私的ライブレポート


「DOCKS UN LOCKED」
2000.8.23 at LIQUID ROOM
HAL FROM APOLLO'69、MURDER、
人時PIRANHA HEADS & ROBOTS


注)  面倒なので文中ではHAL FROM APOLLO'69のzoё氏を「zoe」と表記しています。



2000年8月23日。

暦の上では処暑。しかし涼しくなる気配はない。
気温はそれほど高いわけではない。湿度が高いのだ。
肌にまとわりつくジトジトした空気。不快だ。

HALに、また変化が起きた。
ベーシスト、アニキの(ライブメンバーからの)離脱。
新ベーシスト、OKINAWAの加入。
そしてキーボード、eoeのライブ復帰。
怒濤の6人体制。楽しみだ。

今回は共演するバンド達も凄い。
古市コータロー率いるMURDER。
元黒夢の人時率いる人時PIRANHA HEADS。
そしてJUDY AND MARYのTAKUYA率いるROBOTS。
真の意味での人気と実力を兼ね備えた面々。

仕掛人、JAH-RAHはHAL、MURDER、ROBOTSでドラムを叩く。
OKINAWAは元々MURDERのベーシストである。
ROBOTSには人時もベースとして参加。
4つのバンド、3人のドラマー、2人のベーシスト。
有機的なつながりを持ったバンド達の競演。

歌舞伎町の雰囲気は、この蒸し暑さをさらに強調する。
リキッドルームはビルの7階。熱気の充満した階段を登っていく。
中へ入ると空調も効いていて快適だ。
この会場は初めて来たのだが、思っていたより広い。

すでに前方は多くのオーディエンスで埋まっている。
やはり人時やTAKUYAのファンが多いのだろう。
いつものHALのライブと比較すると雰囲気が軽い。
彼らの目に、HALはどう映るのだろう。

トップバッターはHAL。できるだけ前方に陣取る。最前列までは行けない。
ステージ上、いつも通り奥にツインドラム。左がJAH-RAH、右はシゲソニック。
左にzoe。ゴシックのエクスプローラーといつものエフェクト。
右にはeoeのキーボード。そして、何よりも目をひくOKINAWAのダブルネックのベース。

照明が落ちる。
流れてくるのはLiquid Sky。いつものSEではない。
メンバーが現れる。JAH-RAHへの声援が多い。
HALのTシャツを着たzoeとOKINAWA。zoeはゴシックのVをアンプにつなぎセッティング。
eoeの紡ぎ出すSEとOKINAWAのベースに導かれてスタート。
666。
zoeのギターの音はいつもより尖っているように聴こえる。
ふと、周りを見る。多くのオーディエンスは無反応に近い。
頭を振っているのは、ところどころに点在するHALファン。
お構いなしに演奏は続く。BOOSTER。
このくらいのリズムはノリやすいのだろう。少しづつ会場全体が揺れ始める。
BLOODBATH。zoeのカッティングが冴える。

MCでは少しおどけた様子も見せるhal。
初めて見る人が多いのは十分意識しているようだ。
いつものように笑いを誘う。
クールなhalが見られるのはいつのことやら。

演奏再開。ROKKET KHAOS、DRAGOONと続く。
いつもとはひと味違う曲順。

HALを知らない多くのオーディエンス達は少し醒めている。
一応リズムはとっているようだが、テンションは上がっていない。
個々に勝手に盛り上がるHALファン達。それに対する多少冷ややかな目。

MC。ライブ告知やメンバー変更の話題など。
eoeの紹介に「おかえりー!」の声が飛ぶ。

そして、早くも最後の曲。
DRIVE YR TERRAPLANE。いつもとは違うアレンジ。
静かな浮遊感。広がりのある音。会場を包み込む。
そして、終了。それでもただ静かに終わらせるのではなく、eoeのSEとzoeのハウリング音を残してステージを後にするあたりが彼ららしい。
ステージの幕は閉じる。

eoe復帰とOKINAWAの複弦ベースで音にさらなる広がりができたように感じた。
モノクロームだった音が極彩色の音の塊になったようなイメージ。
しかし、今回のHALはおとなしい。いつもの狂気が抑え込まれている。
他の出演バンドとそのファンを意識してのことだろう。時間の制約もあった。
eoe復帰とOKINAWA加入によってHALの狂気がどう変わったかを確かめるには至らない。
ほんの顔見せ、6人体制のお披露目といったところか。
客席の後ろの方にはアニキが見に来ていた。

ステージの幕の向こうではセッティングが行われているようだ。
幕がひらく。古市コータローのファンから歓声があがる。
MURDERの登場。
初めて聴くのだが、すんなり入っていける。
どこか懐かしい、それでいて新しいサウンド。古市の弾くES335の音も心地よい。
JAH-RAHもOKINAWAも、HALとは違ったプレイを見せてくれる。
オーソドックスな雰囲気のロック。それにスパイスを加える吉本匡考のギター。
癖のあるバンドだ。それでも違和感がないのは凄い。

一部のファンは盛り上がっている。古市のファンであろう。
それでも、やはり大半のファンは静かだ。HALにくらべれば反応はあるものの今一つ。

時間が短く、口数の少ないショーが終わる。
多くを語らずとも聴き手に伝わる。安心して聴けるバンドだ。
静かに幕が閉じる。

人時の登場を前に、オーディエンスがそわそわしはじめる。
しばらくして幕が開く。大きな歓声。
一人づつ出てくるメンバー達。最後に現れた人時。
赤いプレシジョンベースから叩き出される図太いベースの音。
ボーカルをとりながらでもこれだけベースが弾けるものなのだろうか。
圧倒される。オーディエンスも一気に引き込まれていく。

開始早々、ギターのアンプがおかしくなったようだ。
曲の合間にアンプヘッドの交換作業がはじまる。
その間、人時とドラムのセッション。ジャズっぽいフレーズの応酬。
絶妙の掛け合いに聞き惚れる。凄い。言葉が出ない。
数分続いたセッション。復活したギターが加わり、セッション終了。
オーディエンスも盛り上がっている。

演奏再開。
凶暴なまでに強力な音。スピード感のあるベースライン。
まさに唯一無二のベーシストというべきだろう。
黒夢解散後、清春が結成したSADSのベーシストが固定メンバーでないのも頷ける。
これほどの技量とパワーとセンスを持つ人物はそういないであろう。

客席右側の方が熱いオーディエンスが多いようだ。
時折ダイブする人もいる。フロア全体が興奮の渦に巻き込まれていく。
人時もかなり気合が入っている様子。かっこいい。

十分ヒートアップした観客を残し去っていく人時PIRANHA HEADS。
幕は閉じない。ステージ上ではそのままセッティングがはじまる。
TAKUYAのギターは先週のJ.A.M.ライブでも使っていた2本。
人時はそのまま。

長く感じられる待ち時間。
TAKUYAファンがやはり一番多いようだ。僕もその一人ではあるといえるのだが。
しかし、少し遠巻きにしているファンも少なくない。ライブハウスに慣れていないのか。

照明が落ちる。歓声。
登場、ROBOTS。絶えることのないTAKUYAコールと人時コール。
ストラトタイプを手にするTAKUYA。
少しおとなしめの曲でスタート。会場の一体感が高まる。
主に昨年のアルバムからの曲と新曲を交えた選曲。
TAKUYAのギターはもちろん素晴らしい。こんなに近くで目のあたりにできるのだから幸せだ。
人時はここでは完全にベーシストに徹している。凄みを感じるプレイ。
JAH-RAHのドラムも気合が入っている。
その他のメンバーも息のあったプレイを聴かせてくれる。

オーディエンスの手の振りは先週の武道館と同じような感じ。
やはり個人的にはどうも馴染めない。
それでも観客のノリはいい。

TAKUYAのトークはレコーディングの状況などが中心。
J.A.M.とROBOTSのレコーディングとライブ、さらにはリュシフェルへの曲提供とものすごく忙しいスケジュールのようだ。HPには「殺人的(自殺的?)」とまで書いてあったが。

ライブも中盤から終盤に差し掛かる。
東京ヴァンパイアで一気に観客の振幅が大きくなり、ダイブする連中も出はじめる。
続くJUMPING JACK。気がつくと飛び跳ねている自分。自然に体が動く。
最後はROBOT。リキッドルームが揺れている。
本当に、床が揺れている。全員が歌い、跳ね、拳を突き上げる。
ギターを投げ出し歌いまくるTAKUYA。弾きまくる人時。叩きまくるJAH-RAH。
この日最高の盛り上がりを見せて終了。

沸き起こるアンコール。そういえば、先週TAKUYAは「来週のROBOTSでもキーボード弾く」と言っていた。しかしまだ弾いていない。つまり、アンコールも計算の内ということか。
当たり前のようにステージではキーボードのセッティングがはじまる。
「Roland」のロゴを少し変えて「Robots」にしてあるキーボード。

再登場。
キーボードに向かうTAKUYA。メンバー紹介ではJAH-RAHと人時は省略。
そしてTAKUYA自身「今年はこの曲ができて満足」と語る新曲、ナイフ。
TAKUYAらしいバラード。ところどころに入る不協和音が「らしさ」を強調する。
ゆっくり揺れながら、熱くなった体は落ち着きを取り戻す。いい曲だ。

静かに、なだめるように曲が終わる。
満場の拍手と歓声。
クールなTAKUYAと人時。声がかかっても少し手を振る程度。
満足げなJAH-RAH。客席に投げたスティック。あと少しのところで取れない。ちょっと残念。

客席が明るくなる。帰り支度をはじめるオーディエンス達。
ロッカーに預けておいた荷物を取り出し、外へ。
蒸し暑く、長い階段を降りていく。
時間はすでに10時半をまわっている。そんなに長いライブには感じなかったが。

今日の主役はJAH-RAHだったのであろう。3つのバンド、それぞれ全く異なる音楽性をもつロックバンドを完璧に叩きわけてみせた。さすがである。
ただ観客の立場から見ると、主役はTAKUYAと人時。ずば抜けた実力と人気。
残念ながら、HALもMURDERも脇役になってしまっていた。
だからといって今日の4バンドに優劣はつけられない。
それぞれ全く方向性の違うバンド。共通しているのは「ロックである」ということ。
そして、それぞれが自分達のスタイルを確立し極めているということ。
ロックという音楽は非常に多様な側面をもっている、そのことを改めて認識した。

粘着質の光が充満する歌舞伎町。
この雰囲気に蒸し暑さも加わって息苦しい。
足早に駅へと向かう。

通勤客で混雑する新宿駅。見慣れた、通い慣れた風景。安心する。
疲れた体で雑踏の中にいる時間が、実は最も落ち着く瞬間なのかもしれない。



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