私的ライブレポート


THE HIGH-LOWS
TOUR 2000 「Relaxin'」
2000.10.14 at 長崎市平和会館
↑THE HIGH-LOWS↓



2000年10月14日。

1ヶ月程度の短期間ではあるが、長崎に来ている。
共同研究先の会社に通い、寮を借りて暮らしている。

独特の雰囲気と歴史を持つ街。
造船とキリスト教と原爆。
異国情緒のエキゾチックな空気の中に浮かび上がる戦争の傷。

土曜ではあるが出勤日。定時になると同時に帰途につき、市内へ向かう。
路面電車に乗り込む。すでに開演時間は目前。多分間に合わないだろう。
浜口町電停に着く。開演時間は過ぎている。急ぎ足で坂を上る。
まだ慣れない街。どの道を辿れば会場に着けるのかわからない。
しかも夜である。暗いうえに街灯もそれほど多くない。
少し道に迷う。

駐車場に、ハイロウズのトラックが停まっている。やっと着いた。
会場は平和公園の近く、原爆資料館の隣。
爆心地近くに来襲したミサイルマン達。
入り口で当日券を求め、中へ入る。
建物内部に響いている「青春」。階段を上る足が自然と早まる。

重いドアを開け、ホールの中に入る。
すでに「青春」は終わり、次の曲に入っている。
前の方では大勢のファンが飛び跳ね、歌っている。
しかし、後ろの方はかなりスペースに余裕がある。
皆、思い思いにライブを楽しんでいる。

ステージ上のテンションは高い。
ヒロトとマーシー。日本のパンクバンドのカリスマ。
二人の圧倒的な個性と存在感。
それを支える他のメンバーの確かなテクニックと自信。

ヒロトがハーモニカを吹く。
「もう一人のボーカリスト」、マーシーの紹介。
盛り上がるオーディエンス。

演奏は休むことなく続く。
一向にテンションは下がらない。
ものすごいパワーにただただ圧倒される。
音は限りなくラウドだ。スピーカーの音は完全に潰れてしまっている。
体に響く、凄まじい音圧。

会場の大きさはハイロウズの人気を考えれば小さい。
それでも客席側に余裕があるのは何故だろう。
しかし本人達は観客の数など気にしていないようだ。
盛り上がって熱くなっていれば何人でも関係ない。

新旧取り混ぜながら演奏は続く。
正直言ってハイロウズは知らない曲も多いのだがすんなり入っていける。
キャッチーでストレート、それでいて情緒的なメロディーと詞。
さすが日本のロックバンドの最高峰。

あっという間にライブは終盤。
ヒロトが人差し指を立てる。あと一曲。
熱狂の渦。混乱と混沌と狂熱。
曲が終わり、あっさりとメンバーはステージを去る。

冷めない客席。
沸き上がるコール。「GO!ハイロウズ!GO!」
ハイロウズ流のアンコール。一つになっていくオーディエンス。

ステージでは楽器のチューニングが始まる。
そして再びメンバーが登場。
白いジャケットを着たヒロト。Tシャツを脱いで上半身裸になったマーシー。
しかし歌い始めるとすぐにヒロトはジャケットを脱いでしまう。

テンションは上がりっぱなし。
熱く演奏を続けるステージ上の5人の姿は、本当に楽しそうだ。
自分達が楽しんでやっていて、それが観客にもダイレクトに伝わってくる。
ロックンロール。その魂が、ここにある。

最後の曲は「ミサイルマン」。やはり、この曲。
最高潮の盛り上がりを見せ、一つになっていくオーディエンス。

曲が終わる。
「ありがとう。また来ます」少し照れながらそう言い、ステージを後にするヒロト。
満足げな表情のメンバーとオーディエンス。

文字通り、瞬く間に過ぎ去っていった1時間半。

会場の外へ続く階段は混んでいる。しかも熱気で暑い。
耳がおかしい。かなりの爆音のライブだった。
久しぶりに感じる、この心地よい感覚。
最高のロックバンドの、最高のライブ。

坂が多いのが長崎の特徴だが、すでにこの辺りは坂ではなく階段になっている。
階段を降り、広い通りに出る。クールダウンも兼ねて、しばらく歩く。
家路を急ぐ車の流れ。秋らしくなってきた涼しい空気。

55年前、この地は原爆によって跡形もなく破壊された。
今、我々はそこで音楽を、ライブを楽しむことができる。
ロックは攻撃的であるとか、戦争を好むというイメージを持つ人もいるだろう。
しかし、それも平和な時代であるという前提のもとに成り立っていると思う。
ロックの求める戦いは、決して戦争ではない。
自分自身との闘いであり、不条理な社会システムとの闘いである。
生きていくこともままならない社会においては、ロックは存在しえないであろう。
この平和な日本に生きていられるということを感謝したい。

爆心地公園を横目に見ながら、そう思う。



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