<尿の希釈・濃縮の機構>

腎の髄質部は体液よりも高浸透圧となっている唯一の臓器であり、これは主として

NaClと尿素とが蓄積しているためである。腎では、『腎髄質の浸透圧勾配』の図のように

髄質外層→乳頭先端に向かって著しい浸透圧勾配が形成されている。

この浸透圧勾配はHenleのループの<対向流増幅系>によりけいせいされる。

Henleのループは管腔液が反対方向に流れる2つの平行した管からなる。

液は下行脚を髄質に向かって流れ、上行脚を通って髄質から流れ出る。図『Henleのループにおける対向流増幅の機序』(以下、『図』とする)@では、下向脚、上向脚および周囲の間質液は最初血漿と等しい300ミリオスモル/kgH2Oの浸透圧をもっている。上行脚は水を通さず、溶質を管腔液から再吸収するので、上行脚中の液は希釈される(『図』A)。上行脚の管腔液から汲み出された溶質は、周辺の間質液中に貯まり、その浸透圧を増加させる。

下行脚は水に対する透過性は高いが溶質の透過性は低いので、高張性の髄質部間質は下行脚からの水の移動を引き起こす。平衡状態では下行脚内の管腔液浸透圧はその周囲の間質液と等しくなる。その結果、『図』Bに示すように、上行脚と下行脚の管腔液に200ミリオスモル/kg2Oの濃度勾配ができる。

Henleのループは静的システムではなく、近位尿細管より新しい管腔液が下行脚へと流入する。近位尿細管での再吸収は基本的には等張性に起こり、Henleのループに流入する液の浸透圧は血漿のそれに等しい。この新しい液が下行脚に流入すると、高張性になった下行脚の液は上行脚へ押し流される(『図』C)。上行脚では、さらに溶質の水からの分離が起こり、上行脚と下行脚の間に200ミリオスモル/kg2Oの浸透圧勾配ができ(『図』DE)、

十分な時間経過のあとには、『図』Fに示した平衡状態になる。この過程によって、水からの溶質の分離がHenleのループの対向流によって増幅され、その結果皮質と髄質の境界部より髄質内部にかけて浸透圧勾配ができ、ループの屈曲部で最も高浸透圧となる。

このような高張な腎髄質を、集合管が通過する間に水が血管に再吸収され、その吸収の程度により尿の濃縮の程度が決まる。

尿の濃縮の程度は、「腎髄質の浸透圧勾配の大きさ」と「集合管の水透過性の程度」によりきまり、集合管の水透過性はADHにより調節され、ADHにより水透過性が著しく高くなる。