分な配意をしなければなるまい。つい最近の出来事、大阪の横山ノック知事のセクシャル・ハラストメント事件が、ついに現職知事の辞任という結末になったことは耳に新しい。
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B 米国の老齢年金 (Social Security Benefit)に進む
2、1 差別についての考え方
| 日 本 (定義の範囲が狭い) | 米 国 | ||
労働基準法 第3条 第4条 機会均等法 第5条 第21条 2.労働大臣は前項の規定に基づき事業主が配慮すべき事項についての指針を定めるものとする。
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カリフォルニア州では次の項目による差別を禁じている。 1.人種/皮膚の色 セクシュアル・ハラスメントは 「One of 差別 」、差別の中の一つに過ぎない
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米国での年金給付月額は、65歳、納税暦35年、年収$70,000の場合、14万円程度であり、日本では同様なケース(65歳、納税暦35年、年収$70,000=7,350千円)の場合、年金給付月額は18万円程度になり、比較すれば米国の方が低い。しかし物価が安い米国の方が実質年金は高いのだろうと思う。
米国でも支給開始年齢の段階的引き上げが実施されており、1960年生まれで支給開始が67歳となるとか、なぜか親近感を覚えてしまう。米国では誕生日の前にSocial Benefit Administrationから送られてくる「年金受給予定額の通知」に「今の制度のままだと、今後30年間はやっていけるがその後はシステム改革が必要である」と訴えているとか。現代日本の少子高齢化による年金制度改革の叫びに似ていて高齢化のグローバル化を痛感するとともに、私自身、年金受給者の一人として、年金証書や毎回の支給通知書の裏に隠れている年金制度の全体の実像に心が痛んだ。
アメリカの年金制度の実態
受給者数
43,737,000人(引退した給与生活者 26,898,000人 内数)
保険収支(老齢と障害年金の合計額)
保険料収入 385,700百万ドル( Social Security Tax )
受取利息 38,700百万ドル
保険支払い 347,100百万ドル
総資産
566,900百万ドル(保険料収入の1、47年分)(60、7兆円 @105円/$)
(参考)日本の被用者年金の積立金は126兆円、4.9年分、(但し平成9年)
平均年金給付月額
引退給与生活者(単身) 745ドル
同上(妻と本人)1,262ドル
障害者(65歳未満)704ドル
死亡した被保険者の子 487ドル
子のある未亡人 515ドル
現在、我が国と同じように支給開始年齢を段階的に引き上げる措置がとられており、毎年2ヶ月ずつ遅らされていき、1960年生まれの人は67歳にならないと全額を受け取ることが出来ない。今後30年間はこのシステムでなんとかやって行けるが、それ以上は何らかの改訂が必要であるということが示唆されている。
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