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リハビリについて

Rehabilitation of Injured Raptors

  目次
  ☆翼の受動的物理療法
   ☆飛行訓練について
   ☆室内での追い立て訓練について
   ☆野外での飛行訓練(ラインフライト)について
   ☆飛行訓練のプラン
   ☆飛行訓練の注意点
   ☆飛行の評価ポイント
   ☆餌を捕る訓練は?
   ☆放鳥の方法とタイミングは?

- 最終更新日:2004年3月28日 -

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「猛禽のリハビリ:飛行訓練マニュアル」


翼の受動的物理療法(Passive Physical Therapy)について

物理療法
麻酔なしで翼の受動的物理療法を受けるコチョウゲンボウ。翼を支える両手の位置に注目。

 翼を骨折などして固定が長引く場合、獣医学的ケアの期間中、或いはその後しばらくの間、鳥の状態に応じて屈伸運動などの受動的物理療法を行ってやると良いでしょう。翼が長期間8の字包帯やボディーラップ法などで固定された際に起こる、筋肉の萎縮・硬化を防ぎ、機能回復を促進します。翼の受動的物理療法は鳥に特殊なものなので、紹介しておきます。
 翼の場合、長期に渡って包帯などで固定していると翼膜前縁を走る長翼膜張筋腱の萎縮が起こりやすく(特に上腕骨骨折の場合)、怪我そのものが回復しても翼が充分に伸展されなかったりして野生復帰が難しくなったりします。物理療法に痛みを感じる回復初期は、イソフルレン麻酔下で行うのが無難ですが(鳥が暴れて負傷の原因となる)、痛みがなければ麻酔なしで行えます。


 具体的な方法ですが、最初は長翼膜張筋腱を含んだ翼膜のマッサージから始めます。ローションやクリームなどを少し付けて、翼膜前縁部を指で軽く揉みほぐすようにしてマッサージします。次に、関節の軽い屈伸運動を行います。最後に翼を伸展して、長翼膜張筋腱のストレッチを行います。上腕骨の肘関節に近いところを片手で保持し、手根関節近くをもう一方の手で持ちます。上腕骨を翼前縁方向に押し上げるようにしながら、前腕骨/中手骨を翼下縁方向に引いて翼膜を充分に伸展させます。この時、同時に中手骨を持っている手の人さし指で手根関節を押し下げるようにすると、翼が全開した状態になります。正常であれば肘関節を伸ばすのに連動して、手根関節も伸ばされるはずです。この状態を10秒ほど維持したのち、リラックスさせて翼を元の位置に折り畳みます。10回くらい繰返すと良いでしょう。
 物理療法のメニューは骨折などの回復状態や、負傷部位によって変えて下さい。例えば、上腕骨骨折で術後1週間なら、翼膜のマッサージと手根関節の屈伸運動にとどめるなどです。
 物理療法の開始は、骨折整復の術後1週間(術後7日)が目安です。頻度は週2、3回、1回5〜10分が目安かと思います。

ppt1
肘関節の上腕骨側と手根部をそれぞれ持って、翼を伸展する。矢印(赤)の様に肘関節を翼前縁方向に押し上げ、手根部を人指し指で押し下げるようにすると、翼は全開する。H: 上腕骨、R: とう骨、U: 尺骨、Mc: 中手骨。

ppt2
翼を完全に伸展した様子。翼膜前縁が充分に伸び(矢印)、手根関節も可動域最大限に伸ばされている。H: 上腕骨、R: とう骨、U: 尺骨、Mc: 中手骨。

飛行訓練について

 獣医学的に鳥が回復しても、すぐに放鳥することはできません。充分なリハビリを行い、怪我や収容中の運動不足で失われたスタミナや飛行技術を回復してやらなければならないからです。リハビリが不充分であると、野生での生き残りは非常に難しいものになります。
 猛禽の体力と運動能力の回復は、飛行訓練を通して行います。飛行訓練は鳥の回復の状態に合わせて、また、それぞれの種のハンティングのスタイルに合わせて進めていかなければなりません。まずは、狭い収容ケージから多少は飛びまわれるフライト・ケージに移すだけで、鳥の筋肉はかなりほぐされ、徐々に飛行能力を回復していきます。フライトケージ内での様子を観察したり、試しに広い室内で飛ばせてみて、ある程度飛べるようなら飛行訓練を開始します。

 飛行訓練には、大きく分けて以下の3つがあります。
1. 追い立て訓練
 鳥を追い立てて、2つの止まり木の間を飛ばせる方法。短距離飛行(15〜25m)の繰り返しで、運動させます。飛翔にスピードとパワーがなく、待ち伏せて狩りをしたり、短距離を飛びながら獲物を探すなどする小型のフクロウ類(コノハズク、オオコノハズク)などでは、この方法で放鳥までの訓練ができます。また、中型以上で、ごく初期の飛行訓練には使用できます。たいていは紐等を付けずに屋内で行いますが、紐を付けて屋外で行うこともできます。但し、この方法で中型以上のハヤブサ類や、ハイタカ属全般を室内で飛ばせることは避けます。

2. ラインフライト
 鳥に足革等の装具を付け、紐(忍縄、おきなわ)で繋いで野外で飛ばせる方法です。殆どの種類で、この方法でスタミナと飛行能力を回復させることができます。60mほどの飛行を繰返し行います。但し、中型以上のハヤブサ類や大型ハイタカ属などは、ハンティングに高度な飛行テクニックとスピードが要求される種では、この方法では不充分です。

3. フリーフライト
 紐を付けずに、猛禽を野外で飛ばせて訓練する方法です。このような訓練には専門知識と技術(鷹匠術)が要求されるので、鷹匠に協力を求めるか、あるいは鷹匠から訓練を受けて習得するかする必要があります。特にハヤブサ類やハイタカ属では運動量や飛行の特徴等から、完全な飛行能力の回復にはこのタイプの訓練が必要です。

 室内での追い立て訓練とラインフライトについては、次の項目で詳しく説明しています。

室内での追い立て訓練について

 前述のように、小型フクロウ類の飛行訓練や、中型以上の猛禽(但しハヤブサ類やハイタカ属は除く)の初期の飛行訓練に使用できる方法です。短距離飛行の繰返しを行って、スタミナと飛行能力の回復をはかります。

 鳥の大きさにもよりますが、10〜25mの間を空けて(ワシなどでは50m必要でしょう)、1.5〜2mの高さの止まり木を2本設置します。天井の高さは3〜3.5m必要です。この止まり木の間を、往復するように飛ばせて運動させる訳です。鳥が違う方向にいってしまわないように、カーテンなどで仕切った、細長いスペースの両端に止まり木を設置すると良いでしょう。
 1人で鳥を追い立てるか、あるいは2人1組でそれぞれ止まり木の近くに立って、飛んできた鳥が止まり木に止まったら追い立てて飛び立たせるかします。鳥を途中で休ませながら行いますが、1フライトごとに15〜20秒ほどの休憩が適当です。あまり長く休ませると効果がありません。
 パンティングして(口を空けてハアハアする様子)鳥が非常に暑がるようなら、足や頭部に軽く霧を吹いてやると良いでしょう。但し、直接口の中に水を吹き付けるようなことはしないで下さい。運動開始後と、一定量の運動後の呼吸数をその都度記録しておくと、鳥の運動能力回復の程度を知る目安となるでしょう。また、飛行中のバランスや羽ばたきの様子なども記録しておきましょう。
 週に2、3回の運動を目安として、鳥の能力回復にあわせて運動量を増やしていきます。


室内の廊下に設置されたリハビリ用のフライト・ウェイの例。コノハズク類等の小型で飛翔にスピードとパワーの少ない種類では、この様に2つの止まり木間を往復させることで、飛行訓練ができる。事故を防ぐために蛍光灯をメッシュで覆ってある。 飛行訓練中に疲れて休憩するアメリカチョウゲンボウ。調子が良ければ、一方の止まり木には止まることなしに1往復することも多い。

 適切な運動量ですが、運動後の血中乳酸濃度の変化を測定することにより、有効な有酸素運動の上限を算出する研究が行われています(Chaplin ら、1989年*、1990年**)。上限を超えると、鳥が疲れるだけで持久力等の改善にはつながらないというものです。飛行訓練は個々の鳥の状態や反応を見ながら行わなければなりませんので、これはあくまでも目安ですが、運動量を決める参考にして下さい。

室内での追い立て訓練の1回運動量の上限の目安***
(但し、中〜大型種では訓練の中期までを想定しているために飛行距離は短くなっている)

室内飛行(15m)の最大本数と
最大飛行距離
小型猛禽
(コノハズク・オオコノハズクなど
体重200g程度まで)
 50本、750m
中型猛禽1
(トラフズク・コミミズク、チョウゲンボウなど
体重200〜400g程度)
 40本、600m
中型猛禽2
(体重400〜550g程度)
 35本、525m
中〜大型猛禽
(フクロウ、サシバなど
体重600〜900g程度)
 30本、450m
大型猛禽
(ノスリなど体重1〜1.8kg程度)
 20本、300m

*Chaplin et. al. 1989. Physiological Assessment of Rehabilitated Raptors Prior to Release. Wildlife Journal 12(1)* 7-8, 17-18.
**Chaplin. 1990. Guidline for Exercise in Rehabilitated Raptors. Wildlife Journal 12(2): 17-20.
***Arent. 1998. Reconditioning Injured Raptors: Training Manual for Flight Crew Volunteers. The Raptor Center, University of Minnesota, USA.

野外での飛行訓練(ラインフライト)について

ラインフライト1 ラインフライト2
足に紐を付けて飛行訓練をうけるハクトウワシ。 同様にして飛行訓練を受けるアカオノスリ。


足革をつけたタカ
ラインフライトのために足革と、忍縄をつけたアカオノスリ。この足革は「和式」と呼ばれるもので、訓練ごとに付け外しする。

 野外での飛行訓練では、通常、鳥が逃げてしまわないように紐(忍縄、おきなわ)に繋いで行う必要があります(ラインフライト)。そのためには、足革などの装具とある程度の技術・配慮が必要となるので、全く経験や知識のない方は、猛禽の取扱いになれ、鷹匠術の知識がある程度ある人の協力やアドバイスを得て下さい。
 以下に紐で繋いだ飛行訓練の方法を簡単に説明しておきます。鳥の足に足革と呼ばれる革紐を付けてより戻しに通し、そこに紐を付けます。小型から中型の猛禽では釣り糸やたこ糸をつけて、リール付き釣り竿に手を加えたもの(竿の先をきって短くする)を使用して飛ばせます。中型から大型の鳥ではナイロン製のパラシュート・コードや登山用のロープなどをコード・リールなどに巻き付けて使用します。糸・紐の長さは、60〜100mくらいで、最後の10〜15m程度で印を付けておきます。この印は紐の最後が近付いて、着地に備えて鳥の飛行スピードを調節する際に必要です。
 2人1組で、電線などの障害物のない充分に広い場所で行います。ひとりが鳥を持ち、もうひとりが釣り竿やコード・リールを持ってスタンバイします。訓練初期には地面から飛び立たせても構いませんが、最終的には鳥をできるだけ高く投げ上げて飛ばせるようにします。
 リール付きの釣り竿を用いる場合は、鳥の飛ぶに任せて糸を引き出させますが、コード・リールの場合は、飛行中に鳥が紐に引っ張られて負荷がかからないように、からまないように地面にほどいた状態で置きます。前述のように紐に付けた印が見えて終わりが近付いたら、紐を持つ人は革手袋をした手を軽く握るようにして、引き出される糸・紐を手の中で滑らせます。こうすると摩擦により、飛んでいる鳥が少し引っ張られてスピードを落とし、スムーズな着地を促すことができます。釣竿の場合は、リールに巻かれた糸に親指を押し付けて、負荷をかけます。
 鳥が着地したらひとりが鳥に近付き、回収します。各飛行の間には1、2分の休憩をはさみます。この場合も長過ぎる休憩はいけません。鳥が非常に疲れて飛びたがらないようならそこで打ち切ります。飛行中の鳥の様子はしっかり観察し、記録しておくのは言うまでもありません。
 鳥が暑がってパンティングする(ハアハアする)ようであれば、頭部や足に切りを吹いてやると熱の発散を助けます。但し、口の中に直接吹き掛けないように注意してください。特に、暖かい日に訓練を行う場合は、水の入った霧吹きを携帯するようにします。
 装具(足革など)の作り方や装着方法は、関連文献のページおよび本とアートのセクションに紹介されている「飼育猛禽のケアと管理」やその他の鷹匠術関連の本にも記載されています。

 前述のように、運動後の血中乳酸濃度の変化の測定により、効率的な有酸素運動の上限が算定されています(Caplinら、1989年*、1990年**)。次に示す数値は、訓練後期で鳥の持久力が充分回復している場合での1回の飛行距離の上限です。あくまで目安ですが、運動量を決める際の参考にして下さい。

野外でのラインフライトの1回運動量の上限の目安***
(但し、訓練後期で鳥の持久力が充分回復している場合での1回の飛行距離の上限)

ラインフライト(60m)の最大本数と
最大飛行距離
小型猛禽
(コノハズク・オオコノハズクなど
体重200g程度まで)
 10〜12本、600〜750m
中型猛禽
(トラフズク・コミミズク、チョウゲンボウなど
体重200〜500g程度)
 10本、600m
中〜大型猛禽
(体重600〜1800g程度)
 8本、480m

*Chaplin et. al. 1989. Physiological Assessment of Rehabilitated Raptors Prior to Release. Wildlife Journal 12(1)* 7-8, 17-18.
**Chaplin. 1990. Guidline for Exercise in Rehabilitated Raptors. Wildlife Journal 12(2): 17-20.
***Arent. 1998. Reconditioning Injured Raptors: Training Manual for Flight Crew Volunteers. The Raptor Center, University of Minnesota, USA.

飛行訓練のプラン

 飛行訓練でいきなり長距離を飛ばせることはできません。徐々に運動量や頻度を増やしていくことが必要です。また、飛行訓練は放鳥直前まで続けます。持久力や飛行能力が回復したからと言って、飛行訓練をせずに1週間でもおいてしまうと、再び能力は落ちはじめるので気を付けて下さい。

 中〜大型猛禽(コミミズク〜ノスリ程度の大きさで、ハヤブサ類・ハイタカ属を除く)を例として、大雑把な訓練計画の目安を示しておきます。

1. 室内のフライト・ウェイなどで追い立て訓練をする。
 15〜25m位の距離を5本ほど飛ばせてみます。この運動がきついようなら、しばらくは運動量を調節しながら室内で、追い立て訓練を続けるのもよいでしょう。無理なくこなすようであれば、次回から屋外でのラインフライトに移って問題はないでしょう。

2. 野外でのラインフライトを行う(初期)
 ラインフライトは、15〜30mくらいの距離から始めると良いでしょう。長い間野外で飛んでいない猛禽は、体力的にもいきなり長距離は飛べないで、糸・紐の終わりが来る前に着地してしまうことも多いものです。ですから、どの程度の距離からスタートできるかは、鳥自身が決めてくれることも多いのです。各飛行の間には1分程度の休憩をおきます。最初の頃は、1回の飛行距離は150m位で週2回程度の頻度で行います。

3. 野外でのラインフライトを続ける(中期)
 鳥の体力が回復してきたら、運動量を徐々に増やしていきます。45〜60mを中型で5〜10回、大型で5〜7回程度にしていきます。合計にして1回の訓練で300〜450mほどの飛行距離になります。頻度も週3回程度に増やしていきます。

4. 飛行訓練の最終段階に入る(放鳥1週間前)
 飛行訓練を毎日行います。合計距離にして中型で600m、大型で450mを飛ばせます。

 放鳥までにかかる時間は、鳥によって異なります。短いもので3、4週間、長いものでは数カ月かかることもあります。

飛行訓練の注意点

 飛行訓練を行う際の注意点について述べておきます。
1. 記録をつける
 飛行訓練をすることに決めたら、鳥のファイルを作って、訓練記録や鳥の羽根(風切、尾羽)の欠損・損傷などの有無、足の健康状態、体重などを記入しておきましょう。
2. 天候の悪い日には野外では訓練しない
 雨や雪、強風の日には野外での飛行訓練は行いません。
3. 気温の高い時には訓練を行わない。  夏期の日中等、気温の高い時の飛行訓練は避けるようにします。鳥は暑さに弱いので、体力を非常に消耗するだけでなく、熱射病になる可能性が高く危険です。特にフクロウ類は、ワシタカ類全般に比べても暑さに弱いので、夏期に訓練を行う必要がある場合は、早朝の涼しい時に行う等します。
4. 鳥が疲れてきたら無理に飛ばせない
 訓練中に飛行距離が段々短くなっていったり、疲れて飛びたがらないようであれば、無理に飛ばせることはせずに、訓練を切り上げます。
5. 水の入った霧吹きを携帯する
 訓練中に鳥が暑がってパンティングする(ハアハアする)ようであれば、頭部や足に軽く切りを吹いてやります。こうすると、熱の発散を助けることができます。但し、直接口の中に水を吹き入れるようなことはしないで下さい。
6. 厳寒期の訓練開始前には、まず気候に順応させる
 寒い地方で厳寒期に野外訓練を行う場合は、まず、寒さに順応させる期間を設けます。室内で飼育していたものを、急に厳寒の野外で運動させることはしません。まず、3週間くらい屋外で飼育してから訓練を始めます。
7. 飛行訓練は放鳥直前まで続ける
 鳥が仕上がったからといって、しばらく運動させないでおくと、鳥の能力は再び落ち始めます。放鳥直前まで、訓練を続けることが大切です。

飛行の評価ポイント

 飛行の評価は、飛行技術、飛行の力強さ(パワー)、飛行の持久性(スタミナ)、そして飛行スタイルについて行う必要があります。以下に主立った評価ポイントをあげておきます。

・翼/羽ばたきの様子:翼はきちんと伸展しているか、羽ばたきは左右対称か。
・尾の位置:通常、ほぼ無風状態で直進している場合、尾は地面に対して水平。翼に怪我があって治癒した等の場合、一部の筋肉の働きが弱っていると、それによる羽ばたきのアンバランスを補うために、尾が左右どちらかに傾いたりすることもあります。翼の機能が改善されるにつれ、このような尾の位置の偏向はみられなくなります。
・足の位置:通常、飛行中の足は、曲げられて体に引き寄せられているか(長距離飛行の場合)、あるいは2本揃って下方にぶら下がっているか(短距離飛行の場合)です。怪我が治癒した後等で、翼の機能に左右で差がある時等、バランスを取るために足が左右どちらかに振れていることがあります。この偏向も、翼の機能改善と共に見られなくなります。
・飛行高度:短い距離では、高度はあまり得られません。また、種によってはもともと非常に高くは飛ばないものもいます。しかし、訓練が進んでも、地面ギリギリを飛んですぐに着地してしまうのは正常ではありません。
・小翼羽の様子:小翼羽とは、翼角にある第1指から出ている、3枚ほどの比較的小さな羽根です。離陸や着陸、急旋回など、飛行スピードが遅い、あるいはスピードを落とす必要がある場合に、翼から離れるように広がって翼への気流の調節を行い、低速度でも墜落しないように補助している羽根です。
 中手骨などに骨折があって、小翼羽の配列に変化が生じると、飛行中に翼から上へ突き出ている様に見えることもあります。多くの種で、この配列の変化には徐々に対応できるようになりますが、急旋回を繰返してハンティングをするハイタカ属や、ハヤブサ類では対応できず、放鳥断念の可能性もあります。
・着地の様子:スムーズな着地ができるか、両足同時に着地しているか、尾は上手く使えているか。
・風への対処/方向転換の様子:屋外の場合、多少の風に上手く対処しているか、また、旋回したり等する場合にスムーズであるか。
・ラインを引く力
・持久力:合計の飛行距離や、1本のフライトで飛べる飛行距離(持久力が付くにつれ、距離は伸びる)。訓練中の呼吸の様子・呼吸数。訓練後の呼吸数の減少の様子(運動からの回復力)。

 飛行の評価を行うには、それぞれの種の飛行スタイルについて良く知っておく必要があります。文献やビデオ、野外観察等で、猛禽が飛ぶ様子を知る機会を積極的に設けていくことが必要です。

餌を捕る訓練は?

 放鳥が近付いた鳥では、広いフライト・ケージ内の中央に板などで囲いを作って生きたマウスやラットを放し、餌を捕る訓練をさせることもできます。但し、囲いの大きさもトビ大の鳥で1.5x2mくらいないと、負傷する恐れがあります。また、フライト・ケージに直接生き餌を放すことは決してしないで下さい。ケージの隅や壁の近くに獲物を追い込んで捕まえようとする際に、おもわぬ怪我をしてしまいます。
 この方法以外にも、鷹匠術を使って訓練する方法もありますが、専門技術と知識が必要なので素人には無理です。

放鳥の方法とタイミングは?

チョウゲンボウのハックボックス
アメリカチョウゲンボウ用のハックボックスを設置した建物。屋根の中央に見える「突き出た窓」のような部分が、ハックボックス。

 鳥が保護された場所が分かるなら、その場所で放鳥するのが理想です。しかし、迷い出て町中で保護されたり、保護場所が明らかでない場合には、その種が生息すると思われる環境を選んで放鳥します。可能であれば、すでにテリトリーを持った野生猛禽がいるところは避けるようにします。
 放鳥は雨などの天候の悪い日は避け、ワシタカ類では夏期は涼しい朝方に、冬期は暖かくなってきた午前遅くに、フクロウ類では夕方薄暗くなる少し前に放すのが良いでしょう。放鳥は、鳥が木などに衝突しないように開けたところで行います。
 また、冬期に渡去する種(サシバ、アオバズクなど)は冬期の放鳥は避け、春まで飼育するか、越冬地まで輸送するかしましょう。
 放鳥のもうひとつの手段として、ハッキングという方法があります。これは敵が襲わないように地面から高い位置に「ハックボックス」を設置し、そこに餌をおいて鳥が自力で獲物を捕れるようになるまで給餌する方法です。欧米の鷹匠術ではハヤブサ類幼鳥のトレーニングに用いられることが多いようですが、ハッキングを用いた野生復帰は、その他のワシタカ類やフクロウ類でも行われています。

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