私的ライブレポート


「SONY MUSIC FES. 2004
EPIC LOVE LIVE

2004.5.8 at SHIBUYA-AX
Crystal Kay、Miss Monday、AMADORI、
サザーランド、サンタラ、YUKI、Puffy、
スネオヘアー、TiA、韻シスト


2004年5月8日。

暖かい一日。
午前中はたっぷりテニスを楽しんだので少し暑く感じる。
クルマを横浜駅近くの駐車場に入れ、東横線で渋谷に向かう。

久しぶりのライブ。
SonyMusicのCDを買うと抽選でチケットの購入権が当たるというイベント。
5月7日〜9日の3日間、渋谷公会堂とAXで行われる計6公演。
たまたま中古で買ったCDに未応募の応募券がついていたのでインターネットで応募し、当選した。
このライブを選んだのは、見たいミュージシャンがいるのと、比較的当選しやすそうという安易な理由からである。

渋谷駅で一緒に見る友人と合流。大学院時代の友人で、現在は大学の助手をしている。
道すがら、交わす話題は職場のこと、仕事のこと、そして熱力学。
傍目に見れば変な人達である。

開場の15分ほど前に渋谷AXに着く。既に多くの人が開場を待っている。
ライブ中は暑くなることが予想されるので、ジャケットとバッグをコインロッカーに預ける。
整理番号は1022番と随分後ろの方だが、それほど待つことなく入場できた。

AXに来るのは初めて。大きさはBlitzやZeppと同じぐらいだろうか。
ライブには丁度良いサイズだと思う。

ステージには白幕が張られ、スクリーン代わりになっている。
このスクリーンの向こうにバンドセットが控えているのだろう。
白幕の前には2人分の椅子と、1本のアコースティックギター。

開演の18時。
まず、スクリーンでEpicのライブの歴史が簡単に紹介される。
70年代から現代までの大規模なライブの断片。
どれも、日本のロック&ポップス史上欠かすことのできないものばかりだ。

そしていよいよ、今日のライブのスタート。
白幕に映し出された名前をみて少し驚いた。
Crystal Kay。いきなり一組目から出てくると は思わなかった。
白幕は閉まったまま、幕の前で歌うようだ。
登場と同時に、会場から「かわいい!」と声がかかる。
褐色の肌、黒人のようなプロポーション、東洋的な風貌。人種などというくだらない概念は無意味に思える。
スツールに座り、アコースティックギターに合わせて歌いはじめたのは、「hard to say」。
原曲とはうってかわってシンプルな構成だが、意外とマッチしている。
途中のラップ部分もきちんと完璧に歌いこなしているのには恐れ入った。
続いての2曲目は「Boyfriend」。深みのあるCrystalの声と、絶妙なギタープレイ。会場にはゆったりとした空気が流れる。
そして早くも最後の曲、新曲「Motherland」。
自身初の完全日本語詞、またシングルでは初のバラードとのこと。
確かな歌唱力と楽曲センスの良さが際立つ。
弱冠18歳ながらデビューからすでに5年。たった3曲のライブだが、存在感は十分。
歌い終わり、歓声の中ステージを去る。
「次はMissMondayでーす!」

白幕が開き、間髪入れずに登場したMiss Monday
Crystal Kayから一転、強烈なビートとマシンガンラップの嵐がAXをダンスフロアに変える。
予想以上にクールでパワフルなステージ。観客も巻き込みながらグイグイ引っ張っていく。
自然と、身体がリズムを刻みはじめる。予想以上にかっこいい。
最後はSpinna B-illを加え、新曲を歌う。レゲエのリズム、グルーヴ感は満点。
あまりのパワーに圧倒されたオーディエンスを背に、ステージを去っていく。

白幕が閉じ、Epicのロゴをあしらった映像、そしてCrystal Kayの新曲のビデオクリップが流れる。
さっき生で聴いたばかりだが、やはり良い曲だ。

NEXT ARTISTとして映し出された名前は、AMADORI
僕も含め、ほとんど全てのオーディエンスの頭の上に「?」マークが浮かんだように見えた。
つまり、誰も知らない。まだメジャーデビュー前ということなので、当然といえば当然か。
閉まったままの白幕の前で、彼女はガットギターを手に取って弾き語りをはじめる。
楽曲は優しくゆったりした感じで、なかなか良い。ギターのテクニックは弾き語りとしてはかなりの腕前。
2曲目はギターに佐橋佳幸、アコーディオンにDr.Kyon、さらにパーカッションを加えて歌う。
腕利きミュージシャンを従え、堂々と歌うその姿は新人とは思えない。今後が期待できる。
彼女のライブは2曲で終了。

白幕が開き、ストレートなロックバンドの音が突き刺さってくる。サザー ランド
2曲目はプロミスのCMソングでよく耳にする曲。
キーボードが上手いという印象を受けたが、サポートメンバーのようだ。
メロディーが良く、バランスが取れたバンドだと思う。若干荒削りだが、迷いがない感じがして好感が持てる。
僕がもう少し若かったらもっと良い印象を持ったのかもしれない。
3曲を歌って、白幕が閉じる。

今度のインターバルはサザーランドのSilent Movie、例のプロミスの曲。

NEXT ARTIST、サンタラ
アコースティックギターによるグルーヴィーなコードカッティングと、妙に説得力のある歌声、少しフックの効いたメロディー。
これも初めて聴くが、なぜか惹きつけられる。
3曲目は佐橋佳幸とDr.Kyonを加え、Buddy HollyのThat'll Be The Dayをカバー。
耳慣れた曲に、会場も盛り上がっていく。
冴え渡るカッティングと、佐橋の的確なソロワークが光る。
最後はメンバー2人だけで歌い、都合4曲のライブ終了。
このユニットは良い。直感的にそう思った。

白幕が開く。佐橋、Kyonを含め、腕利きを揃えたバンドが姿を現す。
流れてきたイントロ、「the end of shite」。
早くも登場、YUKI。重厚なロックサウンドに、会場の ボルテージが一気に上昇する。
圧倒的なまでの存在感。それもJUDY AND MARY時代とはひと味違う。
MCも慣れたもの。あちこちから上がるYUKIコールにも余裕で応える。
2曲目は「Rainbow St.」。バンドの安定感が物凄い。
実力があるからこそできる、テクノ寄りな曲の生演奏+アドリブ。絶妙なグルーヴ感。
YUKI自身も少しアドリブを入れたり、会場にマイクを向けるなどして楽しんでいる。
「今日は2時間もありがとう!」と笑いを取った後、早くも最後の曲との声に会場から軽いブーイング。
最後は名曲「プリズム」。美しいメロディー、突き抜けるYUKIの歌声、優しい空気が会場を包む。至福の瞬間。
全て、1stアルバムからの選曲。
まだ聴きたいというオーディエンスの想いを残し、意外にもあっさりとYUKIはステージの袖に消えていった。

数秒後、YUKIが消えていったのと反対側から現れたPuffy。 バンドはそのまま。
会場の歓声をするりと躱しながら、いきなりロックな新曲「SUNRISE」で幕を開ける。
再び客席のテンションは急上昇。一見自然体なPuffyも、実はロックンローラーなのだと思う。
すでにデビュー8年とのことだが、本人達に実感はないようだ。
で、2曲目は「5月13日に発売されたデビュー曲です。間違ってないよね?」
そう、「アジアの純真」。アレンジはそのままだがロック寄りな演奏になっている。
ステージを縦横無尽に動き回るPuffy。まさかここで聴けるとは思わなかった曲だけに、会場も盛り上がっていく。
そして最後の曲は、これまた少し懐かしい「渚にまつわるエトセトラ」。
振り付けがわかりやすいせいか、一緒に踊っている人も少なくない。
疾走感のあるステージは、下手なロックバンドなど足元にも及ばない。
そして、やはりバックバンドの安定感は圧倒的。
興奮さめやらぬまま、Puffyの短いステージが終わり、白幕が閉じる。

白幕に映し出されたビデオクリップは、今回のライブには参加していないバンドのもの。
勝手にしやがれの「ロミオ」。

白幕の前には3人分の椅子、2本のギターとキーボード。
そして現れたのがスネオヘアー
会場の歓声とスポットライトにおどけてみせ、爆笑を誘う。
変化球だが優れたメロディーラインはやはり秀逸。
2曲目はYUKIの作詞で、YUKIのアルバムにも収録されている「コミュニケーション」。
長い、少し滑り気味のMC。観客や周囲を挑発しつつも恐縮してみたり、親しみやすい人柄が感じられる。
最後の曲では白幕が開き、先ほどのバックバンドを従えて歌う。
たった3曲のライブだが、喋っている時間の方が長かった感じもする。
それでも、良いソングライターであることは十分伝わってきた。

さて、白幕に映されているのは、次のアーティストの紹介。
6月デビューの新人ということだが、かなり力を入れている様子が伺える。
白幕が開き、ステージ中央に小柄な女性のシルエットが見える。
バンドを従え、歌いはじめたTiA。大御所達をバックに 堂々とした歌いっぷりを見せる。
聴きやすい、明るいメロディー。
特筆すべきは、驚くほどの声量と声の伸び。しかも、その声は柔らかく、レンジが広い。
MCでは新人らしい初々しさが伝わってくる。
「デビュー曲は2年前、14歳のときに初めて作詞作曲した曲です」との発言に会場がどよめく。
つまり、まだ16歳なのである。しかも、曲自体も悪くない。末恐ろしい。
2曲を歌い、ステージを去る。
また一人、今後が楽しみなシンガーが出てきたという感じがした。
単なる「歌の上手いシンガー」で終わってしまわないことを祈るばかり。

白幕ではTiAのビデオクリップが流れる。

そして、本日最後のアーティストの登場。
大阪のローカルバンド、韻シスト
既に大阪で1ステージ終えてきているとのこと。
3人のMCによるラップを中心にした7人組のヒップホップグループなのだが、編成が面白い。
MC以外の4人はドラム、ベース、ギター、サックス。つまり、DJがいない。
考えてみれば、ヒップホップはソウルやR&Bの楽曲をサンプリングして再構成しているわけだから、それらの曲を演奏できればDJは不必要なのかも しれない。そして、このバンドはそれだけのテクニックとセンスを兼ね備えている。
生バンドでは出せないスクラッチ音やパーカッション等は、MCの一人がボイスパーカッションのような形で出している。
途中、そのボイスパーカッションを披露。多彩な表現力に、客席からどよめきが起こる。
グルーヴ感も抜群。このバンドは面白い。ラップもスタイリッシュで悪くない。
疲れが見え始めたフロアが活気を取り戻したところで、ライブは終了。

あっという間の3時間半が終わる。
BGMでCrystal Kayの歌うOver The Rainbowが流れる中、会場を後にする。

会場を出る際、全てのオーディエンスに大きなビニールバッグが手渡される。
中にはSony Music Fes.のチラシと、オリジナルのサクマドロップス、そしてイベントのオリジナルTシャツ。
豪華なお土産である。
ロッカーの荷物を取り出し、帰途につく。

街の明かりとライブの興奮が混じり、少し暑く感じる。
かなり遅い夕食を取った後、友人とは渋谷駅で別れ、電車に乗る。

全10組。一組あたり約3曲の短いステージ。
デビュー前の2人は2曲、多かったサンタラでも4曲。
スネオヘアーも3曲だが、喋っていた時間も含めると持ち時間が飛び抜けて長いかもしれない。
今回の目玉はYUKI、Puffy、Crystal Kay辺りだと思うが、それでも3曲。
また、最も盛り上がるこの3組を終盤でなく中盤にもってきていた。

今回はセールスや人気に関係なく、アーティストを平等に扱うという姿勢が感じられるライブだった。
正直、個々のアーティストについては聴き足りないという感もあるのだが、今まで知らなかった良いアーティストを知ることができたという点では十分満足のい くライブだ。コンピレーションライブとでも言おうか。
だから、途中で飽きることはなかったし、疲れもあまり感じない。

16歳の新人、TiA。18歳にして既に実力派のCrystal Kay。
それに対し、スネオヘアーは33歳の若手。YUKIとPuffyの亜美は1児の母である。
音楽に年齢やキャリアは関係ないというのを改めて感じた。
ただ、やはりYUKI、Puffy、Crystal Kayはステージ上で大きく見えた。
それは持って生まれた才能かもしれないし、ミュージシャンとしての経験の差かもしれない。
他のアーティストも、同じように大きく見える時が来るのだろう。

横浜で降り、クルマに戻ってエンジンをかける。
カーオーディオから流れるのはYUKIの2ndアルバム。
久しぶりのライブ。その余韻に、自然とアクセルを踏む右足に力が入る。



このライブのオフィシャルレポートは下記サイトに掲載されています。
http://www.sonymusicfes.com/



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