私的ライブレポート


「REDЯUM presents CINEMATIC SOUND FOUNDATION VOL.4
〜このビートで境界線を曖昧にする〜」
2000.12.1 at CLUB QUATTRO
HAL FROM APOLLO'69, honeydip, 坂本美雨, DJ SAK(流) & REDЯUM


注)  面倒なので文中ではHAL FROM APOLLO'69のzoё氏を「zoe」と表記しています。
同様にREDЯUMは「REDRUM」と表記しています。



2000年12月1日。

ここ数日の間に一気に冬らしくなってきた。
今日から師走。クリスマスの飾りが街を彩る。

今回のライブは再びREDRUMのイベント。
他の出演ミュージシャンはhoneydip、DJ TEAM 「流」のSAK、そして坂本美雨。

10月のHALのワンマンライブは都合で見に行くことができなかった。
2ヶ月半ぶりのHAL。
ホームページに載っていた情報では、Rythm BrothersことJah-RahとOKINAWAの2人は、リズムの方向性の相違がもとで今回から離脱したという。
結局、6人編成のHALはわずか3ヶ月程度という短命に終わった。
そして、僕はその6人編成のHALをたった2回、計7曲しか体感できていない。

お馴染みの渋谷。クラブクアトロはパルコクアトロの上にある。
パルコクアトロは何度も来ているがクラブクアトロは初めて。
以前友人とライブを見に来たときは運悪くライブがキャンセルになってしまった。
階段を上っていく。整理番号はちょうど100番。
開場を待つ間のソワソワした落ち着かない感じ。

中に入る。物販ブースのHALコーナーには見慣れた顔が集まっている。
ロッカーに荷物を預け、階段を上った所に会場がある。
板張りのフロア。客席後方は一段高くなっており、数は少ないが椅子もある。
ちょうどリキッドルームを二回りほど小さくした感じ。
ステージ中央と両サイドには白い幕が張られている。PAブースの所にプロジェクターがあり、この3つのスクリーンに映像を映し出すようだ。
ステージ右のスクリーンの所にはDJブース。まだ無人だ。

ステージは暗くてよく見えない。前の方に行って様子を窺う。
HALのセットのようだ。HALマークの入った拡声器も用意されている。
ギターはスピーカーの陰でよく見えないが、どうやらいつものエクスプローラーに加えてストラトタイプが用意されている。
ツインドラムに慣れた目には、一つだけのドラムセットはやや寂しそうに見える。
中央奥にドラム、手前右にギター、左にベース、さらに左にキーボード。
右奥にはDJセットもある。これは後でSAKが使うのだろう。

いつのまにか、ステージ右のDJブースでSAKがレコードを回している。
場内に流れる音楽は彼が司っているようだ。しかし、SAK登場前に流れていた音楽からあまりにも自然に曲が繋がっていたので気が付かなかった。レコードの針が飛んで初めて気が付いたほどだ。
スクラッチ等の派手なことをやっているわけではないが、この待ち時間の主役はSAKなのであろう。
そして、3つのスクリーンにはCGとおぼしき不可思議な映像。VJもいるようで、音楽とシンクロするかのように様々な映像が切り替わっていく。

そんな状態がしばらく続く。
やがて客席の照明が落ち、暗いステージに5人のメンバーの影が浮かぶ。
明るくなるステージ。
zoeはまずストラトタイプを調整。それが済むと今度はいつものエクスプローラーを手に取る。
今日のhalは、(こう言うのは失礼かもしれないが)「かわいい」という印象を受ける。
見慣れない顔のベーシストは、FM等のディスクジョッキーとしてお馴染みのAli Morizumi。

突如始まるシゲソニックのドラムに導かれるオープニングナンバーは、PSYCHO。
一曲目から飛ばしている。押し寄せる音の塊。
今回もHALをあまり知らないオーディエンスが多いようだが、HALはそんな彼らを自分達の世界に容赦なく引きずり込んでいく。
勿論、HALファン達は既にシンクロし始めている。
ドラムは一人になったが、リズムは決して弱くなってはいない。むしろシゲソニックのドラミングは今までよりもパワーアップしている、そんな感じがする。
AliのベースはHALの音楽に溶け込んでいる。かっこいい。かなりの実力の持ち主である。

BOOSTER。ゆったりとした分厚い音。その中に浮かび上がる狂気。
スクリーンに映し出されているのは、HALのロゴマークだろう。
他のバンドを見に来た人達もノって来たようだ。
そしてHAL流のロックンロールナンバー、BACKFIRE SHUFFLE。
冴えわたっていくzoeのカッティングとeoeのサウンドエフェクト。

MC。
客席からの「かわいい〜」の声におどけてみせるhal。
zoeはこの間にギターをストラトタイプに持ち替える。
使い込まれた、Bill Laurence製のサンバーストのストラト。アームは外されている。
zoeといえばエクスプローラーやフライングVといったギブソン製ギターのイメージが非常に強く、ストラトを持っているというのはいささか意外な感じがする。

演奏再開。COSMIC GROOVE。
拡声器を手に、ステージ上を動き回って歌うhal。
今日の選曲はなかなか面白い。両極端とでも言うべきか。
音の厚さや音圧は同じでも、リズム面での緩急が激しい。
続くBLOODBATH。
zoeはかなりノっている。華麗なソロとカッティング。
ストラトタイプを抱えたzoeもかっこいい。

再びMC。次は新曲。
リリースは来年3月という言葉に、客席からは「遅い〜」の声。
「遅いよねぇ。アタシもそう思う」同調するhal。

そして始まる「本邦初公開」の曲、LKM。
Love Kills Me、HALには珍しいラブソング。
ポップで聴きやすい曲。比較的明るい。
もちろんHALらしさは十分感じられるが、最近のHALとは少し趣向が違う。
むしろ初期の頃に近いのかもしれない。
こういう言い方は変かもしれないが、「そこそこ売れそうな曲」である。

DRIVE YR TERRAPLANE。少し落ち着いた場の雰囲気。
静かな爆音による癒し。クールダウンしていく空気。
そして最後の曲。
PIRAMID OF VENUS。
優しく、穏やかなHAL。広がりと浮遊感のあるサウンド。
ステージに跪いて、時に瞳を閉じ、時に虚ろな視線を客席に泳がせるhal。
神々しくも美しいhalの姿が、そこにある。
曲の終盤、狂気に満ちた瞳で虚空を睨むhal。

曲が終わり、メンバーはステージを去っていく。
いつものようにzoeのハウリング音とeoeのSEを残して。
その音が止むまで微動だにできないオーディエンス。

やはり、いつもながらHALには圧倒される。
この爆音に身を沈めている時間がいちばん幸せな瞬間なのかもしれない、そう思った。

会場はほぼ満員だ。いつものように後方へ下がる。
いつものようにジンジャーエールで水分補給。
再後列まで来てしまった。人が多いのでもう前の方には戻れそうもない。
ステージ右のDJブースには再びSAK。スクリーンにはCGの画像。
ステージはhoneydipに向けセッティングが始まっている。

暗くなる客席の照明。登場するhoneydip。
分厚く、静かな轟音。
初めて聴くバンドである。だから少し構えてしまう部分はあるのだが、こちらのそんな態度も解きほぐしてくれるような、そんな優しさと懐の広さも持っているバンド。
口数の少ない、淡々と進んでいくステージ。
重厚な音が会場に充満していく。
静かに始まったライブは静かに終わっていく。
ほとんどMCもないままステージを去る彼ら。

インターバルは再びDJタイムだが、今回は非常に時間が短い。
ステージにはhoneydipのセットがそのまま。
暗くなる客電。もう少し時間がある、そう思っていたオーディエンスは一様に少し驚いた表情。

honeydipをバックに従えて登場、坂本美雨。
名前は知っている。曲もさわりだけなら聴いたことがある。
何よりも、血筋が凄い。坂本龍一を父に、矢野顕子を母に持つのである。
ざわついていた会場が静かになる。ネームバリューもあるのだろうが、オーディエンスをこうして引き付ける力はやはり天性のものなのであろうか。
1曲め、デビュー曲でもあったThe Other Side Of Love。
坂本龍一による、隙のないメロディー。
透明感のある歌声。発声もかなりしっかりしている。
それを支えるhoneydipの分厚い音。
少し線の細さを感じるが、堂々とした歌いっぷりである。
おそらく、彼女を見に来ているオーディエンスが一番多いのであろう。
静かに盛り上がっていく空気。
2曲め、哀しみのアダージョ(彼と彼女のソネット)。CMで耳にしたことがあるメロディー。
それを日本語詞にしたものだろう。澄んだ声が活きてくる。
歌い終わると、そのまま言葉少なにステージを去る。
たった2曲のライブ。肩透かしを食らったようなオーディエンス。

ステージではREDRUMのセッティング。
SAKはステージ奥のDJブースのセッティングをしている。

照明が落ちる。SAKもスタンバイしている。SE。
演奏が始まり。ボーカルのYUMIが現れる。
以前見た時と同じように、重厚で静かな轟音と艶のあるボーカル。
優しく見えて、実は凶暴さを内に秘めているサウンド。
SAKとのコラボレーションによってさらなる広がりが出ている。

2曲ほどを歌い、MC。SAKの出番はここまで。
ゲストとしてステージに出てきたのはギターのミチロウ、そして坂本美雨。
2人の準備が済むと演奏が始まる。ステージを去るYUMI。
REDRUMをバックに、美雨が歌う。REDRUMの曲を。
まるで自分の歌であるかのようによく合っている。
考えてみれば声質も似ていないことはない。
YUMIよりも高音が澄んでいて艶に欠ける分、鋭い声である。
だから、曲のもつ静かな凶暴性が強調される感じがする。
ミチロウはREDRUMとは仲のよいギタリストらしい。そのプレイはクールにして熱い。
2人とも、REDRUMとよく合っている。

2曲を歌い、YUMIが再びステージへ。
今度は2人のボーカルの競演。少しはにかむ美雨。
以前のライブレポで、僕はYUMIを「女神」と表現した。
だとすれば、美雨は天使、いや、女神になりかけの天使。
透き通った声と艶のある声の掛け合い。
癒されているような、切り刻まれているような複雑な気分。

歌い終わり、ゲストが去る。
通常のREDRUM。再びはじまる、静かな爆音の応酬。
凶暴性を増してゆくステージ。隠れていた狂気が噴き出していく。
激しく、重いロックサウンド。オーディエンスを引きずり込む。

MCでは、前回も感じたことだが非常に礼儀正しい。
他のバンドに対する感謝も忘れない。とても好感が持てる。

内に秘めた狂気を表現したステージからYUMIが去る。
演奏を続け、攻撃性を増していくバンドメンバー。
やがて終わる演奏。

明るくなる客席。
REDRUMのステージは随分長かった。
立ちっぱなしで少し疲れはしたが、充足感も感じる。

階段を下り、ロビーへ。人が多い。
ふと見ると、入り口の所に沢山の花が届けられ、飾られている。
どうやら全て坂本美雨宛てのようだ。
流石に送り主には錚々たるメンバーが名を列ねている。
ざっと見ただけでも阿部義晴、スケボーキング、中谷美紀、そして宇多田ヒカル…
やはり彼女が今日の主役か。

スタッフに促され、会場の外へ出る。
階段を下り、パルコの外へ。

寒くなってきた空気。
街の明かりは暖かそうに見えるのだが、空気は冷たい。

今日出演のバンドに共通していたもの。
轟音と爆音のもつ静かさ。重厚な音の持つ浮遊感。
優しさのもつ凶暴性、美しさのもつ狂気。
一見相反することかもしれないが、本質的な部分ではすべて同じなのであろう。

トータルで4時間にもわたるステージ。思ったより長かった。
ただ、非常によくまとまったライブである。
各アーティストの実力がそう感じさせるのであろう。
全く隙のない、いいライブであった。

高密度のライブを体感した身を、街の雑音は日常に引き戻してくれる。
間一髪のところで乗れた電車。充満する暑さと湿気が、異空間の記憶を薄れさせていく。



 もどる