私的ライブレポート


「REDЯUM presents CINEMATIC SOUND FOUNDATION VOL.2」
2000.7.31 at club asia
KULU/KULU, HAL FROM APOLLO'69 & REDЯUM


注)  面倒なので文中ではHAL FROM APOLLO'69のzoё氏を「zoe」と表記しています。
同様にREDЯUMは「REDRUM」と表記しています。



2000年7月31日。

夏本番といったところか。暑い日々が続く。
夕方になっても涼しくなる気配はない。かえって蒸してくる。

渋谷はいつもと変わらない。
ただ、夏休み中であるためか若者が多い感じがする。
雰囲気も普段のようなけだるさではない。

club asiaへ続く道。
EASTでもライブがあるらしく、人は多い。
ここの道は抜け道のようで車がよく通る。その割に道は狭く、歩行者は多い。
雑然とした東京の一種の縮図とでもいうべきか。
センター街あたりとは違い、ここはいつもと同じライブの空気。

中に入る。clubというだけあって普段のライブハウスとは少し趣きが違う。
どことなくオリエンタルな雰囲気。高い天井。
狭いステージ奥の巨大なスクリーンにはBGVとでもいうべき映像。

開演時間をとっくに過ぎた頃、漸く一組めが現れる。
KULU/KULU。
ギターが二人、ベースが一人。サンプリングが一人。
サンプラーから流れる強烈で機械的なリズム。
それに乗った、歪んだベースとギター。時折入るサウンドエフェクト。
延々と、単調に繰り返されるフレーズ。
我々を仮想現実の世界へと誘っているようだ。
音楽的なインスピレーションを極限まで単純化し、エッセンスの部分だけを再構築していくとこうなるのであろう。
スクリーンに映し出されているのはクレイアニメーションの作品。
しかし、ステージの照明が明るいためによく見えない。
途中、ツインドラムが加わる。機械のリズムから人間のリズムへ。
急かすように早くなるリズム。それでも、まだ無機的に演奏は続く。
エンドレスに続くかと思われるフレーズにオーディエンスの時間の観念が麻痺したころ、メンバーがひとりづつステージを後にする。サンプリングがステージを去り、終了。

凄い。何が凄いかはよくわからないが、ただただ凄いと思った。

次がHAL。前方へ行く。見慣れた顔ぶれ。
ステージのセッティングがはじまる。
ドラムの配置はKULU/KULUと同じ、ステージ両端。左にJAH-RAH、右にシゲソニック。
ツインドラムの間にアンプ類。今回もアニキは右、zoeが左。
置かれたギターはゴシックのエクスプローラー。いつものエクスプローラーは調子が悪いようだ。
足下にはいつものようにエフェクト類。
セッティング終了。そういえばギターはなにも調整されていない。置いただけ。

SEが流れ、ツインドラムの登場。叩き出される強烈なリズム。
アニキが出てきてベースラインを刻む。
zoeはゴシックのフライングVを持って登場。ステージ上で簡単な調整。
halが着ているのはHALのキャミソール。
zoeが手に取ったのはロボコップのトーキングフィギュア。ギターのPUにあてる。
PSYCO。
いきなりの激しいリズムにテンションが高まる。
続くBOOSTER、CYCROTRON。最初から濃密だ。

今日のhalはよく喋る。バンド名の由来、それに関連して自分の生い立ち、新しいHALグッズの宣伝など。ひとり漫才状態。会場の笑いを誘う。
「クールなhalは次回から」ということらしい。前回も言っていたようだが。

和んだ空気はHOWLINGで一気に引き締まる。歌うときは別人だ。
スクリーンに映るのは海外の映画のワンシーンだろうか。

怒濤のようなサウンドの塊。
毎回のようにアプローチを変えてくるzoeのギター。
時にステージに倒れ込みながら、生命を振り絞るように歌うhal。
黙々と重低音を響かせるアニキのベース。
JAH-RAHのドラム&パーカッションとシゲソニックのドラミングの融合。
息つく暇もない。

どれくらいたったのだろうか。限りなく永遠に近い数十分。
今までになく濃密なステージは666で幕を下ろす。
次はREDRUM、そう言い残しHALが去っていく。
言葉が出ない。周囲にいるいつものHALファンも同様なようだ。

REDRUMのセッティングが始まる。
初めて見る、初めて聴くバンドなのでいつも通り後方から見ることにする。

club asiaの独特な雰囲気は、明かりが落ちると別世界の様相を呈する。
そこに現れたREDRUM。
同じ女性ボーカルでも、halとは明らかに違う。
性差を越えた絶対神という印象のhalに対し、REDRUMのボーカルは女神。
ミディアムテンポのメロディーに乗った彼女のボーカル。
驚くほど多様なアプローチを聴かせてくれるバンド。ゆったりと聴けるロック。
一見、心地よい。
しかし、透明で艶のある声は、時として聴き手の神経に深く突き刺さる。
そして、微妙に揺れている声がじわじわとその傷を広げていく。
うわべの心地よさに無防備になった心に、容赦なく踏み込んでくる。

HALと同じだ。
サウンド面での方向性は違うかもしれない。でも、同じ方向を見ている。
同じ狂気から出発して、同じ狂気を目指している。そんな印象を受ける。

ゆったりと、時に激しく、オーディエンスを蝕むサウンド。
精神はオブラートに包まれたまま拡散し、昇華していく。
そんな静かな興奮を鎮めるように演奏が終わる。

このバンドは、良い。

今日も終わった。外に出る。
先に外に出ていたHAL中毒患者達(^^;)と、しばらくいろいろ話をする。
昼間にくらべれば涼しくはなっているが、まだ蒸し暑い。

そろそろ人通りも少なくなってきたので一人群れを離れ、帰途につく。

夜の渋谷。現実の世界。
いつものように、無意識に記憶を反芻する。
起承転結。
KULU/KULUのサウンドによって、精神は日常を完全に離れ異次元へと浮遊していった。
これが「起」。
裸にされた自我は、無防備なままでHALの強烈なパフォーマンスと対峙せざるを得ない。
halのMCに一時の休息を見いだせても、すぐにまたその狂気の餌食になる。
これが「承」と「転」。
満身創痍になりつつも昂った心は、REDRUMに身を委ねようとする。
REDRUMは優しさの中に秘めた残酷さでその心を癒しながら現実世界へ連れ戻してくれる。
これが「結」。

この構成であったから、最高のライブを最高の状態で体感できたのであろう。
つまり、出演順も計算ずくのことなのだ。そう思える。
しかも、会場は異空間の雰囲気が漂うclub asiaだ。
まんまと術中にはめられている。悔しいほどだ。

でも、敗北感はない。奇妙な恍惚。興奮とは違う。
むしろ安堵感がある。変な気分だ。

疲れた体、ボロボロの状態で癒された心。
HALを初めて聴いてから約1年。もう、戻れない。



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