Liutaio IWAI TAKAO トピックス

2017年4月9日  カンナ掛け

 弦楽器作りの作業工程は初めは大変ですが、数を作っていくうちに作業工程には慣れて板の厚みや膨らみの形状また、ニスの

成分など微妙な変化はありますが、基本的には作業工程は同じようなものが一生続きます。

 その作業工程の中で私が一番大変だと思っていたのがチェロの横板の厚みだしです。この作業工程は機械でやれば簡単です

が、大規模な工場でない限り、手仕事の鉋削りとスクレーパーで厚み出しを行います。3mm厚の板を1.8mmに削るだけのことです

が、カエデの虎杢は針葉樹のスプルースのように簡単に真っ平らな平面に削ることはできません。カエデの虎杢は木の繊維が波打っ

いて、少しでも気を抜くと逆目がでて、その小さなへこみを取るために全面を削りなおさなければなりません。

私が楽器を作っていて、最も不得意で苦手とする作業工程でした。

 ある日、You-Tubeを見ているとギター製作家の田中清人さんがカエデのギターの横板を和ガンナを使って縦方向にいとも簡単に

カンナ掛けをして厚み出しをしていました。(田中清人さんのyou-tube)

この作業は私にとっては考えられないことで、イタリアのクレモナで習った方法は、カンナで横方向から時間をかけて少しずつ削り、

縦方向にスクレーパーをかけるというものです。一度縦に削ったことはありますが、大きなへこみが出て材料をほかすことに

なった嫌な思い出があります。それゆえ最も安全な方法は、荒取りはカンナですが、多くの時間はスクレーパーで削るしか方法が

ありませんでした。1台のチェロには3枚の横板が必要です。2日間スクレーパーを使い続けると指先が腫れてきて大変でした。

 4月3日の関西弦楽器製作者協会の展示会では田中清人さんに来てもらって会場の一角で、チェロ横板のカンナ掛けの実演を

行ってもらいました。そして、カンナの仕立て方の指導も行ってもらいました。

     

  展示会場での田中清人さんの講習風景

来場者の方たちにはあまり意味がわからなかったと思いますが、楽器を作っている職人たちは田中さんの周りを囲み、彼が

ひと削りするたびに、カエデの削りかすがスルスルと出てくるので、職人の間からオーという驚きの声が上がっていました。

展示会終了後、私はすぐに田中さんの使っていた削り台と同じものを作り、彼に仕立ててもらったカンナを使ってチェロ横板を

こわごわ削ってみました。チェロ横板は貴重なものなので一枚たりとも失敗は許されないからです。

すると「なんということでしょう!」まるでTV番組の「和風総本家」のように、あるいはNHK番組(スゴ技)のように、日本古来の

和ガンナ思わぬ力を発信することになりました。

最も苦手な虎杢のカエデが針葉樹のように削れるではありませんか!

日本刃に受け継がれる、合せ刃の鋭い切れ味は和ガンナに受け継がれていました。

西洋の道具では切れ味が悪いので不可能なことですが、和ガンナではいとも簡単にできることが体感できました。

今まで億劫だったチェロ板のカンナ掛けは田中清人さんのおかげでとても楽しい作業と生まれ変わりました。


2017年4月6日 春爛漫の庭の木

 4月3日4日の関西弦楽器製作者協会の展示会は好評のうち行われました。多くの来場者の皆様ありがとうございました。

来年の展示会は2018年4月22日(日)一日のみの開催です。来年は第10回を迎え、大々的に行う予定です。

4月に入り、わが家の庭では色々な庭木が芽吹き始めました。桜より少し早く、モモが満開です。

   

 満開の桃

風が吹くと金魚の池に花びらが舞い落ちます

桃の花は一本の枝に密集した花が付きとても華やかです。狩野派の絵師が屏風に描いたような枝ぶりになっています。

老木になると、なんともいえない風情がでてくるものと思います。

 

 イタヤカエデの花

5年前にホームセンターで購入したイタヤカエデも花を咲かせました。日本のカエデの花はみんな小さく近くに寄らないと見過ごして

しまいそうな米粒のような大きさの花びらです。公園に植えてあるカエデなどは今月多くの花を咲かせています。秋の紅葉も

きれいですが、春の芽吹きを楽しむのもカエデの大きな特徴です。

もう少しすると、イタリアのカエデも芽吹き始めます。私の庭には3種類の楓があるので、新芽が出たら紹介します。

 

 アーチェロアルジェントのつぼみ


2017年3月 関西弦楽器製作者協会第9回 展示会出展楽器

4月3日(月)4日(火)大阪市中央公会堂での展示会出展楽器バイオリン、ビオラ、チェロ完成しました。

今回で9回目となります。私は第1回から参加していて毎年バイロン、ビオラ、チェロを出展しています。

毎年、恒例になっていている出展楽器の私の作業工程は、前年の冬の間に次の年の楽器を作り始め、汗をかく肉体労働の

多い荒取り作業は12月までの寒い間に終えます。1月2月は白木楽器を完成させ、3月に入るとニス塗りを始めます。

今年は例年より早く4月初めが展示会ですが、ようやく昨日(3月14日)出展の楽器3本が完成しました。

   

 出展楽器 表板側

 出展楽器 裏板側

 

上記の楽器を出店します。ぜひ会場に来て試奏してみてください。展示会の詳細はこちら


2017年3月  オイルニス乾燥促進のためのケース

 

 

自作の紫外線ランプケース 

ケース側面 ファンとタイマー 

 25年前イタリアから帰ってきて京都の亀岡で仕事を始めました。仕事を始める前に仕事場の棚や作業台を作るために、マキタの

万能機を購入しました。手鋸とノミを使ってほぞとほぞ穴を作るのは大変ですが万能機があれば大工仕事の時間を短縮できます。

上の写真にある紫外線ランプケースもそのころに作ったものです。大きさはチェロ一台が入る大きさで、バイオリンだけなら6台

入ります。万能機とは丸鋸と手押しガンナとプレーナーが一体となっている木工機械です。この機械を使うとチェロが入る

大きさの箱でも柱組みにして周りに溝を切り込み、はめ込み式で薄いベニヤ板の壁を付けると軽くて丈夫な箱が作れます。

それにコロを付けると移動も大変楽になります。箱の中は一面に20ワットの紫外線ランプが2本、4面なので8本、160ワットが

取り付けてあります。反射をよくするためにアルミ箔を貼ってあります。油ニスを早く乾かすためには、酸素も必要なので

強制的に箱の中へ空気を入れるものとその逆の箱から外へ出すものが付いています。

ファンは全部で4つついていますが、作動するのは吸気と排気の2個だけです。タイマーを使って1時間毎に作動するファンが

交互に動きます。もしファンが壊れた時、箱の中の温度が上がらないように用心のために4個づつ付けてあります。

この記事を書くために25年ぶりにこの箱をよく見ましたが、ほぞとほぞ穴のはめ込み式で作ったので、何回も引っ越しをして

いるにもかかわらず、箱の強度は作った時のままでした。

最近私が塗っているニスは、塗膜の下層部のニスは油ニスを使って着色します。発色の良い赤はやはり顔料を使ったほうが

効果的です。塗膜の上層部はリノキシンニスを塗ります。油とアルコール混合のリノキシンニスの透明感は、100%アルコールニス

や100%オイルニスより優れていると思います。もっともこれは感覚的なものなので個人差はあると思います。

   

2017年2月に仕上がったバイオリンです。


2017年2月  鳥瞰図の庭

 3年前にちっちゃな物置き小屋を作りました。2年前にもう少し増築しました。昨年の暮れ、その上に登れるように頑丈な板を

敷きました。西洋のエッチングを見ていると鳥瞰図と呼ばれる空の上から見たその町の風景を描いたものがあります。

私もここに引っ越ししてきて3年間庭の手入れを続けその仕事も一段落したので今度はそれらをちょっと高い所から、見おろし

たくなりました。2階の窓からは高すぎて庭の細部が良く見えず、地上からだと低すぎると思いました。

高い脚立を使って色々試してみると視線が今より1m〜1.5mの高くなると良いことがわかりました。

     

階段の側面板 

 踏み板を打ち付けているところ

未完成の階段ですが登れます

 将来的には物置の2階に簡素な屋根と囲い壁を作り、その中に椅子を置き、仕事に疲れた時そこでお茶でも飲み、庭を眺めながら

持ちをリフレッシュさせようと思っています。簡素な小屋とはいえ日曜大工なので完成するには1年位かかるだろうと思っています。

たった8段の階段を上がるだけですが、そこから自分の作った庭を見ていると、鳥はいつもこんなふうに庭を見ていたのかと

新たな世界が見えてきます。