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サハリン開発問題:
オオワシの繁殖地の破壊

(2004年11月23日掲載)

 北海道で越冬するオオワシの繁殖地であるサハリンで、大規模開発が進んでいます。海底に眠る豊富な原油・天然ガスを採取し、パイプラインによってロシアあるいはサハリン南端まで運ぶ計画です。サハリンの港からさらにタンカーで、首都圏にまで運ぶとしています。複数の日本企業も関係しています。
 もちろんエネルギー確保は我々が生活していくには大切なことですが、そのための開発の進め方に疑問がもたれています。環境アセスメントで報告されたオオワシの繁殖ペア数が、研究者の調査と大きく食い違っていたり、また、予想される重油流出事故等への対策も不十分なまま開発が進んでいるのが実体です。ヒナのいる営巣木が工事予定地に入っており、すぐ先には重機がせまっているという状況が見られたりもしています。
 オオワシは国際的に保護されている猛禽です。しかし、越冬地北海道では鉛中毒の脅威にさらされ、繁殖地では開発に追い立てられています。


サハリン開発プロジェクト:「サハリンI」と「サハリンII」
 サハリンの北東部沖には、豊富な原油と天然ガスが埋蔵されていることが分かりました。その埋蔵量は極東最大級と言われています。日本、韓国、そして中国という巨大マーケットに隣接した立地条件から、各国の企業が注目し、開発が開発が進められています。それが「サハリンI」、「サハリンII」と呼ばれる巨大開発プロジェクトです。
 「サハリンI」は、サハリン北東部チャイボ湾からロシアまでパイプラインで原油を輸送する計画で、エクソン・モービル社が中心となって、日本石油公団や伊藤忠も出資しています。「サハリンII」も、同じくサハリン北東部のピルトゥン湾からサハリンを縦断するパイプラインを建設して、原油と天然ガスを南部の港まで運び、そこからタンカーで首都圏に輸送すると計画しています。サハリンIIは、シェル、三井物産、三菱商事の3社が出資する「サハリン・エナジー社」が運営します。
 このように、日本企業が出資していますが、原油・天然ガスを購入するのも日本企業です。複数の日本のガス・電力会社がサハリン・から天然ガスの購入を決めていましたが、最近になって購入に消極的な発言をしている会社もあります。
 加えて日本の銀行である国際協力銀行が、サハリンIIに融資しており、現在サハリン・エナジー社から追加融資を求められている状況です。

疑問の残る環境アセスメント
 このような大規模開発が認可されるには、開発予定地に生息する貴重な生物の生息状況や、開発行為がその生物を含めた環境に与える影響についての評価がまず必要です。それが環境影響評価(EIA, Environment Impact Assessment)と呼ばれるものです。
 このサハリン開発においても、サハリン・エナジー社がもちろんEIAを実施して報告書を出していますが、そのEIA報告書の内容に疑問がもたれています。ここで取り上げているオオワシについて、その繁殖ペア数においてEIAのデータと日本・ロシアの研究者が調査したデータに大きな食い違いが見られるのです。開発予定地のピルトゥン湾およびチャイボ湾の繁殖ペア数については、EIAがそれぞれ5ペアずつとしているのに対し、研究者の調査ではそれぞれ12〜14ペア、27〜30ペアと2倍から5倍の開きがあります。それに対して、開発の予定のない2つの湾では、EIA側の15〜18ペアおよび20〜22ペアというデータに対して、研究者側は8〜10ペアおよび9〜14ペアというデータを得ています。
 これらのデータの相違は非常に不自然で、さらにサハリン・エナジー社からEIAを委託された環境アセスメント会社の調査者は、EIAに記載のあるデータ(ペア数)は提出したデータとは異なっていると発言しています。しかし、サハリン・エナジー社はデータに手を加えたことはないと主張しています。

オオワシ以外への影響
 サハリンIIの影響はオオワシだけに留まりません。例えば、開発エリアには絶滅が危惧されているコククジラが生息しており、鳥類ではヘラシギ、カワフトアオアシシギ、シマフクロウなどの希少種も繁殖しています。その他、サハリンを縦断するパイプライン建設も野生生物へ大きな影響をおよぼすことが考えられますし、パイプラインでの流出事故も心配されています。また、採掘現場付近での重油流出事故がおこれば、湾や周辺沿岸の高層湿原も大きな被害を受けることは確実です。
 さらに、サハリン南部の港からタンカーで原油や天然ガスを輸送するため、重油流出事故の発生が懸念されています。宗谷海峡にはタンカーがひしめき、その海域が危険視されているのです。
 北海道の北に広がるオホーツク海は豊かな漁場ですが、一度重油流出事故が起これば、その環境や産業への被害は莫大なものになります。1997年に日本海で起こったナホトカ号の重油流出事故がよい例で、記憶されている方も多いと思います。
 タンカーからの重油流出事故は「起こる可能性のあるもの」として、その予防策や流出が起きてしまった時の対応策が事前に検討されるべきものです。しかし、日本の関係省庁の示した対応策はどれも歯切れの悪いもので、日本に直接関わってくる問題として真剣に考えているとは思えないものです。

サハリン開発計画への申し入れ
 以上のような問題点から、現在、NGOや学術団体などが日本政府に対して要望書や声明文を提出しています。また、国際協力銀行に対して、サハリン・に対する追加融資の再検討を申し入れたりもしています。
 サハリンI・II計画の一部は既に実行されており、試掘施設などがオオワシの繁殖している湾で始められていたりします。国際保護鳥で、世界に約5,000羽しか生息しないとされているオオワシですが、そのヒナがいる巣が移されることも、繁殖の終了を待つこともなく工事がすぐそこまで迫っているのが現実です。


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