私的ライブレポート


「M.T.H.C. Night」2000.7.6 at NEST
DEF MASTER vs. HAL FROM APOLLO'69
2000.7.6


注)  面倒なので文中ではHAL FROM APOLLO'69のzoё氏を「zoe」と表記しています。



2000年7月6日。

まだ梅雨は明けないのだろうか。
このところ激しい夕立が降ることが多いのだが、今日は大丈夫そうだ。
薄曇りの空。湿った、生温い空気。

買ったばかりのTシャツ。それはそれで気持ちいいのだが、まだ生地が慣れていないせいかどことなくぎこちなさを感じる。

NESTは初めてだが、WESTには行ったことがあるので場所はわかる。
入り口はWESTビルの6階。とりあえず早めに行って当日券を買う。まだ時間はあるので一旦外に出る。

今日、WESTではインディーズのバンドのジョイントライブがある。
入り口ではCDやTシャツをメンバー達自ら売っている。
その中に、Full Montyがいる。昨年あるライブで知った久留米のスカコアバンド。
最近イチ押しのバンドである。
メンバーの一人は僕と誕生日が一日違い。最近はメールのやりとりもしており、ちょっとしたメールフレンドのような感覚である。
声をかけてみる。覚えてくれているようで、気さくに話に応じてくれる。
NESTの開場までの間、しばらく話をする。
同い年なのに、一生懸命音楽に打ち込む彼らと安穏と学生をやっている自分。
違う人間であるのはわかっているが、どうしても比較してしまう。
彼らを応援すること、「頑張って下さい」という月並みな言葉をかけること以外には何もできない自分が不甲斐なく思えてきてしまう。
機会があれば彼らのライブにまた行きたいと思う。

そろそろ開場の時間だ。
Full Montyと別れ、NESTへ入る。

入り口の重い扉を開ける。意外に小さいライブハウス。
まだ人は少ない。
先攻はDEF MASTERのようだ。
会場内にはDJ。流れている音楽は彼が司っている。
それにしても音が大きい。
顔見知りの人と話をしようにもお互いの言うことがよく聞こえない。
ただ、テンションを上げておくにはこれぐらいがいいのかもしれない。

開演は19時のはずなのだが、DEF MASTERが現れたのは20分を過ぎた頃。
初めて聞くバンド。スラッシュメタル〜インダストリアルあたりか。
凶暴なまでに大きいドラムとシンセの音、叫びつづけるボーカル。
ギターもベースも物凄いテクニックのようだが、音はかき消されて判別できない。
混沌とした重低音。突き刺さる轟音。

わずか40分ほどのステージ。強烈なインパクトとハウリング音を残し去っていく彼ら。
オーディエンスの、狐につままれたような表情。

ステージのセッティングがはじまる。前の方に移動。
今日はオーディエンスがあまり多くない。最前列まで来てしまった。
ドラムセットが2台。現在のHALはシゲソニックとJAH-RAHのツインドラム体制。東京では初の、僕にとっては初めて見るツインドラム。JAH-RAHの方にはパーカッションもついている。壮観。
今日はいつもと逆でzoeが左、アニキが右のようだ。
zoeのギターは例によってエクスプローラーとフライングVだが、VはいつものではなくゴシックのフライングV。真っ黒なVというのもかっこいい。足下にはお馴染みのエフェクター&ペダル。
アニキは自らチューニングをしている。

SEが流れる。ツインドラム登場。
唐突に始まる、二人の競演。
一糸乱れぬリズムを刻むJAH-RAHとお馴染みシゲソニック。
タイトなリズムに誘われるようにアニキ、zoe、hal登場。
zoeが手に取ったのはゴシックのV。
いつもより分厚い、BACKFIRE SHUFFLEのリズム。
ツインドラムであることを強調するにはうってつけの曲だ。
zoeのギターの刻み方も、アニキのベースラインの音もhalの声も気合十分。
間髪入れずにHOWLING。ツインドラムであることの違和感はない。
高まるテンション。halの視線が突き刺さる。最前列であるからなおさらだ。
MINDGATERZ。会場の空気は完全にHALに支配された。

暫しのMC。zoeは密かにチューニング。
マイクのケーブルがhalの首に巻き付いている。
会場に向かって一言。「楽しい?」

SUPERNEUTYPE。曲中のzoeの音色の切り替えは見事。
続いて流れるシゲソニックのスピード感溢れるドラムとJAH-RAHのパーカッション。
アニキのベースが重なる。hal「踊ろ、踊ろ〜〜!!」PSYCHO。
パーカッションが入ることでひと味違った感じになっている。踊れるサウンド。
聞き慣れたzoeのギターソロ。これがHALだという安心感。それに連なるCONTRACT KILLER。
この曲のギターのアプローチは、聴くたびに進化しているように思える。

暫しブレイク。水分を取るhal。その間zoeは堂々とアンプから音を出しながらチューニング。
それに対しhalからのクレーム。よく見ればアニキもチューニングしている。

zoeがギターの弦を叩く。これが合図なのか、会場の「?」という反応をよそに演奏再開。UP。
高まったテンションが下がらないようにブレイクを短くしているのだろうか。
少し早めなテンポのCYCROTRON。いつも以上に、音に隙間がない。
音の塊が迫ってくる感じ。
LIQUID SKYのリズムとフレーズに乗せてJAH-RAHの紹介。
そして連なるB.T.B.N.、この前と同じ展開。この流れは心地よい。脳髄が刺激される。
会場のテンション、振幅は最高潮となる。

MC。halの前歯がマイクに当たって矯正の金具が壊れてしまったらしい。気遣うzoe。
ライブ告知。「ここにいる人は全員買うように。義務。」
そんなことを言われても、今の僕には金がない。
この間にzoeはエクスプローラーに持ち替える。

SLINKEE。さっきまでのMCとのギャップが凄い。
エクスプローラーらしい太い音。
アニキのベースソロがはじまる。
hal「アニキかっこいい〜〜〜!男はベース!!男は暴力!!」
…この前と同じ。
そしてベースの音に導かれて始まる曲、666。最後の曲。
ツインドラムの強力なリズムはこの曲によく合う。
いつもより派手な終わり方。
オーディエンスからの声に少し応え、HALは去っていく。

明るくなる会場。
メンバーの足下には今日の曲順のメモ。一応曲名を確認しておく。

重い扉を開け、外界へ。バーフロアを通る間に現実に引き戻される。
エレベーターを降り、外へ出る。
さっきの所に、Full Montyがいる。彼らも終わったようだ。
一声かけてから帰路につく。あちらもなかなか良いライブだったとのこと。

渋谷は、まだまだ眠らない。空気はいくぶん涼しくなっている。
途切れない人の波。

ツインドラムの迫力、その余韻はなかなか消えない。
今日はオーディエンスが多くないので見るのに余裕があり、それはそれで快適だったのだが今一つ盛り上がりに欠けるというか、テンションが上がり切らなかったような気がする。
今まで満員のライブハウスが多かったのは対バンのバンドが人気バンドだったからなのだろうか。HALの実力からいくともっとオーディエンスが多くて当然な気がする。たまたま今回だけが少ないのだろうか。
どちらにしろ、DEF MASTERとHALにノックアウトされたことに変わりはない。
zoeの言う通り、物凄い体験となった。

湿った生温い空気の充満した山手線。いつも通りの混雑。
少しづつ、興奮は雑踏にかき消されていく。



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