宗谷岬ウインドファーム
〜ワシの渡りルートに建設された風力発電施設〜
冬にはオオワシやオジロワシが北海道へ渡ってきます。どちらも天然記念物であり、種の保存法の国内希少種に指定されており、また国際的にも保護されている鳥種です。その渡りルート上、ちょうど長旅を終えて越冬地にたどり着く所に国内最大のウインドファームが建設されました。反対の声が上がったにも関わらず結局着工され、操業を開始しています。本当に問題はないのでしょうか?
- 2006年7月8日更新 -
宗谷岬ウインドファームは、大型風車57基(風車直径62m、高さ100m)、出力5万7000kw、総工費120億円(うち国庫補助が31億円)の日本最大級のウインドファームです。事業者はユーラスエネジーホールディングス(東京電力と総合商社トーメンが出資)です。この場所は、天然記念物のオジロワシやオオワシの渡りのルートであり、その他ハクチョウなどの水鳥も多く通過します。渡り途中や越冬中のワシ類や水鳥の風車への衝突の可能性や、生息環境の悪化が懸念されることから、反対の声が上がりました。風力発電の施設建設は環境影響評価法(アセスメント法)の対象外で、環境影響調査は事業者側の自主的なものに限られており(一部地方自治体では調査を義務付けているところもある)、その不適切さがあちこちの計画で指摘されています。本計画について事業者側の行った環境調査は不十分であり、再調査と計画の見直し等を求める要望書が、日本野鳥の会や(社)北海道自然保護協会等から事業者や北海道知事等に提出されましたが、事業者側は「調査は適切であり、本計画に問題はないと判断している」として、結局2004年4月に建設着工に踏み切りました。
宗谷岬ウインドファームにかかわる事業者側の調査の不適切さの一例としては、渡り鳥の調査を8月に行ったということが挙げられます。鳥の事を少しでも知っている方にとっては、真夏の8月は鳥の渡りシーズンではない(通常は春と秋)ことは常識です。多くの鳥の渡りルートであることから「渡り鳥の調査」を求められた事業者が、渡り鳥の通過しない8月に調査を行って「計画に問題なし」としたことは、故意に渡り鳥への影響を軽微なものと見せるためとしか思えません。そうでないとしたら、十分な知識を持たない者が調査した結果を元にどのようにして「科学的な判断」を下したのかを明らかにしていただきたいものです。
2005年11月15日に同ウインドファームの竣工式が行われ、ついにこの日本最大の風力発電施設が稼動を開始しています。この施設は、渡ってくるオオワシやオジロワシに本当に何も影響を与えないのでしょうか?現在のところワシ類などの衝突事故は報告されていませんが、風車の立ち並ぶ一帯は立ち入り禁止で市民の目が届きません。海外の風力発電施設では夜明け前に施設職員が巡回して、人目につかないうちに衝突死した鳥の死体を回収しているところがあるという話が聞かれます。本施設でも、鳥類の衝突、特にワシ類の衝突が起った場合には隠ぺいしないで本当に公表されるのか懸念されるところです。
北海道では、2004年2〜3月に苫前町の風力発電タービンにオジロワシが相次いで衝突死し、さらに同年12月にも完成直後の根室市昆布盛の施設でオジロワシ1羽がタービンに衝突して死亡しています。これらのケースも衝突死体の発見は一般市民によるもので、事業者側の発見・公表ではありませんでした。この3羽に加えて、北海道では2006年6月現在でさらに2羽のオジロワシが風車に衝突・死亡しています。これらの衝突は風車のブレード(羽根)の着色や白色閃光灯の設置で回避できると多くの事業者側は述べていますが、オジロワシの衝突死が起った根室市昆布盛の施設では、竣工時から白色閃光灯は設置されていたにもかかわらず、操業開始直後に衝突死が起っています。これは白色閃光灯が衝突を全て回避できるわけではないという実例です。
既に多数の鳥の衝突死を経験している欧米で、様々な調査・研究の結果、「風力発電施設建設に際しては、十分な環境影響調査を行い、鳥の衝突死を最小限にするために、渡りルートや生息密度の高い場所や希少種の生息場所への建設は避けるべきである」という指摘が専門家によって為され、それを無視した事業者が訴えられているケースすらあるのに、日本はそれから何も学べないのでしょうか?今後、宗谷岬ウインドファームがワシ類を含めた鳥類とその生息環境にどのような影響を与えるのか、見守っていきたいと思います。
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