橋本行政書士事務所
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マンショントラブルを考える



質問1  天井からの水漏れ事故
質問2  外壁落下事故
質問3  ペットの飼育(規約・細則の規定の仕方)
質問4  ペットの飼育(禁止する場合と容認する場合のそれぞれの問題点)
質問5  専有部分のリフォーム
質問6  マンション建物に欠陥がある場合
質問7  管理費等の滞納対策
質問8  放置自転車対策
質問9  暴力団対策 
質問10 ペット飼育についての分譲業者の説明
質問11 管理費等の支払義務者は誰か
質問12 マンションでの火災
質問13 管理費等滞納者への延滞金や弁護士費用等の請求
質問14 エレベーター使用と管理費
質問15 内容証明の活用
質問16 正式な管理組合名による掲示物を勝手に剥がした行為はどのような問題を生ずるか。
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はじめに

 平成15年度のマンション基本調査(国土交通省)によれば、管理組合がかかえるトラブルの第1位は「居住者間のマナーをめぐる問題」(8割超)です。具体的には「違法駐車・駐輪」、フローリングやピアノなどの「生活騒音」、「ペット問題」などです。マンショントラブルの第2位は「建物の不具合」、3位は「費用負担に関する問題」です。また、最近特に問題となっている「防犯問題」も約3割のマンションでトラブルをかかえているという状況です。みなさんのマンションではどのようなトラブルをかかえていますか。そこで、このコーナーでは、マンションで生じるさまざまなトラブルについて考えてみたいと思います。
【質問 1】 天井からの水漏れ事故の場合

 天井から水漏れがあり、階下住戸の壁や家具が汚損してしまった場合、被害にあった者は誰に対してどのような責任を問えますか。

【回 答】
 
1 まず、天井からの水漏れがどこから生じたのかが重要です。

(1) 水漏れが上階住戸の専有部分、たとえば床下の給水管や居室内の水道パッキンの不具合などに原 因がある場合は、原則としてその上階所有者が責任を負うことになります。

(2) これに対して、水漏れの原因が共用部分にある場合や調査しても原因箇所が不明な場合は、区分所有者全員が賠償責任を負うことになります(区分所有法9条、民法717条参照)。このような場合に備えて管理組合は、管理組合名義で賠償保険を付保しておいた方がよいでしょう。

(3) 次に、水漏れが、分譲業者や請負工事をした業者の過失によるものであれば、被害者は直接これらの者に対しても損害賠償を請求することができます(民法709条)。
 水漏れ原因が共用部分等にあり、区分所有者全員が賠償した場合は、これらの業者に対して賠償額を求償することができます(民法717条3項)。

2 さらに、管理会社の責任も問題となりますので、その点を検討します。
  この場合も、水漏れ原因が共用部分から生じたものか専有部分から生じたものかにより取扱いが違ってきます。

(1) 原因が共用部分にある場合
  まず、前提として管理組合には、原則としてマンション共用部分の管理について業務を行う義務がありますので、水漏れが共用部分から生じた場合には、点検・修理を行うべきは管理組合となります。そして、 管理組合と管理会社との管理委託契約の中で、上記の点検・修理等まで委託していた場合には、管理会社には管理組合に対して契約に従った義務の履行責任が生じますし、さらに、適切な措置を怠ったことにより損害が拡大すれば、不法行為も成立する可能性もあります。したがって、管理委託契約の内容をチェックする必要があります。

(2) 原因が専有部分にある場合
  以上に対し、水漏れの原因が専有部分にある場合には、原則として管理会社の契約上の責任は生じません。ですから、管理組合としては、できるだけ早く専有部分の所有者に原因箇所の修復をしてもらわなければなりません。
  このように、原因が専有部分にある場合には、管理会社の責任を追及するのは難しくなります。ただし、被害者や管理組合が直ちに管理会社の管理人に連絡をして、水漏れ箇所を特定できたような場合には、管理会社には事務管理(民法697条)に基づき漏水防止の措置を取る義務が生じることがありますので、そのような場合には管理会社に責任を問える可能性があります。
  要は、水漏れなど何らかのトラブルが生じた場合、管理組合としては、直ちに管理会社に連絡をするなど早めに手を打つということが必要だということです。
                                                                          以 上
【質問 2】  外壁落下の場合

 マンションの外壁が崩れ、歩道を歩いていた人に当たり死亡させてしまいました。誰が責任を負うことになるのでしょうか。

【回 答】

1 民法717条「土地工作物責任」
  建物の老朽化に伴い、マンションの外壁もはがれ易くなり、時には事例のように外壁の落下により他人に損害を与えるようなこともあります。さて、この場合の責任ですが、民法717条に工作物責任という不法行為の特別規定があり、事例の場合にはこの工作物責任が適用されることになります。
 
2 土地工作物責任で責任を負担する者
  民法717条によれば、「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。」とされています。
 つまり、土地の工作物(建物の外壁はこれにあたります)の設置または保存が原因で他人に損害を与えたときは、まず建物の占有者が責任を負い、占有者が無過失(落ち度・不注意がないこと)を証明したときは、建物の所有者が責任を負うということです。この場合、所有者は無過失を証明しても責任を免れることはできません(これを無過失責任といいます)。では、ここにいう「占有者」「所有者」とは誰をいうのでしょうか。通常、マンションでは特定の人が外壁を占有あるいは所有することはありえませんから、マンションに居住する区分所有者全員または管理組合が「占有者」「所有者」ということになります。
 ところで、区分所有者と管理組合の双方の関係については争いがあり、両者が連帯して責任を負うという考えと、まず管理組合が責任を負い、負担できない範囲を区分所有者が占有面積に比例する持分に応じて第2次的に責任を負うという考えがあります。
 もっとも、ある区分所有者の積極的な行為により外壁が落下したり、建設業者などの工事の瑕疵が原因となっている場合は、これらの者に求償できることになります(民法717条3項)。

3 保険内容のチェックを
  以上が民法上の解決方法ですが、現実的にはこのような事故に備えて、マンションで保険に加入しておくことが必要でしょう。すでに保険に入っているマンションでは、保険契約内容を一度チェックしてみてください。 
                                                                        以 上

【質問3】 ペットの飼育(規約・細則の規定の仕方)

 ペットの飼育を禁止をする場合には、管理規約の定めをどのようにしたらよいですか。また、ペットの飼育を容認する場合の規定の仕方も教えてください。

【回 答】

1 はじめに
 かつて多くのマンションでは、ペットの飼育は禁止するという扱いが普通でしたが、最近はペット飼育を容認するというものが増えてきました。とはいえ、ペットの飼育については、動物そのものの好き嫌いがあること、動物の鳴き声や臭い、排泄の問題、さらには動物による危害の危険があることなどから飼育禁止の必要性も否定できません。
 ペットの飼育に関しては規約で定めることができるというのが区分所有法の立場であり(同法30条1項)、標準管理規約では、「対象物件の使用に関しては、別に使用細則を定める」としています(18条)。そして、この規定のコメントでは、「犬、猫等のペットの飼育に関しては、それを認める、認めない等の規定は規約で定めるべき事項である。基本的な事項を規約で定め、手続き等の細部の規定を使用細則等に委ねることは可能である。」としています。
 ペットに関しては居住者の考えにさまざまなものがあるため、禁止する場合であれ容認する場合であれ、各マンションの実状に応じ、管理組合で十分な話し合いをもつことが必要です。そして、管理規約で基本的事項を定め、使用細則もできるだけ持つようにしましょう。
 参考のため、標準管理規約のコメントにある、ペット飼育を容認する場合と禁止する場合のそれぞれの規定例を以下紹介しておきます。

2  ペットの飼育を禁止する場合 
「(ペット飼育の禁止)
 第○条 区分所有者及び占有者は、専有部分、共用部分の如何を問わず、犬・猫等の動物を飼育してはならない。ただし、専ら専有部分内で、かつ、かご・水槽等内のみで飼育する小鳥・観賞用魚類(金魚・熱帯魚等)を、使用細則に定める飼育方法により飼育する場合、及び身体障害者補助犬法に規定する身体障害者補助犬(盲導犬、介助犬及び聴導犬)を使用する場合は、この限りでない。」

3 ペットの飼育を容認する場合
「(ペットの飼育)
 第○条 ペット飼育を希望する区分所有者及び専有者は、使用細則及びペット飼育に関する使用細則を遵守しなければならない。ただし、他の区分所有者又は占有者からの苦情の申し出があり、改善勧告に従わない場合には、理事会は、飼育禁止を含む措置をとることができる。」
                                                                         以 上

【質問4】 ペットの飼育(禁止する場合と容認する場合のそれぞれの問題点)

 ペットの飼育を禁止する規定を設ける場合に注意すべき点は何ですか。また、ペットの飼育を認める場合の注意点も教えてください。

【回 答】

1 はじめに
 質問3では、管理組合でペットの飼育を禁止する場合と容認する場合のそれぞれの規定の仕方についてお話しをしました。今回は、ペット飼育を禁止する規定を設ける場合と飼育を容認する規定を設ける場合に生ずるであろういくつかの問題について考えてみましょう。

2 ペット飼育を禁止する規定を新たに設けた場合
 管理組合で、いままでペットの飼育に関する規定を持たないためにすでにペットを飼育している住人がいる場合において、新たにペット飼育を禁止する規定を設けた場合に、その飼育を禁止する規定は現在ペットを飼育している人たちにも効力が及ぶのでしょうか。
 この点、裁判所の判断によれば、「マンションにおける動物の飼育は、一般に他の区分所有者に有形無形の影響を及ぼすおそれのある行為であり、一律に共同の利益に反する行為として管理規約で禁止することは区分所有法の許容するところである」として、「一律に飼育の禁止をして、総会の決議で個別的に飼育を許容することによって対応することも合理的である」としました(東京高判平成6年8月4日)。さらに、同判決は、区分所有法第31条にいう規約の設定・変更により影響を受ける者の承諾の要否につき、同条の「特別の影響を及ぼすとき」とは、「盲導犬のように動物の存在が飼い主の日常生活・生存に不可欠な意味を有する特段の事情がある場合」であるとして、通常のペットとして飼育している区分所有者の承諾は不要であるとしました。
 以上から、結局、規約を改正してペットの飼育を禁止することは有効であり、その際に飼育者の同意は不要だということになります。
 ただし、このような規約改正を行おうとすると、すでにペットを飼育している区分所有者からの猛烈な反対が予想され、区分所有者間で激しい対立が生じてしまいかねません。したがって、実際には、一律に禁止することはせずに、飼育のルールや飼育可能な動物の種類などを明確化するなどの工夫が必要でしょう。また、一律禁止規定を設ける場合でも、経過措置をとり、例えばすでに飼育している区分所有者については一代限りの飼育は認めるなどの緩和措置を設けることも検討すべきでしょう。

3 ペット飼育を容認する規定を設けた場合

(1) 必ず、飼育のルールや飼育が認められる動物の種類などを定める
 ペット飼育を容認する規定を新たに設ける場合にまず注意することは、飼育のルールや飼育が認められる動物の種類などを管理規約あるいは細則で定めるということです。
 標準管理規約第18条のコメントによれば、ペットの飼育を認めるか認めないかなどの基本事項は管理規約で定め、手続き等の細目を使用規則等に委ねることは可能とされています。これに従い、「ペット飼育規程」を設けるようにし、動物の種類及び頭数の制限、管理組合への届出制・登録制の導入、専有部分内での飼育方法と共用部分での利用とりわけ糞尿の処理等飼育者が守るべき事項、ペットによる被害に対する責任、違反者への措置等をしっかり規定することが必要です。これらの参考になるのが、東京都衛生局が作成した「集合住宅における動物飼養モデル規程」と財団法人マンション管理センター作成の「ペット飼育細則例」です。是非ご覧いただくようお勧めします。また、居住者特に飼育者で構成する「ペットの会」などを結成し、定例的に討論をしながら、日々ルールが守られるよう自主的な監視体制を整えることも必要です。

(2) ペット飼育規程に違反した場合
 ペットの飼育者が管理規約や使用細則に違反した場合、管理組合はそれらの規程に定められた方法によりペット飼育者に対して是正措置をとることができます。また、飼育の方法がマンションの正常な管理にとって障害となり、他の区分所有者の共同の利益に反すると認められる程度に至っている場合には、飼育禁止等の措置をとることができます(区分所有法第57条〜第60条)。 

4 ペットによる危害が生じた場合の責任
 ペット飼育を禁止あるいは容認する規定に関わらず、ペットが他人に危害を加えた場合、飼育者には不法行為が成立します。この点、民法718条によれば、動物占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負うとされています(占有者に代わって動物を管理する者も同様です)。したがって、ペットが他人に危害を加えた場合、その飼育者は、過失がなかったことを証明しないかぎり損害賠償の責任を負うことになります。この無過失の証明はかなり困難なので、ペット飼育者は日ごろから十分な注意をしておかなければなりません。
                                                                             以上
【質問5】 専有部分のリフォーム

 ある区分所有者から専有部分をリフォームしたいとの申し出を受けました。申し出の内容は、「壁の張替えをしたい。そして、襖と梁を取り払って和室をフローリングにし、リビングを広くしたい」というものです。このようなリフォームは認められますか。また、その場合、管理組合としてはどのような点に注意したらよいですか。

【回 答】

T 共用部分と専有部分の区別
 (1) マンションの権利関係の基本 
    「区分所有」という考え方
 (2) 共用部分と専有部分との区分を明確に
  @ 専有部分でない建物及び附属物 = 共用部分
      法定共用部分 = 性質上当然に共用部分とされるもの
      規約共用部分 = 本来は専有部分だが、規約により共用部分とされるもの
  A 専有部分 = 区分所有権の対象となる部分
             構造上の独立性+利用上の独立性(区分所有法第1条)
  B 共用部分と専有部分との区分けの基準
     a)内壁説 → 壁紙の張替えなども自由にできない。
     b)壁芯説 → 壁紙の張替えなどはもちろんボルトの打ち込みなども可能。
     c)上塗り説(有力) → 壁紙の張替えなどはできるが、ボルトの打ち込みなどはできない。
  C 共用部分の専用使用権
     = 全員の共有(共用部分)でありながら、特定の区分所有者のみの使用が認められるもの(バルコニー、専用庭など)。

 (3) 管理規約であらかじめ明確に分けておくことが重要
   □標準管理規約第7条(専有部分の範囲)
   □標準管理規約第8条(共用部分の範囲)、別表第2
   □標準管理規約第21条第2項(敷地及び共用部分等の管理)

U 共用部分のリフォーム → 修繕
  □区分所有法第17条(共用部分の変更)、18条(共用部分の管理)
  
  □修繕内容と総会決議
    @建物の現状を維持するもの(保存行為)
       → 決議不要。
          管理者(理事長)あるいは規約で別段の定めなければ各区分所有者が単独で行える。
    A建物の変更行為や保存行為以外の建物の利用・改良に関する行為(管理行為)
       → 普通決議(区分所有者及び議決権の各過半数)
    B建物の形状や効用を変えるが、その程度が著しいとはいえないもの(軽微な変更行為)
       →  普通決議(区分所有者及び議決権の各過半数)
    C建物の形状や効用を著しく変えるもの(重大な変更行為)※
       → 特別決議(区分所有者及び議決権の4分の3以上)
          ※平成14年12月改正区分所有法で、費用がが多額でも形状・効用の著しい変更を伴わな ければ、普通決議でよいとされた。

V 専有部分のリフォーム
 1 リフォームの可否
   専有部分は各区分所有者の所有する財産なので、区分所有がその専有部分のリフォームを行うことは原則として自由です。
   ただし、リフォーム工事の種類・内容によっては、騒音・粉塵などにより他の区分所有者に影響を与えることがある他、工事関係者や材料の搬出入のためにエレベーター・廊下・階段などの共用部分が使用がされ、不適切な使用により共用部分が傷付けられることもあります。
   このようなことから、リフォームに伴いトラブルが発生し、居住者間の感情的対立が起こり、場合によっては裁判にも発展し、その場合に管理組合の責任が問われることもありますので、管理組合としても軽視してはいけません。

 2 リフォームできる範囲
  (1) 上塗り説によると、
      天井、床、壁の躯体部分  ×
      これに接して設備されている諸施設(電灯線、石膏ボード、
      クロス張り、合板張り、ペイント、畳、床板、設備配管など) ○
  (2) 事例の場合
      壁の張替え    ○
      襖、畳の取り払い ○
      梁の取り払い   ×

 3 管理組合としての留意点
  (1)  事前の届出をしてもらう 
     まずは、区分所有者がリフォーム工事を始める前に、管理組合は当該区分所有者から工事計画書などの提出をしてもらい、工事内容をあらかじめチェックするようにしましょう。
     → リフォーム届(標準管理規約17条1項・2項) 「専有部分修繕等工事申請書」
     → 理事会での承認(標準管理規約17条3項)
              「専有部分修繕等工事承認決定通知書」

  (2)  工事内容の周知をする 
     工事については、工事期間・工事内容などの掲示をするなどして、他の区分所有者に知するようにしましょう。
     → 「専有部分の修繕等にかかわる工事計画のお知らせ」

  (3) 違反者に対する措置
   ア)理事の立入り権(標準管理規約17条5項、20条、22条、23条)
   イ)工事中止などの措置(区分所有法6条1項、57条〜60条)
     たとえば、フローリング床への変更の場合は、構造によっては下の階に騒音被害を与えることがありますので、そのようなおそれがある場合には工事内容の変更を求めます。
    もちろん、工事中も管理組合からの要請に違反していないか注意し、違反があれば直ちに区分所有者と工事関係者に是正を求めます。
   ウ)損害賠償請求(民法709条)
     ※ ただし、リフォームした区分所有者の責任に基づくものかどうか判断困難な場合があり、専門家の調査を依頼するなど、客観的な証拠を収集し、慎重に対応する必要がある。

  (4) リフォームに関する規約や細則の定めを整えておく
    リフォームがなされた後にその是正や撤去を求めることはかなり困難です。また、損害賠償も受忍限度内と判断され易く、これも難しいでしょう。そのため、もっとも有効な方法は、あらかじめリフォームに関する規約や細則の規定を設けておくことです。
    この場合の基準として、日本建築学会の「建築物の遮音性能基準と設計指針」というものがありますので、これを参考にするとよいでしょう(基準としては、L40〜L45程度)。

   □「建築物の遮音性能基準と設計指針」(日本建築学会)
   □「専有部分の修繕等に関する細則(例)」
                                               
                                                                         以 上

【資 料】

□標準管理規約第7条
(専有部分の範囲)
第7条 対象物件のうち区分所有権の対象となる専有部分は、住戸番号を付 した住戸とする。 
2 前項の専有部分を他から区分する構造物の帰属については、次のとおりとする。
一 天井、床及び壁は、躯体部分を除く部分を専有部分とする。
二 玄関扉は、錠及び内部塗装部分を専有部分とする。
三 窓枠及び窓ガラスは、専有部分に含まれないものとする。 
3 第1項又は前項の専有部分の専用に供される設備のうち共用部分内にある部分以外のものは、専有部分とする。

□標準管理規約第8条、別表第2
(共用部分の範囲)
第8条 対象物件のうち共用部分の範囲は、別表第2に掲げるとおりとする。

別表第2 共用部分の範囲
1 玄関ホール、廊下、階段、エレベーターホール、エレベーター室、電気室、 機械室、パイプスペース、メーターボックス(給湯器ボイラー等の設備を除く。)、内外壁、界壁、床スラブ、基礎部分、バルコニー、ベランダ、屋上テラス、車庫 等専有部分に属さない「建物の部分」
2 エレベーター設備、電気設備、給排水衛生設備、ガス配管設備、火災警報設 備、インターネット通信設備、ケーブルテレビ設備、オートロック設備、宅配 ボックス、避雷設備、塔屋、集合郵便受箱、配線配管(給水管については、本 管から各住戸メーターを含む部分、雑排水管及び汚水管については、配管継手 及び立て管)等専有部分に属さない「建物の附属物」
3 管理事務室、管理用倉庫、集会室及びそれらの附属物

□標準管理規約第21条第2項
(敷地及び共用部分等の管理)
第21条 敷地及び共用部分等の管理については、管理組合がその責任と負担においてこれを行うものとする。ただし、バルコニー等の管理のうち、通常の使用に伴 うものについては、専用使用権を有する者がその責任と負担においてこれを行わなければならない。 
2 専有部分である設備のうち共用部分と構造上一体となった部分の管理を共用部分の管理と一体として行う必要があるときは、管理組合がこれを行うことができる。

□区分所有法第17条・18条
(共用部分の変更)
第17条 共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する。ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。
2 前項の場合において、共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすときは、その専有部分の所有者の承諾を得なければならない。

(共用部分の管理)
第18条 共用部分の管理に関する事項は、前項の場合を除いて、集会の決議で決 する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。 
2 前項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。 
3 前条第2項の規定は、第1項本文の場合に準用する。

□標準管理規約17条
(専有部分の修繕等)
第17条 区分所有者は、その専有部分について、修繕、模様替え又は建物に定着する物件の取付け若しくは取替え(以下「修繕等」という。)を行おうとすると きは、あらかじめ、理事長(第35条に定める理事長をいう。以下同じ。)にその旨を申請し、書面による承認を受けなければならない。
2 前項の場合において、区分所有者は、設計図、仕様書及び工程表を添付した申 請書を理事長に提出しなければならない。
3 理事長は、第1項の規定による申請について、承認しようとするとき、又は不 承認としようとするときは、理事会(第51条に定める理事会をいう。以下同 じ。)の決議を経なければならない。
4 第1項の承認があったときは、区分所有者は、承認の範囲内において、専有部分の修繕等に係る共用部分の工事を行うことができる。
5 理事長又はその指定を受けた者は、本条の施行に必要な範囲内において、修繕等の箇所に立ち入り、必要な調査を行うことができる。この場合において、区分所有者は、正当な理由がなければこれを拒否してはならない。

□標準管理規約コメント(第17条関係)
@ 区分所有者は、区分所有法第6条第1項の規定により、専有部分の増築又は建物の主要構造部に影響を及ぼす行為を実施することはできない。
A 「専有部分の修繕、模様替え又は建物に定着する物件の取付け若しくは取替え」の工事の具体例としては、床のフローリング、ユニットバスの設置、主要構造部に直接取り付けるエアコンの設置、配管(配線)の枝管(枝線)の取付け・取替え、間取りの変更等がある。
B 本条は、配管(配線)の枝管(枝線)の取付け、取替え工事に当たって、共用部分内に係る工事についても、理事長の承認を得れば、区分所有者が行うことができることも想定している。
C 専有部分の修繕等の実施は、共用部分に関係してくる場合もあることから、ここでは、そのような場合も想定し、区分所有法第18条の共用部分の管理に関する事項として、同条第2項の規定により、規約で別の方法を定めたものである。
  なお、区分所有法第17条の共用部分の変更に該当し、集会の決議を経ることが必要となる場合もあることに留意する必要がある。
D 承認を行うに当たっては、専門的な判断が必要となる場合も考えられることから、専門的知識を有する者(建築士、建築設備の専門家等)の意見を聴く等により専門家の協力を得ることを考慮する。特に、フローリング工事の場合には、構造、工事の仕様、材料等により影響が異なるので、専門家への確認が必要である。
E 承認の判断に際して、調査等により特別な費用がかかる場合には、申請者に負担させることが適当である。
F 工事の躯体に与える影響、防火、防音等の影響、耐力計算上の問題、他の住戸への影響等を考慮して、承認するかどうか判断する。
G 専有部分に関する工事であっても、他の居住者等に影響を与えることが考えられるため、工事内容等を掲示する等の方法により、他の区分所有者等へ周知を図ることが適当である。
H 本条の承認を受けないで、専有部分の修繕等の工事を行った場合には、第67条の規定により、理事長は、その是正等のため必要な勧告又は指示若しくは警告を行うか、その差止め、排除又は原状回復のための必要な措置等をとることができる。
I 本条の規定のほか、具体的な手続き、区分所有者の遵守すべき事項等詳細については、使用細則に別途定めるものとする。
J 申請書及び承認書の様式は、次のとおりとする。

□専有部分修繕等工事申請書
         専有部分修繕等工事申請書
平成 年 月 日
○○マンション管理組合
理事長○○○○ 殿
                    氏 名  ○○○○  印
                    連絡先
下記により、専有部分の修繕等の工事を実施することとしたいので、
○○マンション管理規約第17条の規定に基づき申請します。

1 対象住戸○○号室
2 工事内容
3 工事期間 
  平成年月日から平成年月日まで
4 施工業者
5 フローリング工事の場合の特記事項
   性能評価指数  LL
   使用材料
   製造業者名 
6 添付書類    設計図、仕様書及び工程表

□専有部分の修繕等工事計画の通知書
              書面掲示日 平成 年 月 日
        専有部分の修繕等にかかわる工事計画のお知らせ

対象住戸        号室
工事内容
工事場所
工事期間      平成 年 月 日から平成 年 月 日
施行業者  商 号
      連絡先
      担当者名
※この書面は、専有部分の修繕等に関する細則第○条の規定により掲示したものです。
      氏 名                   印
      連絡先
      電 話

□専有部分修繕等工事決定通知書
          専有部分修繕等工事 承認・不承認 決定通知書
                                  平成 年 月 日
○○○○ 殿

 平成年月日に申請のありました○○号室における専有部分の修繕等の工事につきましては、以下のとおり決定したことを通知します。
 なお、承認の場合の工事につきましては、専有部分の修繕等に関する細則を遵守するとともに、施行業者に対しても遵守されるようにお願いいたします。

決定内容  承認・不承認 
決定年月日 平成 年 月 日 理事会決議
承認の条件


不承認の理由

               ○○マンション管理組合
                 理事長   ○○○○   印


□関連条文等
   区分所有法  1条、2条3項、6条2項、9条、12条、17条、18条、30条、
          57条〜60条
   標準管理規約 7条、8条、17条、20条、21条2項、23条、67条、別表第2
   使用細則類
                                                                          以上
【質問6】 マンション建物に欠陥がある場合

 分譲されたマンション建物に欠陥があった場合、誰が誰に対してどのような責任を追及できますか。

【回 答】

1 はじめに
  平成17年末に発覚した構造計算書等の偽造問題は、わが国の建物建築に対する信頼を根底から揺るがすものでした。そこで、建築物とりわけマンション建物に欠陥があった場合に、どこにどのような責任を問うことができるのかを考えてみたいと思います。ただ、ここでは基本的な問題の検討に止め、先の大規模な偽造・違法建築という特殊な問題の検討は別の機会に譲ることとします。

2 瑕疵担保責任の発生
  まず、瑕疵(「かし」と読みます)という言葉を押さえましょう。瑕疵とは、物が通常備えておくべき性能・品質を欠くこと(平たく言えば「物の傷」のこと)を言います。法律上では、売買の目的物に瑕疵がある場合、その瑕疵について売主が法的な責任を負います。これを「瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)」と言います(民法570条)。これにより、買主は売主に対し、損害賠償の請求あるいは契約の解除ができることになります。ただし、この民法上の瑕疵担保責任では瑕疵の修補請求は認められませんので注意が必要です。もちろん売買の当事者間で保証契約などの合意をしていれば瑕疵修補も可能となります。通常は、マンション売買契約に際し、売主が個別に定めたアフターサービス基準に従って特約を結んでいるでしょうから、買主はその基準に基づき欠陥部分の修繕などの請求をすることになります。したがって、契約内容がどうなっているのか、必ず一度は契約書等をチェックしておきましょう。さらに、新築住宅(マンションも含みます)の売買であれば、「住宅品質確保促進法」(略称「品確法」)という特別な法律により、建物の構造耐力上主要な部分(柱や梁などのこと)または雨水の侵入を防止する部分について、引渡した時から10年間は買主の売主に対する瑕疵修補請求が認められます(95条)。ここに「新築住宅」とは、新しく建設された住宅で、かつまだ人が住んでおらず、さらに工事完了の日から1年を経過していないものを言います(2条2項)。この点について、たとえ契約で買主に不利となる特約をしても無効とされます(95条2項)。

3 建物に欠陥があった場合、売主に責任を追及できるのは誰か。
  この点は、瑕疵が専有部分にあるか共用部分にあるかにより売主に責任を追及できるのは誰かが変わってきます。

(1) 瑕疵が専有部分にある場合
  この場合、基本的には、当該専有部分の区分所有者が販売会社に責任を追及することになり
ます。修繕が可能であれば修繕を、修繕が困難であれば損害賠償を請求します。さらに、その瑕疵のために契約の目的が達成できない場合には契約の解除が可能です。

(2) 瑕疵が共用部分にある場合
  この場合は、管理組合が責任を追及することになります。内容は、前述2(1)と同様に、
修繕請求、損害賠償請求、契約解除です。この点、実際には、専有部分の瑕疵ではあるが、多くの専有部分に共通する場合や共用部分と関連する場合には、各区分所有者任せにせず、管理組合として対応した方がよいでしょう。

4 管理組合としての対応
  建物の瑕疵が当初の工事によるものであることが明白であれば、販売会社に責任追及することができますが、時間が経つにつれ、瑕疵が当初からのものなのか、それともその後の使用あるいは劣化によるものかが不明となる場合も出てきます。その時は専門家に原因を調査してもらう必要があります。
 交渉を行う場合は、後日の証拠を残すため内容証明郵便などを利用し、交渉の結果は必ず書面化します。相手方が誠実に交渉に応じなかったり、交渉が成立しなかったような場合には、調停・あっせん・仲裁などの手続きを利用します。それでも解決しなければ訴訟を提起することになるでしょう。訴訟は費用もかかるので、管理組合側でよく検討する必要があります。

5 責任追及期間とその相手方
(1) 責任追及期間
   民法上の瑕疵担保責任は、瑕疵の存在を知ってから1年以内に請求しなければなりません。
   他方、新築マンションで「品確法」の適用を受ける場合は、引き渡された時から10年の期間制限があります(特約で20年まで伸張可)。このように期間制限がありますので注意が必要です。
 
(2) 請求の相手方
   請求の相手方は、基本的には販売会社ですが、販売会社に資力がなくかつ販売会社が建築会社に責任追及を怠っているような場合には、建築業者に対して有する販売会社の請求権を代位して行使することも可能です(これを「債権者代位権」といいます。民法423条)。
                                                                         以 上
【質 問7】 マンションの管理費等滞納対策  

 マンションの区分所有者の一部が管理費等を長期に滞納しています。管理組合としてはどのような方法が取れますか?

【回 答】

1 マンションにおける管理費等の滞納状況
   国土交通省調査(H15年度)
    管理費等滞納問題が発生していないマンション H11年50.01% → H15年67.9%
    滞納戸数がマンションの総戸数の10%を超えるマンション 0.7% → 1.1%

2 管理費等の消滅時効期間
  管理費等の定期に徴収する債権は、一般の債権ではないため、時効消滅期間は10年ではなく、定期金債権として5年とす る最高裁の判決が出ている。
 ◆ 最高裁平成16年4月23日判決
   「本件の管理費等の債権は、管理規約の規定に基づいて、区分所有者に対して発生するものであり、その具体的な額は  総会の決議によって確定し、月ごとに所定の方法で支払われるものである。このような本件の管理費等の債権は、基本権たる定期金債権から派生する支分権として、民法169条所定の債権にあたる…その具体的な額が共用部分等の管理に要する費用の増減に伴い、総会の決議により増減することがあるとしても、そのことは、上記の結論を左右するものではない。」
  <参照条文> 
    民法167条
     債権は、10年間行使しないときは、消滅する。
    民法169条
     年又はこれより短い時期によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権は、5年間行使しないときは、消滅する。

3 時効中断の方法
 (1) 請 求
  @ 裁判上の請求(民法149条)
  A 支払督促(民法150条、民訴法392条)
  B 和解及び調停の申立て(民法151条)
  C 破産手続参加等(民法152条)
 (2) 差押え・仮差押え・仮処分(民法154条)
 (3) 債務者の承認(民法156条)
   ・たとえば、支払猶予の申込みも承認となる。
   ・ 管理組合で、「債務承認書」などの書式を整えておき、滞納者に署名押印してもらうなどの工夫が必要。
 (4) 催告(裁判外の請求)(民法153条)
   <催告の注意点> 
   @ 時効期間の完成を催告後6ヶ月間延長するもの。その6ヶ月内に他の時効中断事由を採らないと時効は中断しない。
   A 催告した事実の証拠とするためには、電話や一般の手紙・通知ではなく、配達証明付の内容証明郵便で催告すること。

4 時効期間経過後の問題
  滞納者が時効の利益を受けるためには、時効の援用が必要(民法145条)。
  したがって、消滅時効期間経過後であっても、請求をしてみることが必要。
  → 滞納者が時効の完成を知って承諾をすれば、時効利益の放棄となり、援用権は喪失する。
     滞納者が時効の完成を知らずに承諾をした場合は時効利益の放棄ではないが、援用権は喪失するとするのが判例である(最判昭41.4.20)。

5 管理費等滞納者への措置
 (1) 催告書の送付、電話による請求、訪問(必ず複数で)
     管理会社に委託している場合は、管理会社がどこまでするのか明確にしておく。
 (2) 内容証明郵便の送付
  @ メリット
     請求したことの証拠となる。
     滞納者への心理的効果(ただし、法的強制力はない)
  A 書式・送付方法に決まりがある
     横書きの場合1枚20文字×26行で作成
     同様の書面を3部作成。各書面に記名押印、割印。封筒宛名及び送り主と書面宛名及び送り主は同一であること
  B 費用
     配達証明付内容証明で書面1枚の場合、1,220円。1枚増すことにプラス250円。
  C 留意点
     必ず配達証明付で送付する。
     法律専門家(弁護士、行政書士など)に依頼する方が心理的効果が大となる。
 (3) 支払督促の申立(民訴訟第382条以下)
  @ 申立人の申立だけに基づいて簡易裁判所の書記官が行う略式手続き
  A 訴訟の半額の手数料と、郵便切手だけで申立可能
  B 書類審査のみ。裁判所に出頭する必要がない。
  C 仮執行の宣言を得れば強制執行が可能。
  D 相手方の異議申立があると通常の訴訟に移行する。
 (4) 少額訴訟の提起(民訴訟第368条以下)
  @ 60万円以下の金銭の支払に関する手続き
  A 審理は原則1回で、直ちに判決が言い渡される。
  B 相手方の異議申立があると通常の訴訟に移行する。
 (5) 通常訴訟の提起(民訴訟第133条以下など)
  @ 規約で定めることにより、理事会の承認で可能(区分所有法第26条4項、標準管理規約第67条第3項)。
  A 申立先裁判所は、相手方の住所地の管轄裁判所
    請求額が140万円以下の場合は簡易裁判所、これを超える場合は地方裁判所。
 (6) 先取特権(区分所有法第7条)の実行
  @ 管理組合は、滞納管理費等について、区分所有権と区分所有者が備え付けた動産類に対し先取特権を持つので(区    分所有法第7条)、これらの売却代金から優先して弁済を受けることができる。
  A ただし、この先取特権は、登記した抵当権、質権、その他の担保権、公租公課より劣るので(民法336条但書)、余剰が   ないと配当は受けられない。
  B 配当の見込みがない場合は、あえて配当の要求をする必要はなく、特定承継人としての競売人からの回収を検討する   。この際、裁判所に滞納管理費等があることの上申書を提出しておくとよい。
 (7) 区分所有者関係からの排除(区分所有法59条による競売請求)
   後記8の東京高等裁判所平成16年5月20日決定参照
 (8) 滞納管理費等の放棄・免除
    区分所有者全員の利害に関係する事項なので、理事会決議では行えない。
    管理組合が法人の場合は総会の普通決議で足りるが(区分所有法第52条)、法人でない場合は全員の同意が必要となる(民法251条)。

6 滞納管理費等の回収の相手方
 (1) 譲渡人・売主(管理費等滞納者)からの回収
    売買・譲渡のような特定承継がされても、なお譲渡人(管理費等滞納者)に請求できる。
 (2) 譲受人・買主(新区分所有者)からの回収
  @ 管理費等滞納者から区分所有権を譲り受けた者に対しても、請求できるとするのが区分所有法の立場である(第8条)。
  A 譲渡人との関係は、「不真正連帯債務」として、債権者に対してそれぞれ連帯して全額の支払をなす義務を負うので、    管理組合は、それぞれに対して全額の請求ができる。
  B 管理費等滞納者が破産した場合や滞納がある区分所有建物の競売申立てがされた場合にも、譲受人(競落人)から回収することになろう。
  ※ 区分所有法第8条
      前条第1項に規定する債権は、債務者たる区分所有者の特定承継人に対しても行うことができる。
 (3) 重要事項説明書に基づく説明義務
    宅建業者の義務(宅建業法第35条、マンション標準管理委託契約書第14条第1項第1号)
    
7 留意点
 (1) 日頃から滞納に備えておく
  @ 滞納者名簿の整備
  A 登記簿謄本によるチェック(抵当権などの担保権設定の有無など)
     登記簿謄本は、登記所(法務局)で、誰でも手数料さえ払えば交付してもらえる。
     手数料は、閲覧(登記事項要約書)は500円、交付(登記事項証明書)は1,000円。登記印紙で納める。
 (2) 管理規約を整備しておく
    平成16年改正の標準管理規約では、滞納者への法的措置について理事会の決議で行うことができるようになった(第60条3項、区分所有法第18条第2項)。
    このような規約の定めがないと、訴訟等の法的措置をとることは共用部分の管理に関する事項として、総会の普通決議が必要となる(区分所有法第18条第1項)。したがって、規約の見直しを行うことも必要。

8 区分所有法第59条に基づく競売請求と無剰余取消(民事執行法第63条)との関係
◆ 東京高等裁判所平成16年5月20日決定
   区分所有法第59条の競売の場合には、抵当権は競売によって消滅するが、不動産の最低売却価格が抵当権者の被担保債権額に満たない場合であっても競売手続費用を満たす場合には競売を実施できる、すなわち、抵当権等の優先債権との関係では、民事執行法第63条の「無剰余取消」の適用がないこと、を明らかにした。
   ※ 区分所有法第59条第1項
      第57条第1項に規定する場合において、第6条第1項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によってはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもって、当該行為に係る区分所有者の区分所有権及び敷地利用権の競売を請求することができる。

9 管理費等滞納者への措置〜水道・電気の供給停止や氏名の公表の可否
 @ 水道・電気などのいわゆるライフラインの供給停止は避けるべき
    管理費等滞納者の悪質性が極めて高く、他に管理費等の回収をとる有効な手段がないというような特殊例外的な場合でないかぎり、逆に管理組合側が不法行為の損害賠償の責任を問われかねない(東京地判平2年1月30日参照)。
 A 氏名公表は、滞納管理者のプライヴァシー権や名誉権の侵害となりうるので、避けるべき。東京地判平11年12月24日は、立看板による氏名公表の事案で、この場合には不法行為を構成しないとする判断を示したが、結局、公表の経緯や態様により、不法行為を構成したりしなかったりケースバイケースであることを示している。

                                                                        以 上
【質問8】 放置自転車対策

 マンション内に放置された自転車を管理組合は自由に処分できますか?

【回 答】

1 放置自転車問題は放置してはならない
 マンションの敷地内に持ち主の知れない自転車が放置されていた場合、マンションの管理組合はいかなる措置がとれるのでしょうか。勝手に処分してしまってよいものでしょうか。この放置自転車問題は、特に駅や繁華街近郊のマンションに多く発生しやすく、管理組合としても常に頭を悩ませる問題となっています。この問題は、単にマンション敷地が一部占有されるという場所的な問題だけでなく、転倒等による事故のおそれ、さらには治安の乱れなど防犯上の問題にもつながりますので、できるだけ早期に手を打つことが必要です。

2 放置自転車を生じさせない手立て(予防的方法)
 まず、しなければならないのは、そもそも放置自転車を生じ難くする手立てです。そのためには、@駐輪場を作り、駐輪できる場所を特定する。A自転車使用あるいは駐輪場使用の細則を作成する。B居住者用の自転車のため駐輪許可シールを作成し、居住者所有の自転車はこれを貼付する。このシールには、住戸番号、氏名、自転車管理番号等を記載し、管理組合側は登録自転車一覧表などの管理名簿を完備する。これらの方法により、居住者所有自転車とそうでない外部の者の自転車を区別することができます。

3 放置自転車が生じた場合の手立て(事後的方法)
 それでも放置自転車が生じた場合はどうしたらよいでしょうか。以下、順を追ってその手立てを考えてみましょう。注意して欲しいのは、放置自転車だからといって、管理組合側が勝手に処分することはできないということです。所有者がいる以上、勝手に処分すると刑法上は器物損壊罪(刑法261条)、民事上は不法行為による損害賠償(民法709条)の対象となりかねません。

(1) 放置者への警告
 定期的に巡回し、放置自転車を見つけたら、不法駐輪であること、直ちに撤去すること、所定の日時までに撤去しない場合は管理組合が適宜処理する等の旨を記載した荷札を自転車のハンドル部分に取り付けましょう。これで、放置者に自発的な撤去を促すのです。この際、管理組合は、放置自転車の管理名簿を作成し、荷札を取り付けた日時、対象自転車を記録しておきます。デジカメなどで写真を残しておくのもよい方法です。

(2) 集中管理
 上記警告をなしてから一定期間を経過してもなお放置が続いている場合は、放置自転車を一箇所に保管し、鎖やロープなどで繋いておきます。その際、放置者に対し、「自転車を返還してほしければ、管理組合に連絡をとること」と告知文を目立つところに掲示しておきます。もし、放置者が返還を求めてきたら、住所と氏名を把握し、以後自転車を放置しないよう告知しましょう。この場合、誓約書などの文書を書いてもらうこともよい方法です。
保管中の自転車については、他方で所管の警察と連絡をとり、所有者の確認と、盗難車でないかどうかの確認をとります。所有者が判明した場合は、管理組合で所有者に連絡をとり引取りを催促します。

(3) 遺失物届出と所有権取得時期
 上記連絡をしても引き取りにこないもの及び所有者が判明しないものについては、「遺失物」として警察へ届出をします。民法240条により、遺失物法による公告後6ヶ月経っても所有者が現れない場合は、管理組合が所有権を取得しますので、このときはじめて管理組合で売却・廃棄などの処分ができるようになります。
 もし、期間内に所有者が現れた場合は、遺失物法によれば、5%〜20%の報償金を請求できることになっていますので、自転車の保管費用として、所有者に請求します。

4 留意点
 以上、放置自転車の取扱いについて検討してきました。放置自転車の問題を抱えるマンションは、「放置自転車対策マニュアル」などを作成し、手順に沿った措置をとるようにしてください。注意点は、遺失物届出一定期間経過後でなければ、放置自転車であっても管理組合の所有物ではないので、勝手に処分・廃棄することはもとより損傷することもできないということです。

以上

【質問9】 暴力団対策
 
 最近、マンションの一室に暴力団らしき人が入居してきました。管理組合として何か対策をとることはできないでしょうか。

【回 答】

1 生活の場であるマンションにおいて、暴力団員が居住することは、他の区分所有者にとってたいへんな不安を招くことです。ただし、単に「暴力団員らしい」というだけでマンションから追い出すということもできません。しかしながら、マンション内で著しく粗暴な振舞いや他の区分所有者に対する脅迫的な言動を繰り返す、あるいは生活ルールを無視するなどの具体的な行為が認められれば、「共同利益に反する行為」として、区分所有法第57条〜60条の対抗手段をとることが可能となります。以下、その方法と留意点を述べてゆきます。

2 区分所有法上の対抗手段
(1) 行為の停止等の請求(区分所有法第57条)
 区分所有者が建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をした場合(その行為をするおそれがある場合も含む)には、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、区分所有者の共同の利益のため、その行為を停止し、その行為の結果を除去し、又はその行為を予防するため必要な措置を執ることを請求することができます(第1項)。この請求は、裁判によらないで行うことができますが、集会での普通決議(区分所有者及び議決権の各過半数の賛成)が得られれば、裁判によることもできます(第2項)。

(2) 専有部分の使用禁止の請求(区分所有法第58条)
 区分所有法第57条 の行為の停止等の請求では障害の除去が困難であるときは、他の区分所有者又は管理
組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもって、相当の期間の当該行為に係る区分所有者による専有部分の使用の禁止を請求することができます(第1項)。この請求はア)と異なり、集会の決議に基づき必ず裁判によらなければならず、しかもこの決議は特別多数(区分所有者及び議決権の各4分の3以上)を必要とします(第2項)。また、当該行為者にあらかじめ弁明の機会を与えなければなりません(第3項)。   

(3) 区分所有権の競売請求(区分所有法第59条)
 3つ目の措置として、区分所有者の共同の利益に反する行為による共同生活上の障害が著しく、他の方法によってはその障害を除去して共用部分の利用の確保、その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが難しいときは、他の区分所有者の全員または管理組合法人は、集会の決議に基づいて、その有害行為をする区分所有者の区分所有権および敷地利用権を競売するよう請求することができます(第1項)。この請求もイ)と同じく、集会の決議に基づき必ず裁判によらなければならず、また特別多数による決議を必要とし(第2項)、当該行為者にあらかじめ弁明の機会を与えなければなりません(第3項)。 

(4) 占有者に対する引渡し請求(区分所有法第60条)
 区分所有建物を区分所有者から賃借等を原因として専有している占有者についても、その者の行為が区分所有者の共同生活に著しい障害を与え、他の方法によってはその障害を除去して共用部分の利用の確保、その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが難しいときは、他の区分所有者の全員または管理組合法人は、集会の決議に基づいて、その有害行為にかかる占有者が占有する専有部分の引き渡しを請求することができます(第1項)。集会の決議に基づき必ず裁判によらなければならず、また特別多数による決議を必要とし(第2項)、当該行為者にあらかじめ弁明の機会を与えなければならない(第3項)という点は、イ)・ウ)と同じです。

3 管理規約、誓約書の整備
 実際、暴力団構成員が入居した後で以上のような対抗措置をとることはかなりの困難を伴います。そこで、予防策として「このマンションは予め暴力団対策ができており、入居し難い」と印象付けることが効果的です。そのためには、管理規約を整備し、区分所有者からの暴力団構成員等への譲渡・賃貸を禁止する旨の規定を設けることが必要です。また、個々の区分所有者および区分所有者からの譲受人・賃借人から「暴力団員であることが判明した場合には、立ち退き等に応じる」旨の誓約書を提出してもらうことも必要です。

4 警察との連携、弁護士への相談、各種相談機関の活用
 一般市民であるマンション居住者にとって暴力団対策をとることは大変な労力を要し、精神的苦痛も大きく、さらには場合によって生命・身体の危険も生じる問題です。そこで、管理組合として重要なことは、関係諸機関に相談し、連携して対処するということです。その関係諸機関として、警察と弁護士(会)は必須です。相談先として、各都道府県に暴力追放運動推進センターがあり、また各弁護士会には民事介入暴力被害者救済センターなどがありますので、利用してください。
 そして、何よりも重要なことは、区分所有者の強い意志と結束です。管理組合としても、区分所有者への説得に努め、協力を得ること、区分所有者とのコミュニケーション・情報提供が重要となります。
                                                                              以上
【質問10】 ペット飼育についての分譲業者の説明

1 質 問
 分譲業者からマンションでのペット飼育は可能と説明されたが、マンションの管理規約ではペットの飼育は禁止されていた場合、ペットを飼育することはできるか?

2 回 答
(1) 分譲業者には説明義務がある
 分譲業者とは、マンションを販売することを業とする者であり、通常宅地建物取引業を行う者として、宅建業の免許を受けて業務を行う宅建業者です。宅建業者である以上、宅地建物取引業法(以下「宅建業法」という)の適用を受けます。宅建業法によれば、宅建業者が自ら宅地建物の売買・交換・貸借を行う場合やそれらの代理あるいは媒介を行う場合には、取得者・借主になろうとする者に対して、契約前に宅地建物取引主任者をして一定の重要な事項について書面を交付して説明しなければならないとされています(35条)。これに違反すると、業務停止処分や一定の刑罰に該当します(65条、79条の2)。

(2) ペット飼育に関する事項は説明義務の内容である
 宅建業者に課せられる重要事項の説明義務の内容は多義にわたりますが、区分所有建物(マンション)販売の場合、宅建業法36条1項6号で特有の説明事項が規定されています。このうち、ペット飼育に関する問題は、宅建業施行規則16条の2の第3項の「区分所有法第2条第3項に規定する専有部分の用途その他の利用の制限に関する規約の定めがあるときは、その内容」にあたります。なぜなら、ペットの飼育の可否の問題は、「専有部分の用途その他の利用の制限に関する」問題だといえるからです(平成8年建設省経動発第23号参照)。したがって、販売の対象となっているマンションの管理規約でペット飼育を禁止している場合は、販売業者はマンションを購入しようとする人に対して禁止規約がある旨及びその内容を説明しなければなりません。
 重要事項の内容であるにもかかわらず、故意に事実を告げなかったり、又は不実のことを告げた場合は、宅建業法違反となり、2年以下の懲役もしくは300万円(法人の場合は1億円)以下の罰金又はこれらの併科にあたります(宅建業法79条の2)。

(3) 購入者はペットを飼育できるか
 以上のように、分譲業者に責任が生じたとしても、購入者がペットを飼育できるかはまったくの別問題です。マンションの管理規約に飼育を容認する規定がない場合には、購入者はペットを飼育することはできません。マンションにおいては、管理規約が最高の規範であり、区分所有者はそれを遵守すべき義務を負うからです。

(4) 購入者のとるべき対応
 購入者としては、分譲業者に損害賠償などの責任を追及することは可能ですが、そもそもマンションを購入しようとする方は、希望するマンションの管理規約に事前に目を通してペットの飼育が可能かどうかを予めチェックしておくべきでしょう。

3 まとめ
@ 分譲業者からペット飼育は可能だと言われても、マンションの管理規約で飼育禁止となっていれば、ペットを飼育することはできない。
A 購入者は、事前にマンションの管理規約等をチェックしておくべき。
B 別途分譲業者の責任を追及することは可能である。
                                    以上
【質問11】 管理費等の支払義務者は誰か

1 質 問
管理組合の理事をしています。うちのマンションでは、管理費について次のような問題が生じています。法的にはどのように考えたらよいのでしょうか。

(1) 数年前から管理費の滞納をしているAさんに滞納分全額(40万円)を請求したところ、「この部屋は私とBさんとが共有しているので、半額しか払わない」と言って、20万円しか払いませんでした。Bさんとは現在連絡がとれない状況です。Aさんから全額回収することはできませんか。

(2) Cさんは最近Dさんに専有部分を賃貸しました。Cさんに管理費を請求したところ、「管理費は現在部屋を借りているDさんが払うことになっている。私はマンションに住んでいないので、請求ならDさんにしてくれ」と言って払ってくれません。Cさんに払ってもらうことはできないのでしょうか。

2 回 答
(1) について(共有の場合)
 民法によれば、債務者が複数いる場合は、各債務者は平等の割合で義務を負うとされています(民法427条)。これを「分割債務」といいます。これによれば、共有者の支払義務は平等の割合での負担となり、管理組合は共有者の一方に全額を請求することはできなくなります。しかし、他方、民法は、「不可分債務」というものを定め、債務の内容が特約によりあるいは権利の性質上不可分(分割できないもの)である場合は、各債務者は債務の全部の支払義務を負うとされています(民法430条)。
 では、マンションではどちらと考えるべきでしょうか。この点については、管理規約等に別段の規定がない限りは、管理費等については不可分債務と考えるのが妥当です。なぜなら、管理費等は、共用部分・敷地等の管理行為、また管理組合の運営費等の経費に当てられ、専有部分の共有者はこのような管理行為による利益の全部を不可分的に受けていると考えられ、利益を不可分的に受けるのであれば、それに対する対価の支払いについても全部の義務を負うと考えられるからです。
 したがって、管理組合は、Aさんに対して管理費滞納分の全額の支払いを請求することができます。Aさんが全額支払った場合、持分を超える額についてBさんに請求することになりますが、それはあくまでAさんとBさんの間の問題にすぎません。
 なお、数年前からの滞納とありますが、管理費等の支払請求権は、判例によれば定期給付金として5年の消滅時効にかかるとされているので、早めに対策を講じる必要があります。

(2) について(賃借人がいる場合)
 管理費等については、区分所有者がその持分に応じて負担するものであり(区分所有法19
条・21条)、区分所有者からの賃借人が負担するものではありません。たとえ賃貸人である区分所有者がマンションに居住していなくてもその義務を免れることはできません。したがって、管理組合はあくまで区分所有者に管理費等の支払いを請求することになりますので、管理組合は、Cさんに支払いいを請求できます。
 なお、C・D間で管理費等の支払いはDさんが行うとの約束がなされていても、それは内部的な約束にすぎないので、その約束を理由にCさんが管理組合に対する支払いを拒むことはできません。
                                    以上
【質問12】 マンションでの火災
1 質 問
 管理組合の理事をしています。最近、ある区分所有者の部屋から火災が発生し、廊下及び上下階に被害が出ました。火災を起こした区分所有者に過失があるということなので損害賠償を求めたいのですが、管理組合として当然に請求することはできるのでしょうか。

2 回 答
(1) 民法709条
 民法709条では、「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」と規定しています。したがって、過失により火災を発生させ、これにより他人の生命・身体・財産等に損害を生じさせれば、損害賠償の責任を負うはずです。

(2)失火責任法
 ところが、火災については、それが過失によるもの(「失火」といいます)である場合、失火責任法(「失火ノ責任ニ関スル法律」)という特別な法律が適用され、民法709条がそのままでは適用されないこととされています。すなわち、失火責任法では、「民法第709条の規定ハ失火ノ場合之ヲ適用セス但シ失火者ニ重大ナル過失アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス」と規定されています。つまり、失火の場合は、故意または重大な過失がないと責任を問われないということで、単なる過失(これを軽過失といいます)は免責されることになっています。ここで「故意」とは、わざと、すなわち、火災を起こす意図や火災発生の可能性を認識しつつこれを認容(それでも構わないと思うこと)することを言います。これに対して「重過失」とは、不注意の程度がはなはだしいことをいいます。判例では、「通常人に要求される程度の相当の注意をしないでも、わずかの注意さえすれば、たやすく違法有害な結果を予見することができる場合であるのに、漫然これを見過ごしたような著しい注意欠如の状態を指す」と表現しています。難解な表現ですが、要は、ちょっとした不注意程度では足りず、故意と同視できる程度の重い不注意を意味することになります。
 したがって、質問にあるように、区分所有者に過失がある場合でも、それが重大な過失でないと、損害賠償の請求はできないということになるので、管理組合が当然に請求できるとは限りません。また、仮に重大な過失が認められて、区分所有者に対して損害賠償の請求ができたとしても、資力がなければ、数百万円、場合によっては数千万円もの支払いを得ることは実際上困難です。

(3)火災保険の重要性
 以上のように、火災による損害について、区分所有者に責任を問えることは困難な場合が多くいため、このような場合に備えて、管理組合ではぜひ火災保険に加入しておくようにしましょう。

(4)火災予防の取組み
 各区分所有者はもちろん管理組合としても火災を発生させないよう日常的に注意することが重要です。管理組合としては、火災報知器の設置や消火器等の点検、防火責任者の選任、通報体制、火災訓練、掲示等による注意喚起などいろいろ工夫しておきましょう。
                                   以上
【質問13】 管理費等滞納者への延滞金や弁護士費用等の請求

1 質 問
 私のマンションでは管理費等を長期に滞納している区分所有者が複数います。これまで回収作業も十分に行われてきませんでしたが、今度の総会を契機に、次年度は本格的に回収をしたいと思います。
@ 滞納額に加えて延滞金を請求したいのですが、請求できる額や利率に制限はありますか。A もし訴訟になった場合の弁護士費用や督促に要した費用も請求できるのでしょうか。

2 回 答
1 @の質問(延滞金の額・利率)について
(1)管理規約に延滞金(遅延損害金)の規定がない場合
 延滞金(遅延損害金)の利率について管理規約に規定がない場合でも、民法により年5%の利率で請求できることになっています(民法404条)。これを「法定利率」といいます。

(2) 管理規約に延滞金(遅延損害金)の規定がある場合
 管理規約に延滞金(遅延損害金)の規定がある場合は、一種の約定利率の定めとして上記の法定利率に優先して請求できることになります。この点、標準管理規約では、「組合員が前項の期日までに納付すべき金額を納付しない場合には、管理組合は、その未払金額について、年利○%の遅延損害金を・・・加算して、その組合員に対して請求することができる。」としています(第60条第2項)。したがって、質問者のマンションの管理規約に遅延損害金の定めがあれば、その分を加算して滞納者に請求することは可能です。
 ただし、遅延損害金の利率があまりに高額な場合は、裁判で争われた場合には無効とされるおそれがありますので、注意してください。この点、管理規約の利率の定めが利息制限法や出資法の規制を受けるのかという問題があります。例えば、利息制限法では、10万円未満は20%、10万円〜100万円未満は18%、100万円以上は15%が、消費者契約法では14.6%が、それぞれ上限金利とされています(なお、国税滞納の場合も14.6%)。確かに、マンションの管理費等にかかる遅延損害金は金銭消費貸借における利息ではないので、利息制限法や消費者契約法がそのまま適用されるわけではありません。しかし、これらの法の趣旨を考えると、高額な利率の設定はやはり避けるべきでしょう。
2 Aの質問(督促費用・弁護士費用)について
 民事訴訟では、敗訴者負担の原則というものがあり、訴訟に要した費用は訴訟に敗れた側が負担するのが原則となっています(民事訴訟法第61条。なお、民事訴訟費用等に関する法律及び民事訴訟費用等に関する規則参照)。ただし、ここにいう「訴訟費用」とは、当該訴訟の追行及び審判のために直接必要なものとして当事者及び裁判所が支出した費用をいい、督促費用や弁護士費用が当然に請求できるわけではありません。したがって、これらを請求できるとするためには、予め管理規約で「督促費用及び弁護士費用も請求できる」との定めをしておく必要があります。この点、標準管理規約第60条第2項では、前述の遅延損害金の定めに続いて、「違約金としての弁護士費用並びに督促及び徴収の諸費用を加算して、その組合員に対して請求することができる。」としています。規約が整備されていないマンションでは、この規定を参考にして規約を整備することをお勧めします。
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【質問14】 エレベーター使用と管理費

1 質 問
私のマンションでは、最近新しく1階に入居した区分所有者から「エレベーターは使わないので、その分管理費を下げてほしい。そうでなければ管理費を支払わない。」と言われました。このような主張は正当なのでしょうか。管理組合としては1階の住民からはエレベーター使用料を差し引かなければならないのでしょうか。

2 回 答
1 エレベーターは一部共用部分か全体共用部分か
 共用部分の中には、区分所有者全員が共用する全体共用部分と一部の区分所有者のみ共用する一部共用部分との区分けがあります。ただし、実際には両者の区分けはそう簡単ではありません。一部共用部分と呼ばれる例としては、@下層階が店舗で上層階が住居であるようないわゆる店舗付マンションの場合で、下層階の店舗部分と上層階の住居部分の入口や階段が別個に設けられている場合の、各入口や階段室部分、A階層別に設置され使用が区分されているエレベーター、階段、一部専有部分にのみ通ずる廊下などがあります。基本的には、当該部分の構造上の性質と使用上の目的から判断されるものといえますが、それでもやはり判断は容易ではありません。区分所有法もこの点を考慮して、たとえ一部共用部分であっても規約で全体共用部分とすることは認めています(法11条2項)。

2 質問者のマンションでの1階の区分所有者の主張は正当か
 質問者のマンションの区分所有者が主張するように、確かに1階の居住者がエレベーターを使用する頻度は2階以上の居住者に比べて極端に少ないということはいえるでしょう。しかし、1階の居住者であっても、2階以上の居住者と交流することはありえますし、また屋上などへ行くこともあるでしょう。さらには、エレベーターが設置されていることによりマンションの資産価値にも貢献しているとも考えられ、その利益は1階の区分所有者も含めて受けていることになります。
 そうすると、建物の構造上、1階の居住者がエレベーターを利用することが困難とされている場合でないかぎり、1階の居住者だからといってエレベーターの利用分の支払い義務を免れるということはできません。したがって、本件のような1階の区分所有者の主張は正当とはいえません。
 ただし、管理規約の定めによって、管理費の額に差を設けることは不可能ということではなく、区分所有法第19条はこのような取扱いを許容していると解されます。しかし、そもそもエレベーターだけでなく、他の面も含めて区分所有法の利害は一律ではなく、やはりエレベーターの利用頻度の違いのみから管理費に差を設ける必要はないでしょう。
                    以上
【15】 内容証明の活用

1 質 問
 管理費等滞納者に内容証明で請求をしたいのですが、内容証明の作成方法を教えてください。

2 回 答
1 はじめに
 最近、マンション管理組合の役員の方から管理費滞納問題の相談を多く受けます。皆さんなかなか思うように回収ができていないようです。前にも管理費滞納について説明しましたが改めて内容証明の意味と書き方・出し方をおさらいしてみましょう。

2 内容証明の意味
(1) 内容証明とは
 内容証明とは、「内容証明郵便」という郵便の一種です。内容証明それ自体はあくまで普通の手紙であり、「書留郵便」「速達郵便」と同様、法的強制力があるものではありません。

(2)内容証明の目的・効用
@内容証明には確かに法的強制力はありませんが、最終警告として活用でき、相手に対する心理的プレッシャーを与えることができます。A郵便局で差し出した書面と同一のものが保管され、請求をしたことの証拠になります。配達証明を付ければそれがいつ差し出されたのかの証明にもなります。Bその他、相手の考えや出方を探るために内容証明を利用するということもあります。
C内容証明による催告は、権利が時効により消滅してしまうのを、とりあえず半年間延長するという効果ももっています(「催告」といいます)。時効期間が迫っている場合に有効な手段です。ただし、時効を中断させるためには、催告後6ヶ月内に別に裁判上の手続きをとる必要があります。注意してください。

3 内容証明の書き方と出し方
(1)書き方
@用紙の種類・大きさとも自由です。文字は手書きでもワープロでもかまいません。
A文字数・行数には制限があります。縦書きの場合は、1行20字以内、1枚26行以内。横書きの場合は、1行13字以内、1枚40行以内、または1行26字以内、1枚20行以内となります。
B契印が必要な場合
2枚以上にわたる場合は、そのつづり目に契印をします。
C年月日・住所・氏名の記載
文書中に必ず記載します。縦書きの場合は、最後に年月日・差出人の住所と氏名・受取人の住所と氏名を、横書きの場合は、最初に年月日・受取人の住所と氏名・差出人の住所と氏名を、この順番で記載します。
D捺印は必要か
捺印は必ずしも必要ではありませんが、あった方が厳格な印象となりますので、付ける方がよいでしょう。認印でかまいません。

(2)出し方
@作成部数
同一内容のものを3通用意します。差出人控用、相手方送付用、郵便局保管用の3部です。コピーでかまいません。
A封筒
封筒には、差出人の住所・氏名、受取人の住所・氏名を記載します。この記載は、内容証明書に記載した住所・氏名と完全に一致するものでなければなりませんので注意が必要です。
B取扱郵便局
取扱郵便局には制限がありますので、あらかじめ確認をしておいた方がよいでしょう。
C利用料金
 内容の証明料は1枚420円、1枚増すごとに250円、普通郵便料80円、書留料420円、配達証明料 300円です。郵便局で確認してください。
                                    以上
【質 問】 正式な管理組合名による掲示物(文書)を勝手に剥がした行為はどのような問題を生ずるか。

 あるマンションの管理組合の理事長をしています。私のマンションでは、理事会の方針に何かと反対する数名の組合員がいますが、あるとき、理事長名で掲示した文書が何者かによって剥がされ、その反対者の連名による文書が理事会の許可なく掲示されるということがありました。正式な理事長名(理事長印有り)での掲示物を勝手に剥がすことは犯罪行為に該当すると思いますが、どのような犯罪が成立するのでしょうか。これが、剥がされたのではなく、理事長名の文書の上に勝手に貼られた場合はどうなるのでしょうか。また、理事会の許可なく掲示された掲示物は直ちに廃棄しても大丈夫でしょうか。

【回 答】
 正式な理事長名での掲示物を勝手に剥がす行為は、以下の刑法上の犯罪行為に該当することになるでしょう。

1 器物損壊罪または窃盗罪に該当
 まず、理事長名の文書の破棄として器物損壊罪(刑法第261条。3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは併科)に該当する可能性があります。もし仮に、その行為が自分のものにしようとの意図があれば、それは領得の意思に基づくものとして窃盗罪(刑法第235条。10年以下の懲役または50万円以下の罰金)に該当することになります。

2 威力業務妨害罪に該当 
 さらに、理事会の管理組合活動である組合員への周知活動を、威力によって妨害するものとして威力業務妨害罪(刑法第234条。3年以下の懲役または50万円以下の罰金)にも該当します。

3 罪数関係
 これらは一個の行為が複数の罪名に触れるものとして、器物損壊罪または窃盗罪と威力業務妨害罪の観念的競合となり(刑法第54条)、刑罰は、その最も重い窃盗罪に規定される10年以下の懲役刑または50万円以下の罰金刑となります。

4 掲示物の上に勝手に貼られた行為について
  剥がされたものでなく、無断で掲示物を貼付された場合でも、それは管理組合掲示物の効用を害したものとして前述と同様器物損壊罪に該当します。

5 共同正犯、教唆犯、幇助犯
 以上のとおり、いずれも刑法上の犯罪行為に該当し、もしこのような行為を複数の者が通謀して実行したとすれば、その者らは共謀共同正犯として犯罪行為の共同正犯(刑法第60条)となります。共同で実行していない場合は、直接の行為者が正犯、その背後で実行をそそのかした者は教唆犯(刑法第61条)が、単に実行を容易にしたに過ぎないのであれば幇助犯(刑法第62条)に該当します。

6 理事会の許可なく掲示された掲示物の取り扱い
 掲示板は共用物であり、各組合員が個人的に勝手に文書を掲示するようなことは許されません。掲示は管理組合、すなわち通常は理事会と理事長が行います。個人が勝手に掲示した場合は、理事会はこれを撤去することが許されるでしょう。ただし、撤去した場合でも、直ぐに廃棄することは避けてください。無断掲示物でも「紙」という財物であり、直ちに廃棄してしまうと、理事会側が器物損壊罪等に問われかねないからです。このような場合は、無断掲示物でも一旦は保管し、相当期間を定めてその引き取りを求めてください。それでも引き取り手がないということが判明した時点で廃棄するのがよいでしょう。
 なお、以上のような事態に備えて、管理組合では予め「掲示板使用細則」等の規則を作成しておくようにしましょう。
                                                                                            以上

橋本行政書士事務所
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