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風力発電施設が猛禽やその生息環境に与える影響

(2005年7月21日掲載、2007年6月1日更新)

段ヶ峰ウィンドファーム:イヌワシ生息地での風力発電計画
計画中止を求めたメール送付にご協力いただきまして有難うございました

事業者は兵庫県環境影響評価審査室に
計画の許認可申請の取り下げを申し入れ
段が峰ウィンドファーム計画は正式に中止となりました。

詳細はこちら

衝突死したオジロワシ
2004年2月に北海道・苫前町の風力発電施設で衝突死したオジロワシ。
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 「環境に優しい」エネルギーとして風力発電が注目されており、地球温暖化防止に向けた京都議定書の発効もあって、各地で風力発電が計画されています。化石燃料による発電のように 操業時に二酸化炭素を排出することもなく、また施設建設も比較的少ない経費ですむため、風の条件がよくて建設・維持コストの低い場所に作れば二酸化炭素排出削減に寄与すると、一般には考えられています。
 その一方で、風力発電タービンへの衝突により世界各地で多く希少鳥類が命を落としています。例えば、アメリカ・カリフォルニアのある大型風力発電施設(ウィンドファーム)では年間数十羽のイヌワシが衝突死しています。日本でも、2006年6月までに北海道で5羽のオジロワシ(国内希少種・天然記念物指定)が衝突死していますし、オオワシやオジロワシの渡りの経路にあたる宗谷岬の施設でも衝突等などが懸念されています。さらに本州でもイヌワシ(国内希少種・天然記念物指定)の衝突や生息環境の破壊が危惧されていたところ、岩手県でイヌワシの衝突死がついに発生してしまいました。生息数の少ない希少猛禽では、1羽の死亡がその地域個体群の維持に大きな影響を与えることは必至です。


 風力発電で得られるエネルギー量は、必要材料の生産や廃棄、建設に消費するエネルギー量とその耐用年数を考えると決して多くはなく、「環境に優しいわけではない」ケースも多いことを指摘する専門家も存在します。また、日本の地形を考えた場合、沿岸部を除けば多くの場合でタービンが山間地に建設されることになり、そのために森林伐採を伴った新たな道路の建設等といった開発行為も付随してくるのが現状です。巨額の税金が投入されているのに、ずさんな事前調査で殆ど回らない風車が出現したりもしています。日本では風力発電施設建設に際して環境影響調査は義務化・法制化されていないため、ダムの建設等に比べて容易に計画が進められる状況にあります。欧米では、猛禽の衝突死の多さに訴訟にまで発展しているケースもあり、また、専門家の建設場所選定のアドバイスを無視して、衝突死の多発が予想される場所への建設が進んでいたりもします。「全ての風力発電が環境に優しい」というのは間違いで、逆に「税金を無駄遣いして環境を破壊し、二酸化炭素削減にも貢献しない風力発電」も少なからず存在するのです。
 ここでは風力発電が猛禽に与える影響と、風力発電の現状について考えてみたいと思います。


風力発電施設とは?
 最も目立つものは、発電用タービン、いわゆる「風車」です。数十年前の風力発電初期では比較的小型だった風車も、現在では大型化がすすみ、直径45〜90m、高さも高いものでは130m以上になる巨大なものです。回転数は1分間に10〜30回程度ですが、風車の羽(ブレード)が長いものでは40mを超えるため、ブレード先端の速度は時速150〜300kmという新幹線並みのスピードとなります。タービンの耐用年数はそれ程長くなく、せいぜい16〜17年程度とされています。
 このタービンが1つの発電施設に複数建設されるのが普通で、欧米では広い面積に数千基のタービンが列をなして立ち並んでいる施設(大規模ウィンドファーム)もあります(米国カリフォルニアのアルタモント・パスなど)。日本ではせいぜい10〜60基程度の規模です。
 しかし、建設されるのは発電用タービンだけではありません。発電した電気を送る送電線や、変電施設、管理用道路の取り付け等が必要で、さらに山間地に建設するなら、建設用に新たに道路を取り付けなければならず、森林伐採を伴うこともあります。また、日本では欧米に比べて風況がよくないために発電が安定せず、それを補うためにさらに蓄電設備(ビル1つの大きさ)の併設も検討されている所があります。

風力発電施設が猛禽に与える影響:衝突死だけではないそのインパクト
 上記のような風力発電施設が鳥に与える影響には、大きく分けて「衝突死」、「撹乱」、「生息地の消失」の3つのカテゴリーがあるとされています(バードライフ・インターナショナル, 2002*)。

・衝突による死亡:タービンだけでなく送電線への衝突による死亡も含まれます。タービン1基あたりの鳥の年間衝突死亡数は少ないとされていますが、建設地の選択を誤ると死亡率は高いものになります。鳥が集中する地域、特に渡り途中の鳥が集中したり、大型猛禽を含む帆翔種が多い地域では、例えばカリフォルニアのアルタモント・パスやスペインのタリファ(下記「欧米の現状」を参照)などで、多くの渡り鳥や猛禽が死亡しています。アルタモント・パスの約7,000基のタービンの16%を対象に行ったある調査では、2年間で114羽の死亡(うち81羽がイヌワシやアカオノスリなどの猛禽)が確認され、死亡原因の61%がタービンへの衝突、12%が感電、5%が送電線への衝突という結果となっています。
 しかし、衝突死はタービンの数や鳥の生息密度が高い場合にのみ多く見られるわけではなく、たった1基のタービンしかない施設で、年間54羽が衝突したケースもあります。これからも、建設場所の選択は極めて重要であることがわかります。

・撹乱:発電施設の存在により、鳥の行動が妨げられることが挙げられます。ウィンドファームを避けるために、渡りや日常の活動で使用している飛行経路の変更を余儀無くされると、エネルギー効率の良い飛行ができなくなって鳥に負担がかかることが考えられます。長距離を移動する場合や、羽ばたき飛行に多くのエネルギーを要する大型鳥では、風や上昇気流を上手く利用して省エネ飛行しています。その「省エネルート」が、例えば希少猛禽が繁殖期中に営巣場所と良い狩場を往復するのに使用されているもので、発電施設のために迂回することになれば、それでなくても厳しい条件下で繁殖している日本の希少種にっとて、日々の負担が増えることになります。また、施設周辺での採餌(ハンティング)や営巣、ねぐらを取るなどの行動も制限されることになります。
 さらに施設建設により森林伐採などが行われて生息環境が変化したり、建設用・管理用道路の取り付けによって人の接近が容易になり、繁殖活動に影響を与えたりすることも十分に考えられます。その結果、生息場所を追われると、生息適地の限られた鳥種に与える影響は大きなものです。海外の研究では、発電用タービンの600m以内では鳥による利用が減少したり、種類によっては全く見られなくなったりしたものもあります。また、日本では丹後半島の施設でも、タービンから離れる程、見られる鳥種が増えるという報告もあります。生息地全てが失われなくとも、生息のための重要な鍵になるものが失われることで、鳥はその場所から出ていかざるをえなくなるのです。
 これらのことから、建設地選択にあたっては、周辺の鳥の生息状況(種類や生息密度など)だけでなく、その行動(渡りや日々の移動経路、利用状況)も十分に調査して把握する必要があるといえるでしょう。

・直接的な生息地の消失:風力発電施設の建設によって、直接的に生息地が失われてしまうこともあります。大規模ウィンドファームでは、懸念されるところです。山間地では森林が失われたり、海岸沿いでは、シギ・チドリ類の渡りの中継地で重要な餌場となる干潟などが失われる可能性があります。また、地盤の不安定なところや、水系の汚染されやすいところに建設されると、土壌侵食や水の汚染を引き起こす可能性もあり、生息地の劣化や消失に繋がることも予想されます。

 このような影響を最小限にとどめるために、十分な環境影響調査を行い適地を選択することが必要なのは明白ですが、日本では風力発電施設建設に関しては環境影響調査がアセスメント法の対象になっていないのが現状です。

大型希少猛禽では1羽の死亡が地域個体群に重大な影響を与えてしまう可能性がある
 タービンへの衝突死についてはその「死亡数の多さ」が強調されがちですが、大型希少猛禽においては極少数の死亡でも重大な影響を与えてしまいます。イヌワシなどの大型猛禽は、繁殖できるまでに年月がかかり、また1度に育てるヒナも多くの場合で1〜2羽で、条件が厳しければ毎年は繁殖できないため、もともと数の増えにくい鳥です。生息地破壊など人の活動のために圧迫を受けて数を減らしているところへ、さらに風力発電タービンへの衝突等で特に成鳥が命を落とすことになれば、それは極めて大きなインパクトとなります。ワシ類等の大型猛禽では、成鳥の生存率が数の増加に最も大きく影響するからです。
 現在日本では、イヌワシなどの大型猛禽は数も減少し、その繁殖率も低下して絶滅が危惧されています。生息地も限られ、繁殖している成鳥が死亡した場合に、入れ代わって新しく繁殖を始めるべき若い鳥の数も多くない状態で、1羽の死亡はその地域からの「消失」につながることさえあります。
 死亡しなくとも、施設が存在することで移動経路の変更等、日々の活動への負担が増えることで繁殖に失敗すれば、それでさえ非常に大きな影響といわざるを得ません。

何故猛禽がタービンに衝突するのか?:決して鳥の不注意によるものではなかった・・・「モーション・スメア」の原理
 風力発電事業者側からは、「あんなにゆっくり回っている風車のブレードに鳥が衝突するなんで信じられない。鳥の不注意でぶつかるのではないか。」というような発言を耳にしますが、それは大きな間違いです。それには猛禽の眼の特異的な構造や「モーション・スメア」という原理がかかわっており、それらは科学的に調べられています。「鳥の不注意」、「偶発的な事故」という言葉には科学的な説得力はありません。

詳細はこちら
(「モーション・スメア」に関する英語報告書のダウンロードも出来ます)

★欧米の現状:風力発電にかかわる諸問題
 日本よりも何十年も早くから風力発電に取り組み、多くのウィンドファームが操業している欧米諸国は、すでに多くの問題を経験しています。十分な事前調査と環境影響評価等なしに鳥の主要渡りルートや行動圏に建設された施設では、多くの衝突死が報告されています。そのため様々な調査・研究が行われ、専門家達が「衝突死を減らすためには発電施設の建設場所の検討が重要である」と強調し、「十分な環境影響調査を行うと共に渡り経路や希少種の生息地を避ける」ように提言しているにも関わらず、それを無視する事業者が存在します。今なお、世界の主要な鳥の渡りルートで、複数の大型風力発電施設計画が進んでいるのが現状です。
 また、景観やタービンの騒音などの問題で、地元住民との紛争が起こっているケースも特にヨーロッパで少なからず存在します。『クリーン・エネルギー』という点だけが強調されがちな風力発電ですが、どんなものでも100%全て良いというものはなく、利点もあれば問題点もあるはずです。しかし、それが忘れられているようで、風力発電を巡る紛争や反対などについての海外の動きは、どうも国内で余り報じられていないようです。
 実際どのような問題が起こっているのでしょうか?詳細はこちら


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日本の風力発電事情:ヨーロッパに比べて適地の少ない日本
 日本では、ヨーロッパのようにまっすぐな風が平均的に吹くという状態ではありません。海に囲まれた狭い国土に山地が広がり、風の吹き方は一定せず複雑です。そのため風況の良い場所は半島部や海岸等、非常に限られており、それ以外の場所では事業として利益を出すことは困難といわれています。また、平地の少ない日本では稜線上など山間部での建設も多くなり、それに伴う建設コストの増加(資材運搬費用の増加、建設用道路の取り付け等)や開発行為(道路取付けのための森林伐採等)が問題となります。さらに多雪地帯では、冬期の施設管理問題(雪の深い山間地で施設までたどり着くのが困難、除雪だけでも大変、など)や稼動時間の減少(着雪などで風車の稼動が難しくなるなど)も加わってきます。このような条件下で風力発電施設を建設しても、使用できる電気エネルギーが建設/稼動/維持管理に必要なエネルギーを上回るとは思えず、また二酸化炭素削減に貢献できるかも疑問です。
 日本では主に北海道や東北地方等で風力発電がスタートしましたが、北海道および東北電力は「風力は不安定な電源」としてウィンドファームからの電力に対して買い取り枠を設けたため、既にその枠は一杯で、北海道・東北ではファームの新設は困難な状態です。そこで、まだ開発の余地が残る中国地方等の本州へ事業者が進出しているため、本州での風力発電計画が現在多くなっているのです。
 また、地方自治体で「地元のシンボル的なものにしたい」、「観光客誘致に繋がれば」という安易な考えで風車を建設するところも見られます。また、ずさんな事前調査で「回らない風車」が各地に出現しており、訴訟に発展していることろもあります。滋賀県のある自治体では、市議や市長が「環境に優しい町」のシンボル的なものとして大型風車を1基建設しましたが、殆ど回らずに収益も上がっていません。市は「自然再生エネルギーの啓発目的があるので、回らなくても問題はない」と述べていますが、本来の働きをしない「シンボル風車」建設に巨額の税金が使われたことに、市民が納得するとは思えません。小型風車ではNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)からの補助金が交付されません。市は補助金を得るために現地の風力に見合わない大型風車を建てており、これは「エコ」の名の元の税金や資源の無駄遣いです。

宗谷岬ウィンドファームがついに操業開始:オオワシやオジロワシへの影響は?
 2005年11月、大型風車を57基備えた日本最大の風力発電施設である「宗谷岬ウィンドファーム」が操業を開始しました。計画段階から、オオワシやオジロワシ、ハクチョウなどの水鳥の渡りルートにあたるとして反対の声があがっていました。
 北海道の他の風力発電施設では、既に5羽のオジロワシが風車への衝突で死亡しています。根室市・昆布盛の施設では、衝突回避対策として白色閃光灯を操業当初から設置していたにも関わらず操業開始直後にオジロワシが衝突死しており、対策の効果はなかったことは明らかです。事業者が鳥の衝突回避策としているこの白色閃光灯ですが、本来の目的は航空機の衝突回避で、その設置は「航空法」で義務付けられています(「航空障害灯」と呼ばれるもののひとつ)。
 渡りルートに建設されたこの施設は、ワシや水鳥に大きな影響を与えてはいないのでしょうか?詳細はこちら

根室で衝突死したオジロワシ
苫前で衝突死したオジロワシ
根室の風力発電施設で衝突死したオジロワシ(上)と苫前の施設で衝突死したオジロワシ(下)。苫前のケースでは、オジロワシの上半身と下半身が国道の両側に別々に転がっていた。しかし環境省は「タービンに衝突して死亡した可能性が高い」との見解で、「タービンに衝突して死亡したと考えられる」とは正式発表していない。また根室・昆布盛の施設では、衝突回避策として白色閃光灯を当初から設置していたが、その効果もなく操業開始後すぐに衝突した。(日本学術振興会の白木彩子氏作成の資料から許可を得て掲載)

本州での風力発電計画ラッシュ:イヌワシも危ない

 先に述べた通り、飽和状態になった北海道・東北からターゲットを移して、中国地方などで風力発電計画が次々と持ち上がっています。そのため、建設場所によってはイヌワシが発電用タービンに衝突したり、その行動や生息地に対して多大な影響が生ずることが危惧されていましたが、岩手県でイヌワシの衝突死がついに発生しました。
 一方で、岩手県のある町では山の上に風力発電施設の建設が予定されていましたが、計画場所が絶滅危惧種のイヌワシの生息地であるため、生態系への影響を考えて事業者が建設を断念したケースがあります。また、イヌワシの生息が長年確認されている滋賀県米原市の奥伊吹に計画されていた風力発電施設計画は、2006年春に中止されることに決定しました。風車約20基が建設予定でした。この奥伊吹では、風況ポール(風車の建設に先立って、建設予定地の風の状態を計測するためのもの)のすぐ脇を飛んでいて衝突しそうになったイヌワシの姿がビデオ撮影されたりもして、反対の声があがっていました。中止の決断を下した市長と事業者、中止のために働きかけた方々に拍手を贈りたいと思います
 それにもかかわらず、イヌワシの風車への衝突や行動への影響が懸念される場所で、風力発電施設を計画している自治体や事業者がいまだに存在します。そのひとつが兵庫県朝来・宍粟で計画されている「段ヶ峰ウィンドファーム」で、市民やNPOも建設に反対しています(詳細はこちら)。もし段ヶ峰に風車建設が認められれば、「イヌワシが生息する豊かな自然が残されている場所でも風車は建設できる」という危険な前例になってしまうことは明らかで、これはもやは地元だけの問題ではありません。
 これらの場所では山間地に建設が計画されており、道路取付けに伴う森林伐採によって二酸化炭素削減効果が相殺されたり、建設資材の運び上げに多くのエネルギーを要するためエネルギー収支がさらに悪くなる等、「環境に優しいエネルギー」からは程遠いものになってしまう可能性が大です。また多雪地帯での計画では、冬期の施設管理の問題(積雪の多い山間地では、麓から除雪して辿り着くだけでも大変な労力です)や稼動時間の大幅な減少(ブレードへの着雪によって風車を稼動できない、破損を防ぐために冬期にはブレードの取り外しが必要となる可能性もあり)がさらに加わってきます。不適切な立地での風力発電は、タービンへの猛禽の衝突や繁殖阻害などだけが問題なのではなく、もっと根本的な問題を抱えていることを忘れてはなりません。
 何度も述べますが、環境影響調査が法律で義務付けられていないため、不十分な調査で短期間のうちに着工できてしまうという恐ろしさがあります。イヌワシの衝突死や生息地からの消失が起こってからでは遅いのです。きちんとした調査を行い、その結果、自然環境や希少猛禽等に大きな影響が出ると客観的に判断されたら、撤退も含めた計画の見直しを事業者や自治体には決断していただきたいものです。

 イヌワシの生息地だけでなく、猛禽の渡りルートや環境の保全保護が求められる国立/国定公園内などでも風力発電施設の建設が複数計画されています。例えば、三重県内に鳥羽ウインドファーム(株)が計画中の行者山の風力発電施設ですが、伊良湖岬(愛知県)から渡ってくるサシバなどの猛禽類の上陸地の一角に風車が立ち並ぶことになり、衝突が懸念されるため地元のNPOなどが反対しています。この計画地は伊勢志摩国立公園内にあり、そもそも保全保護を目的として指定された地域に風力発電施設の建設を進めるべきではないのではないでしょうか。

★風力発電の「本当のトコロ」:どれくらい環境に優しいのか?
 環境NGOや多くの人達は、やみくもに風力発電に反対しているわけではありません。化石燃料への依存は、気候変動、生態系の改変、生物多様性の破壊に繋がるため、化石燃料を使用した発電からそれに変わるものへの移行、つまりクリーン・エネルギーへの移行を自然保護や野生生物保護に関わる人達も支持しています。
 問題となるのは、「本当に二酸化炭素削減に寄与する計画であるか」ということと「環境や野生生物への影響が最小限にとどめられるか、そしてそのための努力を事業者側が行うか」ということです。
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風力発電の長所と短所
長所:
・発電時に燃焼による二酸化炭素の排出がなく、原子力のように放射性物質も関係してこない。
・風力は無尽蔵である(化石燃料のように尽きることはない)。
・発電施設の建設・維持費が安く、また短期間で建設できる。
など
短所:
・発電量が不安定である(風によって左右されてしまう)。
・エネルギー収支がよくない(発電量に比べて建設費等のコストが高くつく)。
・採算を取るためには設置場所が限られる(日本では風況のよいところは特に限られる)。
・従来の発電施設にはない、タービンへの鳥の衝突などが存在する。
など

各種発電の二酸化炭素排出量や、エネルギー収支の比較(電中研報告書などによる)
電力源の種類 燃料燃焼による
二酸化炭素の排出量
(g/kWh)
設備・運用に伴う
二酸化炭素の排出量
(g/kWh)
エネルギー収支*
石炭 890-990 88 17
石油 700-730 38-44 21
天然ガス 480-650 130-150 6
水力 0 11-18 50
風力 0 29-125** 6
太陽光 0 25-59 5
*エネルギー収支とは「寿命中の全発電量÷建設・材料・燃焼・運用に要するエネルギー量」のことで、
数字が大きい程、効率の良い発電と言えます。
**風力発電は立地条件によって、設備・運用コスト(エネルギーの使用)がかなり異なり、それに伴なう二酸化炭素の排出量も大きく異なってきます。例えば、標高の高い尾根に建設するには、新しい道路の取り付けや資材の運び上げに莫大なコストがかかったり、積雪地や台風の通過地域などでは保守運用コストが高くなったりします。

 上の表で示すように、風力発電は確かに燃料燃焼による二酸化炭素は排出しませんが、設備や運用による二酸化炭素の排出量は、発電量に比べてかなり大きくなります。またエネルギー収支(施設寿命中の全発電量を建設・材料・燃焼・運用に要するエネルギー量で割ったもの)も、従来の発電方法に比べてかなり低いものになっています。風力発電のエネルギー収支を40とする試算も見られますが、それは欧米において風況や建設条件の良い立地での試算であり、風況が悪く、また山間部への建設や蓄電設備など建設・維持コストのかかるケースが多い日本にはあてはまらない数字と言えるでしょう。さらに、山間部への建設に付随してくる森林伐採による二酸化炭素削減効果の減少については、これらの数値にはあらわれてきません。
 風力といえば、全く二酸化炭素を出さないというイメージがありますが、建設や維持、廃棄などで必ずエネルギーが使われ、二酸化炭素が排出されています。また、風車が過剰に回転すると破損・故障の原因となるため、強風時には電力を使用してブレーキをかけています。風がなくて回らないのはすぐに想像できますが、実は風が強すぎても発電はできず、その上エネルギーを使用してタービンを守る必要があるのです。採算のとれる平均風速は毎秒6mといわれますが、平均して6mになったとしても、無風状態と強風状態の平均で6mでは全く意味がありません。
 立地や施設寿命など余程よく考えて建設しないと、採算がとれないどころか、二酸化炭素削減に全く寄与せずに環境を破壊してしまうだけにもなりかねません。風力発電施設の建設においては国庫補助の割合も高いのですから、「クリーン」という言葉に惑わされた税金のムダ遣いによる環境破壊とならないようにしていただきたいものです。


日本の風力発電の問題点:環境影響調査の義務化・法制化が急務
 欧米諸国の事例から見ても、風力発電が環境(人の住環境も含めて)におよぼす影響が大きいのは明らかですが、日本では風力発電施設の建設には環境影響評価法(アセスメント法)が適用されません(地方自治体レベルで調査を義務付けているところもあります)。つまり、建設に際して事前の環境影響調査は事業者に義務付けられておらず、事業者側の自主的な調査に委ねられています。しかし、その調査を第三者が客観的に評価するわけではないので、事業者側の調査方法の不適切さやデータ改ざんの疑いも指摘されています。例えば、風車建設予定地の尾根上に多数調査員を配置して調査を行うことは、見慣れないものに対する警戒心の強いイヌワシでは調査員の居る場所を避けて行動することに繋がり、正確な行動を把握することは出来ません。しかし、そのような方法が風力発電計画の環境影響調査ではまかり通っているのが現状です。結果、事業者側の調査結果では計画予定地での飛行が確認できなかったものがNGOの調査では確認された、などということになるわけです。
 欧米でも、特に風力発電の初期には、十分な事前調査なしにウィンドファームが建設され、鳥の衝突死や騒音・景観問題などが多発しており、風力発電後発国である日本は諸外国の教訓を活かさないでどうするのでしょう。ドイツでは鳥の渡りルートなど野生生物の生息データをまとめて、風力発電施設の建設が可能な場所を「マッピング」によって示しています。そもそも日本では自然環境や野生動物に関する情報が少なく、また、詳細な生息地情報が公開されると、心無い人による営巣地への接近などで希少種の生息が脅かされるなどの問題もあり、今すぐにドイツのようなマップを作って公開するのは困難ではあります。しかし、なんらかの対策を考えていかないと、風力発電はクリーン・エネルギーを生み出すのではなく、環境への悪影響を生み出し続けることになります。
 まずは、風力発電施設建設には事前の環境影響調査を義務化、法制化し、その方法と結果を事業者でなく第三者(専門家)が客観的に評価できる仕組みを整えることが急務と思われます。


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